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04 魔導講義

目の前に置かれた水晶に手をかざす。


強い光が水晶の内部に現れ、部屋全体へと広がっていく。視界のすべてが白に覆われる。

慌てて手を離すと光は嘘のように収まった。


「ほぅ…君は随分と鍛えられたものだ…だが、これはなかなか稀な魔力だな」

「やはり、君も魔導士だったか…、どうやら私とは違う体系のものか…いや、ならばまだ見ぬ可能性が─」


「…はい?ちょっと…ちょっと待ってくれ、まだ何も飲み込めてないんだが?説明をしてくれ」

「うん…?魔力測定は始めてかい?」

「コレのことか…ですか?」

コクリと頷き始めてであることを伝える。


「そうか…これほどまでに鍛えられているのに」

「実戦経験が豊富だからだろうか」

ふむふむと覗き込むオリビオと老人を見ながら。

「結局…なんなんですこれ?」


「それは…」

「では!私から説明しよう!!これも貴族の義務!!!」

「…違うと思うが?」

老人に同意する。


「本来なら魔法について深く知るには、学院等で学ぶものだが……平民ではその機会は稀…在野で広く知られるものも学院では序の序、できて当然どころか呼吸をするかの如くのものだからね」

「…?」

「学院は魔法の研鑽と教育を行う所だね。本来は良家の子女達、次代を育成するのが目的だったがね…」

「そこで、私から直々にレクチャーをしてあげよう…!なんせ!私は、学院で優秀な成績を取っていたのだからね」

「いや…今、それは要らない」

「─なっ…!」


「えっと、爺さん…それで俺は問題とかあったの」

「無いよ…少し睡眠不足なようだが、夜は眠れないのかい」

「元々眠りが浅い方なので」

「そうか、それと君の全身にある火傷や傷なのだけどもそちらは?皮膚が引っ張られるとか動きに支障とかあるかい?」

「問題無いです。ただの古傷ですよ」

「それはよかった…たが、気をつけなさい。古傷は治ったが完治しなかったものだ。完璧じゃあないんだ、無理をすれば再び傷ができる」

「はい」

「ほかには、なければパーティに向かうもよし、ご友人と過ごすもよしだ…ここなら今日は閑古鳥だしね」


「別に友人ではないんだがな…」

後で途中から黙ってそっぽを向いたオリビオへと目線を向ける。


「…なんだい」

「拗ねるなよ…可愛くないぞ」


─ドス!

彼の肘が俺の鳩尾に打ち込まれる。特に意に返さずに言葉を重ねる。

「まぁ…なんだ、魔法についての…レクチャー?ってのをしてくれ」

「ほう…もう一声」

「……俺は、魔法は既に実戦でも扱えている、だが、使えるだけだ…だから、教えてくれ」

「…まあ、いいだろう」

小声で「もっとこう…褒めて讃える感じが良かったのだが…」と言ったのを聞き流しながら対面のソファへと腰を下ろす。


横から医者の老人がお茶と焼菓子を振る舞ってくれた。

「私も少し寂しいので混ぜてもらうよ」

と言い、彼もオリビオの話を聞きに椅子を用意して座った。


「では、このオリビオ・フォン・ネレイスによる、ありがたーい魔導講義を始めようではないか!」

パチパチと老人が小さく拍手をする。

それに習って俺も拍手をする。

見に行ったことはないが、歌劇(オペラ)なんかは始まる前に拍手をするらしい。


オリビオはフフンと気分よく鼻を鳴らす。


「では、まず『魔法』について質問しよう…スバリ『魔法』とは何か」

ビシッと指が俺を指す。

「んー?…便利な力?」

「つまらん答えだ…えーっと…ドクター!」

「私かね?…『魔法』とは本来あり得ない法則であり、その始まりは不明瞭だが、神が与えた奇跡…またはその模倣と言われているね」

「神話学的な解説感謝いたします。…ヘリオス、つまり『魔法』とは本来、人には過ぎたる力なのだ─」

「はぁ…」


仄かに甘い焼菓子…口に入れたところからホロホロと崩れていく。染み込ませたバターの香りが口の中で唾液に溶ける。

歯を使うどころか顎すら使わずに形が崩れ、舌の上に置かれた生地に神経が集中する。


「─そして『魔法』は世界に複数存在する。始まりはどれか一つであったとも、幾つかあっただのと論争があるが…一つの『魔法』から複数へ派生、体系が生まれた。というより、人から人へ伝承されるにつれ少しづつズレが生じているとの見解もある─」


焼菓子によって奪い去られた唾液。

渇く口内。広がる甘い匂い。

水気を欲し机の上のカップを持ち上げ口へと運ぶ。

流し込まれる温かな茶は、ツンと少し鼻につく鋭い香りが特徴的であった。

柑橘の刺すような香りと味が、甘さの広がった世界(口内)を洗い流す。


「─そして、増えた『魔法』は別の『魔法』と合一化することもある。…同じ始祖を持つ同士か全く別のもの同士が合わさり、また新たな『魔法』が生まれることもあるのだ─」


うむ。舌で口の中や歯の裏等を舐めて余韻を味わう。

始めてティータイムなるものをした気がする。北部国境隊のおっさん達は酒とツマミしか用意してなかったからな…。

激辛や味の濃いものばかりで、甘味なんてそうそうなかったからな…。


「─君、話を聞いてないな」

「ん?そんなことないが?」


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