⭕ 危険な子 2
──*──*──*── 放課後
妖精チックの姿は舘嵜春加にしか見えない。
妖精チックは自分の姿を見る事が出来、尚且つ会話が可能な舘嵜春加と運命的な出逢いを果たした。
舘嵜春加が5歳の誕生日を迎えた日だ。
5歳となった舘嵜春加は不運にも事故に遭った。
ついてない事故だった。
本来ならば短い人生の幕を下ろす筈だったが、死の間際に妖精チックの姿を見た事が切っ掛けで、妖精チックから妖精の粉を振り掛けられ、一命を取り止める事が出来たのだ。
その日から、舘嵜春加は命の恩人でもある妖精チックの相棒として生活を送る事となった。
妖精チックは “ 神様 ” になる事を目標としている妖精だった。
妖精から精霊となり、精霊から聖霊となり、遥か高見の存在である “ 神様 ” となるのである。
その為には新鮮で活きの良い心臓を喰らい、神聖力を高める必要が有った。
神聖力を高め、ランクアップを繰り返し、妖精から精霊へとクラスチェンジする必要が有るのだ。
クラスチェンジを繰り返し、“ 神様 ” へのクラスチェンジを終えると、幾多のランクアップを経て、生命の宿る星を任される “ 神様 ” となれるのである。
長い道程で有る為、大半はランクアップを途中で諦め、妖精のまま生涯を終える選択をする妖精が多い。
精霊も然り、聖霊も然りで有る。
それでも “ 神様 ” を目指している妖精,精霊,聖霊は存在する。
鬼級と言う稀な階級の妖精チックも “ 神様 ” となる為、日夜奮闘していた。
舘嵜春加が授業を受けている間、妖精チックは分身体を飛ばして校舎内を物色している。
妖精チック
〔( この《 学校 》って意外とクズが多いよね。
そういう時代かな?
春加には内緒で襲っちゃおうかな~~。
獲物の目星は付けとかないとね!
くふふふふ♥
春加には内緒で夜食に頂いちゃおっとぉ~~ )〕
妖精チックの分身体は明らかに問題の有る生徒達に目印を付けていく。
人間の目には見えない目印である。
その中には間崎,土屋,男子生徒C,男子生徒Dも入っている。
妖精チック
〔( こんなもんかなぁ~~。
この《 学校 》は宝の宝庫だよねぇ~~。
春加にバレると厄介だから、上手く事故死に見せ掛けて心臓を頂戴しないとねぇ~~ )〕
行動に制限がされている妖精チックは、舘嵜春加の半径5mから出られなくなっている為、自分の代わりに分身体に獲物の殺害,事故死に見せ掛けた隠蔽工作,心臓の回収…等々の全ての行いをさせる。
誰も妖精が事件に関与していると思わない為、殆んどの事件は “ 完全犯罪 ” となり、未解決案件として処理されてしまうのである。
時々、無関係な悪人に罪を被せて犯人に仕立て上げたりする場合も有る。
帰りのHRが終わる。
生徒達が次々に[ 教室 ]から出て行く。
舘嵜春加も席を立ち、[ 教室 ]を出た。
──*──*──*── 廊下
舘嵜春加
「 誰だっけ?
退いてくれない 」
男子生徒
「 隣のクラスの新御睛雉だ。
話たい事が有るんだ 」
舘嵜春加
「 話したい事?
私は無いけどね 」
妖精チック
〔 春加──。
コイツさ、苛めを止めようとした奴だよぉ~~ 〕
舘嵜春加
「( 知ってる。
《 本屋 》に寄りたいんだよね。
邪魔されたくないのに…… )」
妖精チック
〔 でもさ、結構なイケメンじゃないかな?
顔が整ってるし、男前だよ~~。
とうとう春が到来かな?
春加だけにぃ~~ 〕
舘嵜春加
「( チック、全然面白くないから )
話したい事って?
《 本屋 》に寄りたいから歩きながらで良い? 」
新御睛雉
「 勿論だ!
