12 三者三様
「うむ…」
オリビオは顎に手をやりながら、同僚となった者達を見る。
皆白襷を身に着け、重りを背負っての走り込みや素振りといった訓練に一区切りつけ休憩をとっていた。
オリビオから見て、ここに集った者達は皆々しっかりと強いと言える。
平民が殆どの我らの組分けだったが、悲観するほど悪くない。基礎体力ならこちらが上、実戦経験を積んだ者も少なくない。個々の戦力差は少ないと考えられる。
少し離れた場所で同じく訓練をする赤い襷の集団を見る。見知った顔が幾つかあり、過去に魔導学院に在籍していた者もいる。
そこが明確な差だとオリビオは考える。
(歩兵の質はこっちが上だが…取れる手段の多様さはあちらが上……)
【魔法】が扱えるかの違いは七日そこらで覆すのは不可能である。
負ける気は無いが訓練の一環なのだから、少し気楽に物事を考えなければと頭を払う。
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ガンドルフは退屈していた。
これなら自領に籠り、魔力を帯びた猛獣を相手にしていたほうがマシだ。
自分の割り振られた組は貴族が多い。それはいい。
ネレイスの嫡男が平民が多い方へと割り振られたのも良い。
それを陰で嗤う阿呆がいるのが気に食わんが。
剣を振り、重りを背負い、的を射抜き、馬を駆けらせる。
全てこなしてきた、問題は無い。
新兵の実戦投入はまだ先…それも安全な仕事から…。
嗚呼、せめて…ここいらにいる奴がこの退屈を紛らわせてくれるのなら…。
ネレイスは白襷の長になったか…。あまり会話をしたことがなかったが、手を抜くことは無いだろう…指揮官としても有能だ、その点は俺より先に行っている。
貴族のコネではなく実力で中央に来た地方騎士上がりの者達もそれなりに面白そうだが…。
「競い合うことで技は磨かれ研がれる…」
かつて恩師に言われた言葉。
強き力をぶつけ合うことで研磨される技量…しかし、今の自分とぶつかり合って壊れない強度のモノが無ければ、鈍りくすんでいく。
「我が先に行く為の強者は何処に」
燻る焔が胸を焦がす、しかし冷え切っていく感覚が指に残る。
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ヘリオスは悩んでいた。
「顔が…怖いです…その、すみません…や、火傷の痕が…」
ショックだった。
今までそんなことを気にしたこともなかったが…どうやら自分は人に怖がられる顔らしい。
数日前にベッタに言われた言葉を反芻する。
その後にオリビオやカロンから言われた言葉を思い出す。
「只者じゃないって気配が出てる…あと背が高ぇ」
「髪型が駄目だね…優雅さに欠ける」
髪型はどうにかなるが、身長は伸びてしまったものだからどうしようもない。
気配…気配ってなんだ…?
重量のある剣を構えて、人の形の丸太人形に素早く振るう。
刃先を潰された訓練用の剣は人形の表面を叩き、潰されていく、そして幾度もぶつけられた表面が磨かれていく。
「そうだね…私から言えることは、君は…魔力を抑えられてないんだよ」
医務室の翁にはそう言われた。
確かに自分は、魔法やそれにまつわる技術については学ぶ機会がなく、今までは使えるから良しとしてきたが…それでは足りないらしい。
オリビオがやたらと教えたがりなので今は訓練後の自由時間に講義を受けている。
「ほほう…良い打ち込みだな…どうだ、素振りでは飽きるだろう?我とやらないか?」
「いいぞ…ですよ」
「ハハハ…畏まらなくてもよい」
声をかけられその男と剣を撃ち合う。最初は軽く、わかりやすい軌道の剣筋が、徐々に疾くなり、フェイントが織り込まれはじめたあたりで終了の号令がかかる。
「今日はここまでか…フフフ…楽しみが一つ増えたな」
男は笑いながら立ち去った。




