順位と順番
「待ってください」義雅は反射的に言った。
「私はそんな暇じゃないんですよ」竹中は止まろうとしない。
そんな竹中に語りかけるように義雅は言った。
「俺は、日本を変えたい。本気で変えたいのです。だから、だから将軍になりたいんです。」
「なら、将軍の補佐でもいいのではないのでしょうか?無理に将軍になる必要はないのでは」
冷静に竹中は返す。
「俺じゃ、俺じゃなくてはいけないんです。」竹中の背中に訴えかけるように言う。
「何故ですか?」
「あなたが2年前俺に言ったこと覚えてますか?」突然自分でも意識しないうちに口が動き出す。
「覚えていないですね。すいません。」冷やかな口調で返す。
「あなたは俺に向かって、君は必ず将軍になれる器だ。と言ったんです。
うれしかった。ただただうれしかった。その時はなんでこんなにうれしいのか分からなかった。
でも、最近になって分かりました。あの時から、自分は心の底では将軍になりたかったのだと。
だから、あんなにうれしかったのだと。」
「そこまで言うなら君の野望に協力しよう。
だが条件がある。それが、達成できたら、協力しよう。」
「何なんですか条件って?」
「1週間のうちに、あなたの兄である新徳川風雅を失脚させること。
殺してもいいし、もちろん平和的にしてもいい。まぁ自分で考えろ。
これにも1つ条件がある。まぁ当たり前なんだが、俺たちの仕業だとばれないことだ。
平和的な場合も兄には口止めをしておけ。
どうだ?やるか?」
「まずは、足を固めるべきかと。」
「そんな考えなら、辞めろ。
ちょっとこれを見てみろ。」
義雅は竹中が指をさした場所をみると、幼いころ、歴史の勉強で何度も見た我が新徳川家の家系図があった。
そして、竹中の指の下を見ると現将軍新徳川家晴の名前が書かれていた。
竹中は義雅が自分の指の下に目線が行ったことを確認して言う。
「君の伯父さんだ。現実的に君が将軍になるには、彼の次だろうな」
これぐらいは分かっていたので素直に頷く。
「君より継承順位が上なのは、ああ継承順位は僕が勝手に付けてるだけ。で、上なのは家晴の長男の家尚、次男の尚登、三男の尚翔、家晴の弟で君のお父さんの兄の晴貴、その長男の貴宏、次男の貴人、そして君のお父さんの晴雅、その長男の風雅の全部で8人。
まぁ世代的にも晴貴、そしてお父さんはまずあり得ない。
そしてその家の世継ぎになれば、貴人よりも順位が上になるだろう。
つまり、風雅を失脚させ、晴雅家の世継ぎになれば、自然と、上は4人だけになる。
分かったか?」
分かっている。心の中では分かっているのだが素直に頷けない。
あきらめるか?という竹中の声が聞こえる。
覚悟は決めた。
「します。」
「よし。あと、俺にはお前は敬語でしゃべれ。
また明日」




