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流水音

作者:

水にちなんだホラーを書くのが楽しくなり、最近は、何をやるにも頭の中で(コレは、行けそうか?)とか考えている自分が居ます。

流水音

 私は、7月1日に新しく出来た老人ホームの日勤のみの介護士 小田 絵里香である。子育て中の為、夜勤は、やっていないが出産前は、前職で夜勤もやっていた。今の職場も入所施設の為、夜勤も有り、同僚の藤嶋 はるが夜勤専従となった。

 オープンから2週間後、はるが相談に来た。夜勤をやる従業員の間でここ2日間、下記のような話が出ていて怖くて仕方ないのだそう。ある動画と写真も見せられた。

 (深夜1時になると施錠したはずの特浴からジャージャーと流水音がする。行ってみたら、特浴の鍵は、閉まっているのに、浴槽を溜める蛇口から結構な水量出ていた。水が出ている所をピッチ代わりの会社スマホで動画を撮影し、蛇口をしっかりと閉め直した所を写真に撮った。廊下とフロア合わせて3台の監視カメラが付けてあるから、見てみたら、廊下から特浴に向かって黒い影がスーッと移動して行くのが映っていた)

 そんなある日、はるが夜勤になったが「怖いから、夜勤手伝って」と連絡が来た。私は、子守りを旦那と義両親に任せて、はるの夜勤手伝いに来た。

 ここには、夜間も自分で杖を付いたりしながりトイレに行き、排泄をする利用者も居る。しかし、杖や歩行器にも独特の音が有り、聞き分ける事が出来る。

 はると共にオムツ交換をし、記録、洗濯物畳みをしていたら23時になった。「もう23時か。ふぅー」と身体を伸ばすと少しスッキリした。

 楽しく話していたら、シャーシャーと言う音が鳴り響いているのに気が付いた。音の発生源を探していると20時に亡くなった生田さんの部屋の洗面台の前に付けたはずの車椅子が生田さんの遺体が眠るベッド横まで動き、ブレーキが外れた状態で止まっていた。部屋の中は、待機ナースが呼吸停止を確認後、より遺体を綺麗な状態に保つ為にエアコンを最低温度まで下げているのも相まって異様な雰囲気が漂っていた。一応、変わった事として部屋の電気を付けて、生田さんが使っていた車椅子を中心とした写真を会社スマホで撮っておいた。

 夜勤帯で入所者様が亡くなった場合、職員も少ない為、翌日午前までに遺体を葬儀業者に引き取りして貰う事となっている。生田さんが使っていた車椅子は、明日午後に福祉用具レンタル業者が引き取りに来る予定になっている。その為、隙あらば動こうとする車椅子は、ベッド横にブレーキをかけて停めておいた。

これまでに無かった心霊現象に2人してパニックになってしまった。

 そうこうしている間に0時55分になった。蛇口をしっかり閉めた所と特浴を施錠した所の写真を撮って送って貰った。写真を見る限り、蛇口が開く事も扉が開く事も無さそうに見える。しかし、深夜1時になったら、ジャージャーと流水音がした。まさかと思い、特浴を開けて見に行くと蛇口が開いており、水が出ていた。ここも水が出ている蛇口の動画を撮り、蛇口を閉めた所を写真に撮った。

 朝ご飯作る厨房職員は、5時に来る。夜間、自分でトイレに行かれる方に事情を説明し、'4時半までにトイレに行かれる場合は、ナースコールで教えて頂き、はるが声をかけに行き、私が水の元栓を開けに行くようにするのでご協力をお願いします'とお願いして来た。ここで旦那にも連絡し、「朝まで手伝って行く」と伝えた。

 9時の朝礼で夜間帯の入所者様の状態を伝えた後、生田さんの車椅子の件と特浴の蛇口の件を伝えた。朝礼後、所長が施工業者に連絡を入れてくれて午後から浴室の設備点検に来てくれる事になった。

 次の出勤日、会社スマホで撮った動画や写真に変化が有ったらしい。「そんなフィルム写真じゃあるまいし」と言うと、「自分で確認してみたら?」と写真フォルダを開けた状態からのスマホを渡された。

 そこには、2日前から撮り溜めてある特浴の水が出続けている動画、閉めた蛇口の写真には、オーブが有った。生田さんが使っていた車椅子の写真には、薄っすら人影が写っていた。見た目が生前、車椅子に乗って元気に過ごされていた生田さんにそっくりだった。

 所長が「建設前にも祈祷して頂いたはずなのに何で?」と小言を言いながら、何処かに電話している。「お盆前で忙しいのは、重々承知ですが、そこを何とかお願いします。」と言いながら、ペコペコ頭を下げている。お盆は、もうすぐですね。

今回の介護×水ホラーは、同僚にも読んで頂こうかなと思っています。

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