因みに何を買うんだ? 」
舘嵜春加
「 囲碁漫画 」
新御睛雉
「 囲碁漫画?
舘嵜は囲碁をするのか? 」
舘嵜春加
「 する訳ないでしょ。
ルールも知らないのに。
姉に頼まれたの。
主人公に憑いてる幽霊が好きみたいでね 」
新御睛雉
「 そうなのか 」
舘嵜春加
「 姉は友達と囲碁を始めたみたいだけどね。
最寄り駅の近くに在る《 囲碁サロン 》に足蹴く通ってるかな。
其処で囲碁を教えてる人がカッコイイとかで── 」
新御睛雉
「 へぇ……。
《 囲碁サロン 》ねぇ?
“ サロン ” なんて如何にも高そうだな 」
舘嵜春加
「 実際に高いけど。
姉は成績優秀だからね、両親が全額負担してる。
親子で入会すると割り引き効くみたいだし、母親も足蹴く通ってる 」
新御睛雉
「 イケメン目当で? 」
舘嵜春加
「 当たり前でしょ。
それ以外の理由なんか何処にも無いでしょ 」
新御睛雉
「 舘嵜、その《 囲碁サロン 》にさ、寄ってみないか? 」
舘嵜春加
「 寄らない。
私が寄るのは《 本屋 》だから 」
舘嵜春加は歩き出す。
新御睛雉も歩き出し、舘嵜春加の左隣を歩く。
新御睛雉
「 昼休みは何で突っ掛かったりしたんだ?
他の女子は固まってただろ 」
舘嵜春加
「 [ 図書室 ]に行く為よ。
通行の邪魔だから『 退いて 』って言っただけじゃない。
( チックが力業で退かしてくれたけどね )」
妖精チック
〔 あんなの全然力業じゃないよ~~。
微風を起こしただけさ★ 〕
舘嵜春加
「( 壁と戸に生徒をめり込ませる微風が何処に有るのよ。
お蔭で5限目は自習になったじゃない )」
妖精チック
〔 もっと褒めてくれて良いよ♥️ 〕
舘嵜春加
「( 褒めるか!
仁井先生の授業を潰したんだよ!
仁井先生の授業を楽しみにしてたのに! )」
妖精チック
〔 めんごぉ~~♥️
じゃあ、報告ぅ~~。
春加の推してる仁井先生が、来月から囲碁部の顧問になりまぁ~~す。
これは確かな情報だよ★ 〕
舘嵜春加
「 仁井先生が囲碁部の顧問に?
何で?? 」
新御睛雉
「 ん?
にっちぃの話か?
情報が早いな 」
舘嵜春加
「 え?
( 声に出てた!? )」
新御睛雉
「 何でも今の顧問──松谷先生が育児休暇に入るから、その間臨時で顧問をする事になったんだ。
こりゃ男所帯だった囲碁部に女子生徒が入部して来るかもな!
男子生徒は肩身が狭くなるぞ 」
舘嵜春加
「 そう…臨時で──。
入部希望の生徒には簡単な入部テストをして、ある程度の棋力を見た方が良いかもね 」
新御睛雉
「 おっ、舘嵜もオレ派なんだな!
嬉しいぜ 」
舘嵜春加
「 はぁ?
何なの…… 」
新御睛雉
「 入部希望者が増えるのは喜ばしいけど、全くの素人がにっちぃ目当てで入部されても困るんだよな。
にっちぃは黙っても客寄せパンダになるからな── 」
舘嵜春加
「 言えてる 」
──*──*──*── 下駄箱
下駄箱の中から靴を出し、上履きを下駄箱の中へ入れる。
靴を履き、[ 正面玄関 ]を出ると部活動をしている生徒達の邪魔をしない様に為に[ 校庭 ]の歩道を歩く。
◎ 訂正しました。
活きの良い心臓 ─→ 活きの良い心臓
星 ─→ 星
“ 神様 ” へとなれるのである。─→ “ 神様 ” となれるのである。
目星 ─→ 目星
始めたけみたいだけどね。─→ 始めたみたいだけどね。




