神の遊び心①
短編集のはずだった! しかし、短編にしては長い話を書いてしまった……。なので、分割しました! ご了承ください
「グレオムラシヌポポンレンポロ!! いでよ!」
禁断の呪文を男が唱えた途端、魔方陣から光が放たれた。
「我を呼んだのはお前か?」
そして、魔方陣の中から悪魔が現れた。
「ひぃ……お、おれはお前のあ、主だ! 俺の言うことをき、聞けぇ! 俺の願いを叶えろこの野朗!」
男は怯えながらも命令口調で悪魔をにらみつけた。
「……いいだろう。ちょうど退屈していたところだ。ほれ、さっさと願いを言え」
「え? ほんとにいいの?」
男はあまりにもあっさりと悪魔が要求をのんだので、思わず拍子抜けしてしまった。
「良いと言っているだろうが。何ならお前の願いを当ててやろうか? ゲムゲムマラロンピロン……」
そう言うと悪魔は怪しい呪文を唱えだした。
「ま、まて! 勝手なことをするんじゃない!」
男は悪魔が突然呪文を唱えだしたことに酷くあせった。男は悪魔を呼び出すために熟読した本『悪魔を呼び出すhow to本 これであなたも悪魔使い!~初級偏~』の【注意すべきこと】の項目を思い出していた。
【注意点その8:悪魔に勝手な行動を取らせてはいけません。あくまでも(悪魔だけに(笑))、あなたが主人であることをわからせるてやるのが大事です。悪魔と女は好き勝手やらせると、とんでもないことになりますよ】
「ふむふむ、わかったぞ。お前の望みは、”女”だな? あたりだろう?」
「ドキンコ!!」
男は誰にもばれないように秘め続けてきた恋心を言い当てられて、思わず「ドキンコ」と口に出してしまった。
「そうかそうか、恋を成就させることが願いか……ごめん、やっぱめんどくさいから我帰還するなり」
「ゴゴゴゴゴ!!」
そう言うと悪魔は「ゴゴゴゴゴ!」という轟音と共に、魔方陣の中に再び戻ろうとした。
「ちょ、ちょま! 待ってくれよ!」
男は必死に悪魔を引きとめようとした。
「何? 我忙しいなりよ」
「お前さっき暇だって言っていたじゃないか!」
悪魔は顔だけ魔方陣の中から出した状態で止まり、めんどくさそうな顔をしていた。
「うーん、恋を成就させるためにはさ、相手の”心”を操らないといけないわけ。で、人の心っていうのはさ、あれ、『神の絶対領域』と言われている部分でさ、悪魔でも勝手に操作することを禁止されている部分なんだよ。方法がないわけじゃないんだけどさ、『悪魔市役所』に書類を提出する必要があって、いろいろとめんどいから。やっぱり我帰るなりよ」
「ゴゴゴゴゴ!!」
悪魔は再び「ゴゴゴゴゴ!!」という地鳴りにも似た効果音と共に魔方陣の中に戻ろうとした。
「そ、そこを何とか~!!」
男は悪魔の顔を掴み、魔方陣の中に戻ろうとする悪魔を必死に引きとめようとした。
「クククク……人間よ、魔方陣の中に入ってしまったな。しかも、悪魔に素手で触れしまうとは、愚かなリ。人間よ、愚かなり! グワハハハハハ!!」
「し、しまった!」
男は焦った。そして再び、『悪魔を呼び出すhow to本 これであなたも悪魔使い!~初級偏~』の【注意すべきこと】の項目を思い出した。
【注意点1:魔方陣の中に入ってはいけません。そのうえ、悪魔に触れるなど言語道断です。死にます。いや、マジで危ないんでやめてください】
「そこまで言うなら叶えてやろう! お前の望みを! ただぁし、お前の命と引き換えだがな!」
「ゴゴゴゴゴ!!」
悪魔はそう言うと、「ゴゴゴゴゴ!!」と口で言いながら魔法陣の中から再び出て来ようとした。
「くそ! こんなときはどうしたらいいんだっけ!?」
男は追い込まれながらも冷静に『悪魔を呼び出すhow to本 これであなたも悪魔使い!~初級偏~』の【緊急事態の対処法】の項目を思い返した。
【緊急事態の対処法:こちらは『悪魔を呼び出すhow to本 これであなたも悪魔使い!~上級偏~』に書いてあります。定価1万5千円です。購入してね~】
「くそ! やっぱり上級偏も読んでから悪魔呼ぶんだったぁ!!」
男は心底後悔したが時すでに遅し。
「メケレンロロンポポンテリンチョ」
悪魔が呪文を唱えると、男の体に黒い影が取り付いた。
「や、やめろ! やめろーーーーーーーー!!」
そして、全身を黒い影に覆われた男は苦しみ悶え、地に伏せた。
「さてと、それじゃ今度こそ我帰るなりよ。おっと、忘れるところだった。我は約束はちゃんと守る悪魔だからな。お前の望みを叶える方法は、その”本”に書いてあるから、それ読んで望みを叶えるといいよ。ま、その本を読めたらの話だけどな。グハハハハハ! 良い暇つぶしになったなりよ! グハハハハ!!」
「ゴゴゴゴゴ!!」
悪魔は高らかに笑うと、「ゴゴゴゴゴ!!」という音と共に、今度こそ魔方陣の中に消えていった。
静かな部屋に人の気配はもやなく、そこにあるのは一冊の本だけであった。その本の表紙には、こう書いてあった。
【『神の遊び心』大辞典】
―――続く
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