苛立ちと立ちくらみ
「兄に会うべきですかね?」聞くまでもないとは思いつつも念のため聞いた。
「自分で考えろ。でも、その意見には手伝ってやるよ」
「そうですよね。」聞く意味はなかったか。
「まぁ、早く決めてほしいけどな。」
「分かってます。」
「なら早く決めろ。」
「は、はい」強引だろと心の中で愚痴る。
「10秒前。9、8、7、」
「将棋ですか?」
「突っ込み下手すぎるよ。」
「どうでもいいでしょ」
「はい。終了。答えを導き出せなかったので、俺が決めます。」
「え、自分で考えろ的なあれは何なんですか?」
「的じゃないけど。はい、今から兄貴の所へ交渉に行け。」
「展開はや。
ってえええ。」
「大丈夫だよ。この紙に書いてある指示通りにやれば必ず上手くいく。」
「ありがとうございます。」
「なわけないだろう。だが条件がある。それが、達成できたら、協力しよう。と俺は昨日言った。
つまり、協力しない。」
「そうでしたね」内心舌打ちをするが声には出さない。
「分かったらいいんだよ」
「では、行ってきます。」竹中に反抗したいのはやまやまだが、兄と交渉する以外の選択肢はない。
部屋を出て行き、光太郎の部屋に行く。
「光太郎」先ほどのうっ憤を晴らすかのように怒鳴りつける。
「義雅様。どうなされましたか?」
「兄貴の所に連れて行ってくれ。」
「別に構いませんが。どうかなさいましたか?」
「どうもない。どいつもこいつも。」
普段の光太郎なら俺がこんな言葉をつかったら注意するはずだが。
疑問に思い光太郎をチラリと見る。
すると、納得がいった。光太郎が微妙に、にやけていたのだ。
そんな光太郎に憎めなさを感じると共に、竹中に不信感を抱いた。
光太郎に義雅を出来るだけ苛立たせてくださいとでも言った程度だろうが
気に食わない。
人をおちょくるだけおちょくって。
ってかあいつ何歳だよ?
まぁどうでもいいか。
1人でノリ突っ込みをしていると
「義雅様」という声が聞こえてきた。
「はいはい。今行く。」
そういえば、「はい」は何回言うべきなのだろう。1回である必要は僕はないと思っている。
なぜなら、
「義雅様。終了です。」ドアを開けながら、光太郎は言う。
「何が?」問いには誰も答えず、
バタン。ドアが勢いよく閉まった。