✒ 危険な子 10
──*──*──*── 囲碁教室・前
廼衙靉子
「 春加ぁ~~、此処よ!
この《 囲碁教室 》に新御睛雉プロの甥っ子で、“ 異次元の鬼神 ” って呼ばれてる久賀瀬千晴プロが居るのよぉ!
“ プロ棋士潰し ” の異名を持つ無敗の舘嵜春加プロに持って来いな相手だと思わない? 」
舘嵜春加
「 誰が “ プロ棋士潰し ” だよ。
勝手に変な異名を付けないでよ姉さん…。
潰してないし 」
廼衙靉子
「 『 コイツ、強いぞ! 』って言うイメージが必要なのよ★
女流棋士は舐められ易いからね、舐められない様に尖らせとかないと!
春加は今まで通り、プロ棋士達をケチョンケチョンに負かしてれば良いの♥️ 」
舘嵜春加
「( 負かしてるのは私じゃないんだけど…… )」
???
「 お待たせ。
じゃあ、入ろうか。
厳蒔弓弦プロには話を通してあるよ 」
廼衙靉子
「 榁圖先生ぇ!
此処まで乗せてくださって有り難う御座います♥️
助かりますぅ 」
榁圖先生
「 構わないよ。
僕も舘嵜プロと久賀瀬プロの対局を拝見したいからね。
厳蒔プロとの対局も拝見したかったけど、今回は居ないらしいから残念だよ…… 」
廼衙靉子
「 春加と厳蒔弓弦プロとの対局──。
それは私も見たかったです。
残念ですよね…… 」
舘嵜春加
「 勘弁してよ……。
( はぁ……。
そろそろ囲碁業界からバイバイしたいんだけど……。
何時まで続ければ良いの…… )」
妖精チック
〔 靉子の目的は【 打倒、本因坊須和荼 】だからねぇ。
本因坊須和荼を負かして、本因坊になる迄、解放してもらえないかもだね 〕
舘嵜春加
「( 最低最悪な人生なんだけど。
完全に詰んでるじゃん……。
チックを負かせるぐらいの棋士は居ないの? )」
妖精チック
〔 あははっ。
残念だけど、厳蒔弓弦プロは留守みたいだよぉ~~ 〕
舘嵜春加
「( ついてないね。
因みに久賀瀬千晴プロは強いの?
チックより強いなら、【 打倒、本因坊須和荼 】を託して自由になりたいんだけど…… )」
妖精チック
〔 あははっ。
自由になれたら通帳に振り込まれてる賞金を持って、逃げよっか 〕
舘嵜春加
「( 賛成ね。
姉さんから逃げないと! )」
廼衙靉子
「 春加、入るよ。
中で新御睛雉プロも待ってるわ 」
榁圖先生と姉さんが《 囲碁教室 》の中へ入って行く。
私を囲碁業界から解放してくれる棋士とは何時出逢えるんだろうね──。
──*──*──*── 囲碁教室
──*──*──*── 1階
新御睛雉
「 おっ、来たな!
春加、久し振りだな!
元気してるか? 」
舘嵜春加
「 久し振りね、新御君。
名前呼びとか馴れ馴れしいよ 」
新御睛雉
「 同級生の誼だろ。
オレの事は “ 睛雉 ” で良いって言ってるだろ 」
舘嵜春加
「 今回、私と打つのは新御君の甥っ子だったね。
幾つ? 」
新御睛雉
「 16歳だよ。
今年の10月で17歳になるけどな。
院生になった9歳の頃も強かったけど、今の千晴は前より遥かに強くなったよ。
オレ、未だに千晴に勝てた事が無いんだよな! 」
舘嵜春加
「 嬉しそうに言うんだね。
鼻高々って感じ?
自慢の甥っ子みたいだね 」
新御睛雉
「 まぁな!
何せ、厳蒔先生とキノコンの弟子だぞ。
簡単に負けるかよ!
それにな、千晴に囲碁を教えたのは──、久賀瀬プロ夫妻なんだぞ! 」
榁圖先生
「 久賀瀬プロ夫妻だって!?
