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02

会議は次話でおしまいかな、もうちょっと事前背景を……

「具体的には、どのような方法で?」



会議の席ともあって、今まで口を開かなかった魔導師の一人が王に尋ねた



「召還とは申しましても、彼の御方の名前も姿もその波長も

 我々はその一切を知らないのですから」



便乗するように、別の魔導師も口を開いた


そう、女神の名は誰も知らない、

神話にも歴史書にも載っていない、

その姿も伝わっていない、

波長と言えば、その生命特有のものだ

しかしそれこそ会ったこともないのに波長が分かる筈もない


どうやって呼び戻すのか




「深淵読みだ」




ユンファイエンスの眉がぴくりと顰められた



「しかし、ラ=カ・フィラーダ王

 深淵読みは潜って精々20~30年が限度です」


「分かっている、わしも魔術に関しては少し齧っている

 20~30年では女神の名など、到底掛かるまい

 しかし、ここには各国最高位の魔導師が揃っている、

 それぞれ術式を分担すれば数百年は遡れるはずだ」



深淵読みとは、ものの記憶を探る術だ

この世で魔術といえば、それは霊的、あるいは自然的なものに、己の意識を沿わせることによってその力に近づき、引き出す

この深淵読みも、その基本を用いたものだ


ただし、力には熱気や冷気、恐怖といった漠然とした存在感があるが、

記憶にはそのような存在感は無い、ただ、そこに在る、否、在った、というだけの事実だ

感じ取るのも難しいものに意識を沿わせるというのは、相当な技術が必要になってくる


故にこの術を使える者は少なく

大抵の者は使えても二日から三日程度、技術に長けているものでも20~30年

読み取れる範囲も自分の周囲から一部屋程度と大概狭い

その上、拾い上げる記憶は技術の差によって鮮明さに大きな差異があり

術者本人以外が見るには別の大掛かりな術が必要だった



「なるほど…それなら……しかし分担となると術式はどのように……」


「……わたしはこの話、降ります」


「レヴァルヴム殿?

 しかし、やってみる価値はあるのでは……」


「無駄です」


「根拠は?」


「創世期まで遡っても女神の名はありません」




?!




