11 私から見た第一印象
オリビオ・フォン・ネレイスは貴族である。
望めばなんでも手にはいる特権階級である。
責任と使命を背負い、国を…王族を支える立場である。
ただ…私は跡取りではないが。
私には、憧れた夢がある。大人になるにつれ、それが輝きに満ちたものではないと知っても私は諦めることができなかった。
騎士になりたい。
それだけだ…だが、それこそが夢である。
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「オリビオ様…朝です、お目覚めを」
「ん…ああ…起きるよ」
従者に起こされ、ベッドから身を起こす。
身支度を手伝おうとする彼を止め、自分で着替える。
「昨日のうちに今年の入団者の2/3が揃ったそうです」
「残りは貴族か?」
「はい」
アルクス王国の騎士団は主に2つに分けられる。
1つは王都を中心にあつまった中央騎士団と国境や王都から離れた地方を守護する地方騎士隊の2つである。
どちらも騎士として国に認められるが、地方騎士隊の入隊はそれぞれの代表者の裁量で決定する。
だが、中央騎士団と違い正式な騎士の称号を与えられない。
そして中央騎士団に入団することで騎士の称号を与えられる。
【騎士の称号】は一代限りとはいえ貴族としての身分になる…平民は身分の為にそれを求める者が多い。
貴族の場合は、見栄の他に後継以外の者が貴族である為に求める。
だが、中央騎士団への入団はそれ程簡単ではない。騎士の称号を与えられた者の推薦が必要になる。
そて、地方騎士隊の隊長やベテランは中央騎士団に入団した過去がある者である。
その為、基本的に地方騎士隊から中央騎士団へ推薦を受け入団する者が多い。
まあ…貴族の中には称号授与と共に騎士団から離れ自領に引きこもる者が殆どだが…そういった者からの推薦によって入団することもある。
「今年は…300人程度だったか?」
「左様でございます」
「今年は、平民出身者が多いな…良いことだ」
支度を済ませ、階段を降りる。
本来なら貴族が多く集まる専用の寮へと私は行く筈だったが…私の我儘で平民出身者の集まる寮へと変更してもらった。
その御蔭で1階の食堂にて食事と会話をする者達の顔をよく見える。
緊張した者、自身に満ち溢れた者、警戒する者、安堵する者…。
「パオロ、身分調査を頼む」
「はい…ただ、ここにいるのは私だけでございます…少々お時間がかかってしまいますが…」
「わかっている…者によっては推薦される以前の記録が無い者もいるだろう」
「はっ…」
「む…?」
「いかがしましたか?」
私の視線の先にいる1人の男に目が止まった。
黒い髪が長く伸ばされ、少し顔が隠れている男。
肌は陶器のような白さと荒野のような火傷の痕が目立つ顔、黒髪の隙間から覗く黄金の瞳。
細く長い手足はゆったりとした服でわかりにくいが針金のような筋肉が隠れていた。
ゆっくりと食事をする彼の周りだけやけに人が少なく、ポカンと穴が空いたような空間ができていた。
食器を返却口に置き、その場から立ち去ろうとする彼に近づく者が1人。
騎士グスタフ…近衛兵として長年王族に仕え、3年程前にあった襲撃事件にて利き腕を負傷しながらも事件解決をした男であった。
その後は近衛隊から除隊したと聞いたが…今でもその強さは健在なのだと聞く…。
その者が親しげに話している姿に驚いた。
「パオロ…優先的に彼を調べてくれ」
「御意に」
恭しくお辞儀をした後、姿を消す。
パオロのこれが魔法技術によるものではなく、身体技術によるものであるのが納得いかない。
魔法技術と言えば、あの男…火傷の彼もまた、今まで出会った者達の中でも群を抜いた何かを感じた。
「昨年までいた学院の教授に彼を見せたらどんな反応をするだろう…」
そんなことを考えながら、彼に近づき声をかける。