息子さん──いや、それにしては年齢が合わないか── 」
新御睛雉
「 お孫さんですよ、榁圖先生。
久賀瀬プロ夫妻は、《 碁会所 》の管理人をしてるんです。
今はオレも手伝ってますよ 」
榁圖先生
「 そうだったのか。
折角だし、僕も挨拶をしに《 碁会所 》へ寄ってみるかな。
新御プロ、次の機会にでも案内してくれるかい? 」
新御睛雉
「 勿論ですよ、榁圖先生 」
廼衙靉子
「 榁圖先生は久賀瀬プロ夫妻を知ってるんですか? 」
榁圖先生
「 院生時代やプロ棋士になり立ての頃に御世話になった事が有ってね。
僕達の世代で御世話になったプロ棋士は多いよ。
確か引っ越されるタイミングで、囲碁界を引退されたんだよ。
それからは話を聞かなくなったからね── 」
廼衙靉子
「 それじゃあ、再会が楽しみですね 」
榁圖先生
「 本当だね。
覚えて居られるかな 」
新御睛雉
「 春加、千晴を紹介するよ 」
新御君が私の手首を掴んで引っ張る。
セクハラじゃ生温いから「 痴漢っ! 」て叫んでやろうかしらね?
新御睛雉
「 春加、オレの自慢の甥っ子だ。
“ 異次元の鬼神 ” こと久賀瀬千晴プロだぞ! 」
久賀瀬千晴
「 一寸、その異名は “ 言わないで ” って言ってるよね!
使うのも広めるのも禁止してる筈だよ、睛雉兄ちゃん(////)」
新御睛雉
「 固い事、言うなよ。
緊張してるだろうと思ってさ、千晴の肩の力を解してやってるんだ 」
久賀瀬千晴
「 …………それに関しては有り難うだけど…(////)」
新御睛雉
「 千晴、紹介するな。
オレの同級生でプロ棋士の舘嵜春加プロだ。
“ プロ棋士潰し ” って呼ばれてる鬼強い棋士だぞ。
この前、忖度無しで莢棊プロを惨敗させた女流棋士さ 」
久賀瀬千晴
「 初めまして、舘嵜春加プロ。
僕は久賀瀬千晴です。
今日は宜しく御願いします 」
舘嵜春加
「 此方こそ、初めまして。
今日は宜しく──。
久賀瀬プロは “ 自分が強い ” って自覚は有るんだよね? 」
久賀瀬千晴
「 えっと………… 」
舘嵜春加
「 私はね、私を負かしてくれる棋士を待ってるの 」
久賀瀬千晴
「 えっ? 」
舘嵜春加
「 【 打倒、本因坊須和荼 】なんて、どうでも良い。
姉さんが勝手に言いふらしてるだけだし……。
私ね、囲碁界からバイバイしたいと思ってるの。
全国を好きに旅して過ごしたいんだよね。
囲碁をしてると貴重な時間が全部、囲碁で潰れちゃうの。
私ね、囲碁三昧な生活なんてウンザリしてるの 」
久賀瀬千晴
「 えとぉ………… 」
舘嵜春加
「 久賀瀬プロには、私を全力で負かしてほしい。
私に勝ったら【 打倒、本因坊須和荼 】は宜しく── 」
久賀瀬千晴
「 えぇっ!? 」
舘嵜春加
「 私に負けたら許さないから。
末代まで祟るからね! 」
久賀瀬千晴
「 えぇぇぇぇぇぇっ!?
そんなぁ~~~~ 」
新御睛雉
「 おっ、何だ千晴。
【 打倒、本因坊須和荼 】を春加から受け継ぐのか?
やる気だなぁ~~ 」
久賀瀬千晴
「 “ 受け継ぐ ” なんて一言も言ってないからね! 」
新御睛雉
「 そうか?
千晴の棋力なら楽勝な気がするけどな。
本気で狙っても良いと思うぞ、本因坊── 」
久賀瀬千晴
「 えぇ~~…… 」
廼衙靉子
「 そろそろ、始めない?
春加、新記録を更新させるのよ! 」
舘嵜春加
「 期待しないでよ。
何時負けるか分からないんだから 」
私と久賀瀬千晴プロは間に机を挟んで向き合った状態で椅子に腰を下ろす。
机の上には碁盤が置かれている。
舘嵜春加
「 私は白番
プロ同士だし、置き石
久賀瀬千晴
「 はい!
大丈夫です 」
廼衙靉子
「 御互い準備は良
じゃあ、対局を始めましょ! 」
舘嵜春加 & 久賀瀬千晴
「「 お願いします 」」
互いに挨拶を終えると、対局の幕が上