⭕ 危険な子 3
──*──*──*── 校庭
[ 校庭 ]の歩道の右横には花壇が作られている。
園芸部が手間隙を惜しまず大事に育て、管理している花壇だ。
最近、その花壇に悪戯をする不逞な生徒が居るらしく、園芸部員達は日夜目を光らせて花壇の監視をしているとかしてないとか噂が流れている。
新御睛雉
「 何時見ても花壇のクオリティが高いよな。
園芸部員って凄いな 」
舘嵜春加
「 世話が好きなんでしょ。
花壇だけじゃなくて畑で野菜も育ててるみたいだし 」
新御睛雉
「 野菜も作ってるのか?
益々凄いな 」
舘嵜春加
「 収穫した野菜は調理部で使われてるみたいよ。
出来た料理を園芸部員が試食してるんですって 」
新御睛雉
「 へぇ?
まぁ、野菜を育ててるのは園芸部員だもんな。
当然と言えば、当然か 」
舘嵜春加
「 そうね。
ハーブや香草も育てては調理部に提供してるみたいね 」
新御睛雉
「 へぇ?
舘嵜は詳しいんだな! 」
舘嵜春加
「 そりゃどうも──。
( 全部チック情報なんだけど…… )」
妖精チック
〔 ボクに分からない事は無いよ!
情報通のボクに何でも聞いて良いよ★ 〕
舘嵜春加
「( 盗聴器でも仕掛けてるの? )」
妖精チック
〔 ボクの代わりに分身体が情報収集してくれるからね★
ボクは何もしなくても情報通なのさ! 〕
新御睛雉
「 岔西だ。
岔西ぃ~~! 」
園芸部員:岔西
「 新御──。
また囲碁部に勧誘してるのか? 」
新御睛雉
「 してねぇよ。
オレを見る度に “ 勧誘 ” って言うな。
お前の所為で “ 勧誘睛雉 ” って呼ばれる様になっちまったんだぞ 」
園芸部員:岔西
「 勧誘睛雉?
そりゃ良いや! 」
新御睛雉
「 良くない!
舘嵜に誤解されて警戒されるだろ 」
園芸部員:岔西
「 舘嵜??
お前……ヤバい女子を勧誘── 」
新御睛雉
「 勧誘から離れろ!
それに舘嵜はヤバい女子でも無いかならな。
悪い、舘嵜!
嫌な思いさせた 」
舘嵜春加
「 別に──。
話したいなら先に行くから 」
舘嵜春加は岔西と話す新御睛雉を残し、1人で歩き出した。
新御睛雉
「 あっ、舘嵜!
岔西、覚えとけよぉ~~ 」
園芸部員:岔西
「 何の事やら?
でもさ、珍しいじゃん。
女子に告白されても断ってた新御が、舘嵜と下校するなんてさ。
明日は空からウニでも降って来るかな? 」
新御睛雉
「 降られて堪るかよ!
舘嵜はさ、他の女子とは違うんだよな。
何か分からないけど…… 」
園芸部員:岔西
「 春かな?
その気が有るなら、ブーケ作ってやるからさ、告白しろよ★ 」
新御睛雉
「 こ…告白……(////)
す…するかよっ!!
じゃあな 」
園芸部員:岔西
「 おぅ!
健闘を祈るぜ、隊長殿! 」
新御睛雉
「 祈らんで良い!
何の隊長だよ 」
新御睛雉は岔西と笑いながら話した後、舘嵜春加の後を追って走る。
舘嵜春加は[ 正門 ]を出る所だった。
新御睛雉
「 舘嵜、御免な 」
舘嵜春加
「 謝られても困るんだけど? 」
舘嵜春加は御構い無しにスタスタと歩く。
新御睛雉は舘嵜春加の左隣を歩く。
《 本屋 》に到着する迄、新御睛雉のワンマントークショーが繰り広げられたのは言う迄もない。
──*──*──*── 本屋
新御睛雉
「 此処って【 セロカ君の本屋 】じゃないか。
この《 本屋 》ならオレも愛用してるよ。
取り寄せ不可能な書籍も “ 取り寄せてくれる ” って有名なんだよな 」
舘嵜春加
「 あまりにも古いと別料金が掛かるけどね 」
新御睛雉
「 現在から9年前の書籍は1冊に100円だけど、10年前になると10年毎に1冊に1.000円ずつ増えるんだよな 」
舘嵜春加
「 私は予約した本を貰って来るから 」
新御睛雉
「 オレも行くよ。
囲碁漫画も色々と有るから、どんな絵なのか気になるし! 」
舘嵜春加
「 そう?
