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初っ端グロ表現があって申し訳ないです、好き嫌いが別れるかと思いますが、読んでいただければ是幸い
「おや、皆さんお揃いで、初めまして、レヴァルヴムです
召集はあと10分先だと思っていたのですが?」
「しかし陛下が召集なされたのだ、
一時間は前から集まるべきではないのかユンファイエンス殿」
「はじめまして、と言ったのですよ臣下殿
ラ=カ・フィラーダ国の臣下は最低限の躾がなっていなくてもなれるものなのですか?
それに貴方とは今初めて会ったばかりの関係で、
名前を呼ばれるような親しい間柄ではなかったと記憶しているのですが?」
「なにを、」
「やめぬか、ハルヴィム、非はそなたにある」
「しかし陛下っ」
「ハルヴィム」
「ッ…はい」
苦々しくも返った返事に、しかし男が齎した重圧な空気が改善されるようなことは無かった
一国の王の前に並んだ各国各地から召集された11人の魔導師はじっと沈黙を守り
部屋の要所に詰める騎士たちも、これ以上騒ぎ立てて自国の恥を晒すことのないよう
ぐっと口を噤み、不遜で尊大なこの男の言動を黙って聞くしかない
男は、列国最高と称される程の実力を持つ者で
彼方より流れ来る噂に違わず、狼の種にしては身体は小さく、
黒い耳と黒い眼、長く黒い髪、浅黒い肌を持つ痩せ躯の歳若いルルヴィスで
顔はその丁寧に聞こえるも端々に感じ取れる冷酷さに似合った美しさを持っていた
人々には、大まかに分けて三種類の特徴がある
耳と尾だけは獣であるもののほぼ人型のルルヴィス
人型のようであるものの全身毛皮で覆われ、獣の頭部を保つ獣人型のアヴァニス
人と獣人の部位が混在する混在型、一番多く見られるヴォルシス
手先の器用さなどはこのあたりから影響される部分も大きい
人の姿に近い程、あるいは獣の姿に近い程、己の力や生命力のコントロールが上手いとされる
その為、所謂魔力を操る者はルルヴィスとアヴァニスに比較的多く見られる
男、ユンファイエンスはルルヴィスであり、
この場に集まる魔導師は一人を除き皆ルルヴィスとアヴァニスだった
「わしもそなたの暴言に晒されたくはないからな
ラ=カ・フィラーダ国、第24代王位継承者、ラクスラーダ七世だ」
王の名乗りに皆、礼をとったが
やはり、それに倣わない者が一人
「無礼だぞレヴァルヴム殿!
貴様は何故礼をとらぬ、陛下に礼をとらぬか!!」
先程、やり込められた臣下が
水を得たとばかりに罵るが、ユンファイエンスには通じなかった
「貴方はどうしようもありませんね?
簡単なことです、私はその方の臣下でも、この国の民でもありません
最低限の挨拶をしてしまえば、私にはなんら義務も責務もありはしません」
「では、何故この場に参った!」
「純然たる興味故です
ここに集まる者の大半はその筈ですよ、そうでしょう?」
応えは無かったが、答えは明白だった
皆、それが目的であることに間違いはない
「分かった、分かったハルヴィム、そなたが忠義に厚いことは十分に伝わった
本題に入ろうではないか、
馴れ合うつもりは毛頭ないのだろう、そなた等も、そしてわし等も」
王の促しによって、一同は玉座の間から部屋を移り
各々割り当てられた席についた
「皆も知っての通り、先祖の、
…いや我々の愚かな行いにより女神に見放され、早幾千年経つ」
王の言葉は続いた
この世、ユングヴォルファマナでは、かつて絶えず争いが起こり
殺し合いに継ぐ殺し合いの果てに、とうとう最高神である女神に見放された
-そのように殺し合うばかりならば、もう、生まれ来る必要もないだろう-
彼女の声を聞いた者は多かった
事実、それは幻聴などではないことが証明された
その時、孕んでいた女たちを最後に
子供は一切、生まれなくなった
バランスを欠いた人々はやがて精神を病み、歪ませ、
最早、滅びるより道は無いかに思われた
しかし、幸運なことに、
その時は、幸運だと感じたことに、
いつよりか、空から子供が降ってくるようになった
誰かが命を落とすと、同じ数より少しだけ少ない人数が空から落ちてくる
人々は歓喜し、子は宝とされ、皆が大切に育てた
……しかし、
しかし、人々の歪みはそれでは矯正されなかった
子は手に入るが、それは自分が生んだものではない
自分が生ませたものではない
女は歪み、男も歪んだ
皆、争いを避けることを定め、誓い
小競り合いで収めるよう勤め、一見、平和に日々を紡いでいるように見える
だが、歪みは消えていなかった
それは近年、増えつつある悲劇だった
特に、感受性の鋭い女に起こりやすい
身体の頑丈な女が、自分の胎を引き裂き
ナカへ落ちて来たばかりの子供を詰め込み、生み直そうとする者が現われはじめた
だが、当然のことながら、そのような事が成る筈も無く
多くの子供は死んでいるか
さもなくば気が狂ってしまっているかのどちらかだった
折角、子供を得ても、殺してしまうのでは元も子もない
元々、子供は成人までに大半が減ってしまうものだったが、ここへきてそれに拍車が掛かった
子供は死ぬ
新たに落ちて来る子供は、死んだ数よりも僅かに少ない
数はどんどん減っていく
滅びが現実のものとなりつつあった
「女神召還の目処は立っているのですか?」
「無論だ」