剣マスター☆
20XX年…第13回剣マスターB級大会がここに開催された。
「晶人!本気で来い!」
「もちろんそのつもりだぜ!勇人」
今一つのリングの上で壮絶…とまではいかないがバトルが繰り広げられようとしていた。
「行くぞ晶人!だぁぁぁぁ!」
勇人が晶人に自慢のブロンズソードで斬りかかった。
しかし晶人はそれをこれまた自慢の銅の剣で受け止める。
「おりゃぁぁぁぁ!」
……事の始まりは2週間前だった。「ねぇねぇ勇人くん☆2週間後に始まる剣マスターB級大会にでるの?」
ごく平凡な中学校のクラス風景から耳にしたのはこんな言葉だった。
クラスのマドンナ後藤愛里は勇人に迫るように話しかけた。
「あぁ。出るよ。弟の晶人と一緒にね。」
逆に素っ気なく答える勇人。彼は顔はかっこいいのだが、イマイチ女心に鈍感だ。
「応援しに行くからね☆頑張って☆」
はたから見ればまるで恋人のような会話だが、勇人の頭は今日の夜にテレビで放送される剣マスターS級史上最強剣マスター決定戦の事で埋めつくされていた。
「ガイオガスや武蔵なんかが勝つだろうなぁ…うぷぷ」
ぼそりと独り言を呟く姿はなんとも不気味である。
そしてこちらは隣りのクラス、弟であり双子の晶人がクラスの男子と話し込んでいる。
「晶人ぉ〜、ここ教えてくれよぉ〜。」
学年で一番の成績の晶人に近寄って来るのは悲しいが、出来の悪いクラスの男子AとBとCだ。「ここはこうなってこうなるんだよ。わかった?」
先生に負けず劣らずの教え方でクラスの人気者(宿題も見してくれるので)になっていた。
まさに典型的な双子のパターンのこの2人。
兄の勇人は頭は悪いが運動神経抜群のスポーツマン。
対する弟の晶人は頭は学年トップだが、なんとスポーツも出来てしまう!かなりの典型的な双子だ。
アレ?どこが典型的だ?っと思ったらそのことは頭の角にでもしまっておいて欲しい。
剣マスターのB級は、D級とC級の試験合格を貰わないと出場できない。
そこで初めてB級の剣マスター大会に出られるのだ。勇人や晶人は持ち前の運動神経で、なんなくDやC級を合格していた。
勇人が家に帰ると早速稽古場である近所の頑固親父が経営している『これであなたもS級剣マスター!!完璧指導稽古場!』に向かった。
なんともたいそうな名前だが、稽古はしっかりできるようだ。
ボロい道場のような稽古場にはすでに晶人の姿があった。「晶人…お前塾はどうしたんだよ!?」
「今は塾よりも剣を習うほうが先決だ。お前こそ塾に通ったほうがいいんじゃないか?」
よくいる生意気な弟である。
どうやら晶人も本気でB級マスターを狙っているらしい。
その後は2人の沈黙がただ続くばかりだった。
もくもくと練習を続ける2人の沈黙を破ったのは、頑固親父頑鉄さんだ。
「またケンカしとるのか!!お前達は血の気の多さでは一人前だな!!そんな振りではまだまだ2人ともB級で勝てんぞ!!」
B級からの大会はトーナメント制になっていて、C級の合格資格があれば誰でも参加できる仕組みだ。
激闘を勝ち抜いた者のみがA級に上がれるのだ。
「ケンカしとる暇があったら2人で剣合でもしておけ!」
剣合とは言うまでもなく試合形式の剣での決闘だ。
「頑固親父!!俺と勝負しろ!!」
勇人は少し怒気が混じった声で言う。
「頑固親父さん!俺と勝負してください!」
晶人も負けじと言うが、
「その名前で呼ぶなと言っとろうが!!お前達なんぞワシと戦うのは55年早いわ!!」
たまに意味もなくぞろ目が好きな老人がいるが、この男は間違いなくそうである。
稽古場から帰宅した2人に待ち構えるのは、もちろん門限を過ぎた後に迎える母親の鬼のような形相での説教小一時間ばかり…。悲惨なことこの上ない…。時は流れ、ついに剣マスターB級大会の日がやってきた。
もちろんこの2週間勇人は稽古場に通いつめ、晶人は塾をサボり続けた。
この日のために。あまり胸を張れないが…。
「ついに来たな。晶人!お前と当たっても容赦しないぞ!」
「もちろんだよ!俺は負けないぞ!」
2人の間に火花が飛び散る。
2人は順調に勝ち進み、ついにみなさんが待ってした!と言わんばかりの決勝戦になってしまった。「決勝戦!最強勝利くんと貧弱敗北くんの勝負です!」
……………勇人と晶人は一回戦負けをし、今稽古場というリングの上で自分達の愚かさを恥ながら剣合をしているであろう…(終)