好きにして 」
舘嵜春加は【 セロカ君の本屋 】へ入店すると入り口付近に在るレジカウンターへ向かった。
学生鞄から財布を取り出し、承り書をレジカウンターの上に出す。
自分の会員カードを出すのも忘れない。
姉から預かっている支払いに必要な金額は拝借するとして、自分の会員カードでマネー払いし、セロカPをゲットする。
姉から頼まれた漫画本を受け取り、財布と一緒に学生鞄の中へ入れる。
妖精チック
〔 おつかい終了だね!
折角だしさ、漫画を物色しようよ。
ボクの予想だけど、恋愛モノが良いんじゃないかな~~ 〕
舘嵜春加
「( 物色するなら心霊系か怪奇系かな。
非現実的な冒険ファンタジー系とかね。
恋愛モノは論外だから )」
妖精チック
〔 えぇ~~。
恋愛経験の乏しい春加の為に恋愛モノを推してるのにぃ~~ 〕
舘嵜春加
「( いらん御世話だからね!
抑恋愛とか興味ないし。
誰かさんの所為でね! )」
妖精チック
〔 えぇ……その “ 誰かさん ” って誰だい?!
そんな不逞ぇ輩が居たなんて許せないなぁ!! 〕
舘嵜春加
「( アンタだよ、チック!
全く…… )」
妖精チック
〔 えっ?
ボクの事なの?
もぅ~~褒めないでほしいなぁ(////)〕
舘嵜春加
「( 1mも褒めて無いからね )」
新御睛雉
「 舘嵜の姉さんって面食いなのか? 」
舘嵜春加
「 表紙を見たのね。
確かに面食いかもね。
主人公に憑いてる幽霊が良いとか、主人公のライバル的なキャラが良いとか語ってるから 」
新御睛雉
「 そうなんだな……。
でも、この囲碁漫画なら囲碁部にも有るぞ。
初心者にも解る様に囲碁について詳しく書かれてるからさ。
初心者向けの入門書みたいなもんかもな。
この漫画が連載されてる囲碁雑誌の中身は上級者向けの記事ばっかだけどさ 」
舘嵜春加
「 そうなの? 」
新御睛雉
「 囲碁雑誌は愛読してるプロ棋士が多いんだ。
何せ、囲碁雑誌のテーマが【 神の一手の先へ── 】だからさ。
掲載されてる棋譜もレベルの高いのばっかりさ 」
舘嵜春加
「 ふぅん。
それも囲碁部に有るの? 」
新御睛雉
「 有るよ。
全巻は無いけどな。
中学生には難しい内容だ。
プロ棋士を目指してる院生なら分かるかもだけどな 」
舘嵜春加
「 ふぅん 」
新御睛雉
「 舘嵜も囲碁に興味を持ったか?
舘嵜春加
「 持つ訳ないでしょ。
じゃあ、用も済んだし私は帰るから──」
新御睛雉
「 え…あ……うん…… 」
妖精チック
〔 春加はいけずだよねぇ。
もう少しさ、お話ししても良いんじゃないかな?
《 公園 》の噴水前のベンチに座って──とかさ! 〕
舘嵜春加
「( 早く帰って宿題を終わらせたいの。
洋画を見るって言ったでしょ )」
妖精チック
〔 録画するじゃんかぁ~~。
宿題なんて出て無いしぃ~~ 〕
舘嵜春加
「( チック、煩い。
私は帰るの! )
じゃあね、え~~と……隣のクラスの人 」
新御睛雉
「 新御睛雉な!
“ 睛雉 ” で良いから 」
舘嵜春加
「 バイバイ、新御君── 」
妖精チック
〔 名前で呼んであげなよ、春加ぁ~~ 〕
舘嵜春加
「( 呼ばないから! )」
舘嵜春加は【 セロカ君の本屋 】に新御睛雉を残して出ると、《 自宅 》に向かって歩き出した。
新御睛雉
「 舘嵜春加──。
やっぱり他の女子とは違うな。
馴れ馴れしくないし、黄色い声で囀ずったりしないし。
本当で囲碁部に勧誘すっかな~~ 」
新御睛雉は遠ざかる舘嵜春加の後ろ姿を見送りながら大きく背伸びする。
舘嵜春加とは反対方向へ向かって歩き出す。
最寄り駅の近くに在る《 囲碁サロン 》へ向かう為だ。