14 あまかける
「なん…だぁ、アレ」
隣でカロンの口から零れた言葉。
目と口をあんぐりと開け、間抜け面だと笑ってやりたいが、今はそれどころではない。
自分も全く同意見だからだ。
見上げるほどの巨岩の塊が人のように2足で立ち歩いていた。
《あれは、ゴーレムと言われる使い魔の1種だ…古くは錬金─っと解説は省こう》
頭にオリビオの声が響く。
ベッタの魔法《彼方の囁き》によって届けられた彼の言葉が続ける。
《ゴーレムには2種類の操作パターンがある…核となる魔法を刻印するタイプと近くで魔導士が操るタイプ…刻印タイプは高度な技術で学院出でもできる奴はいないだろうしその規模だ、複数人が強力して動かしている筈だ》
ゴゴゴゴゴ──。
もう一体のゴーレムが後方から起き上がる。
「………」
「おう…」
《ひぇぇ》
《………》
「「か…頭…」」
「ハッ…!狼狽えんじゃあねぇ!あんなデカいのを操るなんて簡単じゃねぇ!操ってるヤツを叩けばアレも止まる!」
カロンがいち早く周りに声をかける。
「チッ…しかし、向こう岸に渡るための橋をあちらは占拠されちゃ不味いな…」
「それだけじゃない…」
ぞろぞろと森から出てくる集団の数を確認する。
「《オリビオ!赤の連中の塔は何人で護ってる!》」
《…1人だ》
「…総突撃とは…剛気な」
「…!皆姿勢を低くし、盾で身を守れ!」
皆優秀だ、危険を伝えるとすぐに対応してくれた。
だが、飛来するものの豊富さが想定外だった。
火矢に岩に炸裂する玉、氷柱………向こう岸にいる者達は皆が皆大砲のようだ。
「チッ…剣の間合いなら遅れはとらねぇんだが!」
飛来する魔法による攻撃を剣で弾きながらカロンはぼやく。
他の者も盾や木を使い上手く躱している。…脱落者は今のところ無しか…。
「岩…!今!岩の巨人が!!」
一人が指さす先で、2体の巨人が大川を渡り始めていた。
動きは緩慢だが、その一歩は大きく、動くたびに周りを巻き込む力は本物である。
「魔法やべぇ…」
《…お行儀の良い戦いはしてこなかったか…》
「《どうする大将?魔法でゴリ押しの物量で攻めてこられたぞ》」
《作成変更…少数精鋭で敵の前線を抜け、塔を攻める…それと、残りで防衛をする…攻め手は───》
オリビオの作戦を聞き俺とカロンがアイコンタクトで頷くと同時に伝令が到着し作戦を報告する。
カロンが10名ほどを引き連れ「先に行く」と魔法の雨霰の中へと駆け始めた。
「ハッ!お前ら、全力でついて来い!胸だけ守れ!後は、躱して打ち落として突っ張れ」
「頭ぁ!それじゃいつもと変わらんです!」
「ハハッ!バカぁが!いつもは頭と股も護って戦ってらぁな!」
突出したおよそ10名…だが弾幕を気にする素振りもなく突っ切ってくる集団に攻撃が集中するようになる。
彼らが橋の半分につく頃に、ゴーレムが巨腕を振り上げる。
「頭ぁ!流石にアレはどうすればいいんすかぁ!?」
「フンッ!気にするな!オレ等は前を見ておけ、流れ弾でやられるぜ!」
一体のゴーレムの拳が振り下ろされる直前。
轟音。
ゴーレムの上半身に亀裂が奔り、ミシミシと音を立て始める。
轟音。
ズドンと空気を震わせる。音を立て砕け土煙をあげながら崩れる岩石巨人から飛び上がる一つの人影。
「ペッ…!ペッ…!」
ヘリオスは今粉砕したゴーレムとは別のもう一体のゴーレムへと視線を向ける。ざらついた砂粒が口に入ったのを気にして指で掻き出そうとして、グローブを着けていたのを失念して嫌な味が舌に広がる。
《助けは必要かい?》
「右足に頼む!」
《いいとも、感謝したまえ》
ヘリオスの右足…その下に水球が現れる。
それを力強くヘリオスは踏みつける。水球は壊れることなくまるで弾力のあるゴムのように足を受け止める。
1Mほどの跳躍。手に持つ槍を両手で回し構え直し狙いをつける。
「ちょっと…遠い!」
その言葉と同時に放たれた槍は狙い違わずにゴーレムの頭部へと向かうが、腕の力だけでは足りず刺さることなく弾かれて落ちてしまう。
「オリビオ!両足に、大きめで」
《注文の多い奴め》
川から水柱が昇る。身体が重力に引っ張られながら両足をたたみ力を込める。
水柱は巨大な水球となって宙を漂い始める。
両足でしっかりと足場となった水球をとらえる。衝撃が波打つ、地面での跳躍との違い。押し返す反動のタイミングと力の違いに100%の動きはできなかった。
《しくじったか…!》
「新雪よりマシだ!追加頼む」
「頭ぁ!ヘリオスの奴空を走っています!」
「ハンッ!面白そうだな、後でオレ達もやろう!ピエール、リン砲台役の連中は他に任せて前衛連中の相手をするついてこい」
「「了解!」」
眼下でカロンと交差する。10人はいた彼らも残り3人になっていた。
後から遅れてはいるが援軍が来ている。
飛び交う魔法を払い除ける者とやられて硝子玉が砕ける者が増えてきた。
自分を狙って跳んできた魔法を拳の一薙ぎで打ち消す。
2体目のゴーレムに到着する。
振り落とそうと暴れ始める前に頭部に跳び蹴りをして、反動で上へ跳ぶ。
そこには事前に注文しておいた割れない水球が浮かんでいた。
反動を利用した2度目の跳び蹴り…というより踏みつけで頭部を砕く。
「デカいからって驚いたが…思ったよりも脆かったな」
《突貫で作った物だろうからね脆くて当然だが…それを簡単に砕く君がおかしいんだよ》
「助かった」
《水が近くにあったからね当然さ。だが、流石に川から離れるとサポートできない》