「創世期…だと?」


「そのような出鱈目を……!」



この場に集う魔導師たちは、誰も彼も確かな実力によってその地位を得てきた者達だ

そんな彼等でも深淵を探るのは精々が十数年程度、創世期などという馬鹿げた例えを出されては

頭に血が昇るのも無理もないことだった



「この城、確か建造されたのは720年ほど前でしたか」


「そうだ」


「では、720年前、この城がどのようにして造られたかご存知ですね?」


「無論、城の歴史書には書いてある」



ただし、この城の成り立ちには少々問題があり、公にはされていない



「では、どのようにして造られたか、見せてあげましょう」




ユンファイエンスがそう言った直後、

突如室内に見知らぬ侍女が現れ、一同はびくりと反応した


いつの間に、今は人払いがされているはずだ


しかし、その挙動には異様なものがあった

歩くときは後ろ向きに歩き、掃除をすれば綺麗だった場所にゴミが現れる

侍女が歩く音も無ければ掃除をする音も無い



「聞き苦しいので音は省きます、少し速度を上げましょう」



ユンファイエンスがそう言うと、侍女の動きは早くなり、やがてその姿は次々と入れ替わる

壁や調度品の修復に訪れる者、掃除をする者、会議の支度をする者


一場面では、侍女らしき女達が集まり、一人の侍女を虐めている様子もあり

また、城に勤める文官らしき男とその愛人らしき女の情事もあった


これが、普通ならば気まずそうに眼を逸らす場面であっても

面々はそうはしなかった



「こんな……」


「まさか、」



深淵読みは、通常読み取った本人にか見えない筈だった

これを他の人間にも見せる為には、大掛かりな術式が必要になる、だがそれもない

そして、映像は鮮明だった


映像は更に遡る


室内の様子は、徐々に新しくなり

やがて調度品は消え、テーブルも椅子も消え


壁を構築する為に積み上げられた石材が消え、床も無くなる



「…離宮が消えた」


「あちらに見えるのが本宮ですね」



足に床の感触は伝わるが、視覚で認識するのとしないのでは随分と違う

一同は足元を見るのをやめ、ユンファイエンスの声に従うように本宮を見た


城は、改築や増築の様を見せながらも更に時間を遡らせ

やがて、骨組みが見えるようになってきた



「もうよい!」



王の吐き出すような静止の声に、映像は消え、部屋は元に戻った

しかし、王は知っている


大地に突き立つ骨組みの丸太の、その一本一本に

女達が腹や胸を貫かれて尚、苦しみもがいて生きている様を



人柱



「…これを幻覚を見せられたと言い張るには、無理があるのだろうな」



そう一言もらすと、王はユンファイエンスの眼を見据えて言った



「口外はならん、絶対にだ」



国の威信に関わる問題だが

彼に口止めの必要がないことも王は分かっていた

恐らく、そのようなことに彼は興味などもっていないということを、

王の言葉に興味も無さそうに頷くユンファイエンスに、王も深く頷いた




「それで、創世期まで遡ったところで名前は無いというのは?」


「この世に絶望した女神はどんな人物かと好奇心で昔遡ったことがあります

 我々が自力で繁殖をしていた頃まで遡れば流石にと思い

 作業効率を上げる為、今回のように音を省いてやってみました

 結果はまぁそれなりです、中には、それらしき人物に話し掛ける者も多くいました

 しかし、唇を読んでも、その言葉に名は無く、

 記憶は常にわたしに向かって話し掛けるように再生されます

 半年ほどやって流石に飽きたのでやめてしまいましたが」


「では、この大地自体が女神……」


「そう解釈しても問題はないでしょう

 更に遡ると、人の数は減り、恐らく創世期辺りになります、

 しかし流石にその辺りまで遡ると、大地の記憶はぼやけてしまい、

 遡ることは不可能になってしまいます」



もっとも流石に大陸全土となるといくら遡る速度を速めても見通すには膨大な時間が掛かるために

遡るのは霊的な場所や昔から神事が行われてきた場所に限るが


それでも、そのような場所で呼ばれないのだ、

其処彼処の町や村で名が呼ばれることもないだろう



「では、大地に対して呼び掛ければ……」


「それはどうでしょう」


「?」


「それならば、疾うの昔に応えがあってもいいとは思いませんか?

 何せ、各地の神殿では、今も日夜祈りが捧げられているのですから」


「……では、どうする」



当初の計画は土台から崩れ去った

元々浅はかなものであったが、それでも時間を掛ければ、という安易な考えがあった

しかし幾ら時間を掛けたところで、無駄と分かっているものをこれ以上どうこうしても仕方が無い



「そうですね…先程、昔話をしていて思いついたので

 その方法ではどうでしょう」


「思いついた?」


「何を」


「女神に向かって語り掛ける人物の存在です、

 彼らに協力してもらいましょう」


「ふん、何を馬鹿げたことを」


「既にこの世にいない者ではないかしら?」


「本当にそう思いますか?」


「何?」



ユンファイエンスは微かに哂った



「女神に対し、直に話し掛ける、それは一体どんな人物でしょうね?」



一同は、はっとなった

最高神である女神に、直接話し掛ける

徒人が直接口を利けるとも思えない


だとすれば、その者もまた神、あるいは神事に関わる者だろう


女神がこの世を去ったとして、残る神々も総て去ったとはどこにも記してはいない

たとえ女神と共に去ったのだとしても、総てとは言い切れない



「かなり大規模なものになりますが、魔法陣を敷きます

 それを使って地上の力ある存在に片っ端から接触します

 その上で魔方陣の強制力によって女神を心象させ、それを元に召還を実行する、というのは?」



女神召還が、現実味を帯びてきた


力ある存在、神ともなれば、未だ生きている存在もあるだろう

実際にその姿を見るなり力を感じるなりしたという話は今では聞かないが

それでも、この世のどこかには存在するはず




彼らの思い出を利用して女神を呼び戻すのだ

心象=イメージ

裏篇ではなるべくカタカナ語使わないように頑張りたい……

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