08 決着は呆気なく
俺の掛け声と共に2人はぶつかり合う。
それは互いに攻撃に攻撃をぶつけ合う衝突であった。
2人は小手調べと言ったように軽い表情で剣を打ち込み、払い除け、斬りつけ、叩き落とす。
最初に大きく動いたのはカロンの方だった。
半歩距離をとると剣の構えを変え、一気に踏み込んだ。
ズドン!と空気を震わす程の一歩と共に大きく振るわれた横薙ぎは、オリビオ縦に構えた剣で受ける。
「!?」
「ハッ!甘ェ」
強烈な一撃に体勢が後へと崩される、手に持った剣も取り落とさなかったが、大きく払い除けられた。
ガラ空きになった胴体にカロンの蹴りが炸裂する。
「ガッ─」
「ハハッ!上品な戦いじゃあこの先は危ういぜ」
「…ッ…ご忠告どうも」
距離が離れ、仕切り直しと剣を構え直す。
2人の静寂に外野の声が微かに入る。
「今のはカロンって奴の勝ちにはならないのか?」
「バッカかお前ぇ…剣で斬られたわけじゃねぇーからだろ」
「…それだけではない」
ガヤガヤと声が重なり大きくなる。
「ケッ…見せ物じゃないんだが」
「決闘を申し込んだ君がそれを言うのかね」
鋭い突きがカロンを襲うが紙一重で首を傾げ躱す。
荒々しい薙ぎ払いがオリビオへ叩き込まれるが、剣が支点へと挟み込まれ力が衰える。
「詰みだ」
「ああ゛…!?」
ほんの一瞬のこと、カロンの首筋に鞘に収まった剣が置かれる。
手にあったはずの剣は何処へと消えていた。
「な…に…!?」
反撃の隙は無い。
首筋の剣だけではない。足の間に交差するようにかけられたオリビオの足と、空いた利き腕を掴む左手、カロンは次の動作をどうしようとオリビオが先に動き、こちらを制することができる。
「異論は?」
「チッ………ねーよ…アンタがボスだ」
そっと距離をとり、降参すると両手を挙げる。
だが、口調と違い顔には満足そうな印象を受ける。
ヘリオスは落ちた剣を拾いカロンへと渡す。
「………」
「ハッ…アンタの戦いも見てみたいな」
小さく他には聞き取れない程度の小声でそう言われた。
「…俺は面白くはないぞ…」
「ハン…どうだかね」
それからこれからの方針についてオリビオは話し始めた。
一連の流れで彼が指揮を執ることに疑問を挟む者はいなかった。
他のガラの悪そうな連中もカロンが黙ったことが大きいのか文句は言わず話を聞いてはいた。
貴族側は元々オリビオが指揮をすることに不満はないようであったし問題は今のところは無いようだった。
そして方針が決まり、幾つかの班に分けることになり班の代表と班員を割り振る為にと一人ひとり名前、経歴等を聞いて回っていた。
平民出身者を中心に、顔と名前を何度も確認しながら進んでいく彼の後に貴族の出と思わしき面々がついて回っていた。
その日はそれで解散となった。
明日からの早朝訓練の後に各組に与えられた時間で班ごとの個別訓練を行うこととなった。
俺はその班長の一人となった。
その時、班員となった者達と顔合わせをした際に「ヒェッ」と怯えられた。
ベッタと呼ばれた者にも怯えられたが…俺の顔はそんなに怖いのだろうか?




