10 彼方の囁き
「まず、私の呼びかけに応えてくれて、ありがとう…ヘリオスにはカロンからの伝言だったがよく来てくれた」
「…で、何の話だ?」
「その前に…!」
カロンが遮るように声を出す。視線をそちらに向けると、頭を下げ平伏するような体勢をとったカロンがいた。
「私の数々のご無礼…誠に申し訳ございませんでした」
驚きでカロンとオリビオの間で視線が惑う。
「どんな罰でもお申し付けを、なんなりと受ける所存です」
「頭を上げてくれ…アレは君の考えによるものだったし、それを了承し利用したのは私だ…あの件では私は利しかなかった」
「ははっ…!」
頭を上げたが、カロンは片膝をついた姿勢のままでいる。
「えっと…な、なんなんです」
「つまり…オリビオが指揮を執る事に文句が出ないようにカロンが矢面にたって悪役になった…てことか?」
「ああ…態々しなくても良かったのだが…」
「いえ、必ず必要になることだと考えました………それに、少し身体を動かしたかったのもあります」
「そうか……罰は特に無いが、これからの働きに期待するとしよう」
「ははっ…」
「…まとまったか?じゃあ本題の方だ。なんで俺、を呼んだんだ?」
「はい…何故、私を……」
ベッタはすごく暗い顔をしながらオリビオを睨んでいるようだった。
「これからの方針決めとベッタ嬢の魔法について知ってもらうためだ」
「その女…の魔法について…ですか?」
カロンが疑問符を投げかけると同時に小さく「やっぱそうですよね~」と囁く声が聞こえた。
実演の方が早いと、ベッタはヘリオスとカロンの2人へと向き直る。
「あの…あんまり暴れたりしないでくださいね」
ベッタは2人へ手を伸ばし、瞼を閉じる。
祈るように手を組み始めた。
「できました、繋げますね…《彼方の囁き》」
彼女から僅かに光が発せられる…。
「これは一体なん─」
《あの〜聞こえますか?》
背後から囁くような声が聞こえた。
ヘリオスは咄嗟に後へ拳を振るい、カロンは後へ蹴りを放つ。
部屋に置かれていた木箱にそれぞれぶつかり、衝撃音と破壊音が部屋に響く。
「ひぃぃい!!」《ひぃぃい!!》
「どうやら、うまくいったようだね」
「なンッ…なんなのですか、今のは?」
「…これがベッタの魔法か?」
「は…はい…」《こ、怖いよぉぉ》
オリビオへと目線を向ける。
「彼女の家が代々継承している【魔法】…戦時にはこれを用いての伝令を行い、国に貢献したと記録が残っている程のものだ…使わない手はない」
「うぅぅぅ…」《そんな凄くないです…記録がのこってるのはネレイス家だけです…たぶん…》
「なるほど…確かにこれは良いが……耳元で囁かれたみたいで、慣れんなァ…」
「ああ…驚いた…物も壊してしまった…」
ヘリオスとカロンは振り返り、壊してしまった木箱に頭を抱える。
「ここに集まるのはこれで最初で最後…になるかはわからないが、これからは彼女に頼みこの【魔法】で会話することもある…それに、演習はフルで使うから慣れてくれ」
「うぅぅぅ…」《人とあんまり会話繋げるの慣れてないのに…そろそろ解除したい…てか、する…》
「慣れてくれ」
「それならもっと多人数と会話できるようにはしないのか?」
「それは、私よりも本人が説明した方が良いだろう」
「えっと…私の【魔法】は事前に相手の魔力を覚えておく必要があって…それに、繋げるとお互いに思っていることが筒抜けになっちゃって、…その…は、恥ずかしい」
「なるほど、理解」
コンコンとそこで扉をノックする音が聞こえた。
「オリビオ様…そろそろお時間が」
「わかった」
扉越しに何者かが声をかけてきた。
「今のは…?」
「私に仕えてくれている者だ」
「おお…!貴族っぽい」
「正真正銘の貴族なのだが!?」




