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水遊日和  作者:
第二章 アリとダンジョン
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それぞれのリンクス探し



 隠し通路を出たペプラとフリルは龍へと姿を変え空へと駆け上がる。絶界が危険地帯であり風を司る古龍種の二人にも天敵は存在するが、空が飛べる二人には逃げるだけならさほど難しくはないだろう。

風を司るだけあり素早く上空へと向かうと比較的安全な東側をフリルに任せ、ペプラは南に向かう。


≪水脈は西と東に一本ずつ、南に二本です。ティネントさんが西に向かうそうなのでペプラさんとフリルさんは東と南をお願いします≫


 数分前に受け取った静稀からの念話に二手に分かれ、リンクスが現れるだろう川を探し絶界の上空を進むフリル。東へと向かい岩が剥き出しの大地を進み小さな川を視界に入れ、川岸にはアイアンアントたちが既に集まり周辺を探索し、木々が疎らな事もあり視界は良好で川に沿って探索を進める。


 逸る気持ちを押さえながらリンクスを探すフリルはアイアンアントに手を振られ、手を振り返し下流へと向かう。


 水の精霊に連れ去られちゃって大丈夫かな……早く探さないと水の精霊にリンクスが取られちゃうよね……う~ん、こっちはハズレかな? 川は少し大きくなったけど……ん? あれって鉄道と呼ばれる人の乗り物! 長い芋虫みたいだけど足が速くてすごい!


 ケンジがこの世界にもたらした魔道鉄道を発見するフリル。川と並走する魔道鉄道の速さに感激し興味をそそられるが、首を左右に振り川へと意識を集中する。


 今はリンクス探し! でも、このまま進んだら大きな街があるよね? そうなると人がいっぱい出てきて戦う事になっちゃうのかな? う~ん、一度戻りながら川を探そう。


 古龍種であってもまだ幼いフリルは人類の脅威をペプラから教わっており、戦闘は避けるべきと考え来た空を戻りながら川へ視線を向けリンクス探しを続けるのであった。





 こっちには二本の川が地下を通っていると念話が来たけど空からじゃ分かり辛いな……おっ、アリたちがクマ相手に頑張ってるじゃねぇーかよ! ほら、もっと早く避けないと爪の一撃に吹き飛ばされるぞ! って、吹き飛ばされてるじゃねぇかよ! はぁ、少しだけ手伝ってやるからリンクス探しを手伝えよな!


 空から一気に地上へと急降下するペプラは巨大な爪を構え、音もなくアーマードベアの首を刈り取ると上空へとリターンする。風が吹き荒れ大量の血しぶきが舞い散りアーマードベアの体が前のめりに倒れ、ペプラへと手を振るアイアンアントたち。吹き飛ばされたアイアンアントも無事なようでペコペコと頭を下げている。


 あの程度に苦戦するようじゃ……川だ! リンクスの姿はなさげだが魔物が多いな。ブラッドモンキーにアサシンフォークにミストフランとか……リンクスひとりじゃ相手にするのも大変だよな。よしっ! 減らすか!


 空中で静止すると大きく息を吸い込むと口を開け、浮かび上がる魔方陣。次の瞬間には木々が揺れ暴風が吹き荒れると共に大木と一緒に切り裂かれる魔物たち。真空のブレスが絶界の森を襲い扇状に破壊される自然。


 やべ、少しだけ威力が強かったかも……リンクスが巻き込まれてなければいいが……注意深く辺りを探りながら南下するペプラ。リンクスの魔力を覚えていることもあり、巻き込まれていない現状に安堵しながらも探索を再開する。


 南には二本あるとかいってたが、もう絶界を抜けちまうな……もう一本の地下水は絶界をそのまま抜けて地下を流れているのか?


 絶界の木々が視界から消え草原へと変わり、そのまま南へと飛び続けるペプラ。一分もしないうちに足元には町が広がり悲鳴が耳に入るが、そのまま南へと飛び続けるのであった。





 西へ向かい走るティネントは殺気を全開に放出しながら最短コースで川を探す。木々の間を跳び続け逃げ出す魔物は追わず先を急ぎ、時折挑んでくる魔物は拳を固め一撃で粉砕する。

ティネントが去った後には粉々になった魔物が捨て置かれ、隠れていた魔物たちの餌へと変わる。


 そろそろ西のトップのテリトリーでしょうか?


 目を細めた先には絶海のなかでも巨大な木々が並ぶエリアが視界に入り、西を治める魔物の姿がちらほら見え始めるがスピードを緩ませることなく進む。


 クラウンホワイトも利口になったものですね。つい千年前までは私に向かい爪を向けてきましたが、今では震えるだけですか……


 巨木の枝から走り抜けるティネントを見つめ身を震わせるクラウンホワイトと呼ばれるフクロウの魔物たち。普通は夜行性であるフクロウだが巨木が生い茂った森の中は暗く物音がすれば飛び掛かってくる危険な魔物である。羽に特徴がありセレーションと呼ばれる独特な形状により音を発せずに飛ぶことができる。

 そんなクラウンホワイトたちが身を震わせるなか一匹の大きなフクロウが姿を現し、ティネントは走る速度を抑える。


「今は急いでいるので相手にするにしても手加減しませんが」


 足を止め人型のティネントの数倍はあろうサイズのクラウンホワイトと呼ばれるフクロウの魔物へと声を掛ける。声を掛けられたクラウンホワイトはこの地で最も大きく群れのリーダーなのだろう。怯むことなく地上へと降り立つと両翼を大きく広げる。


「では、一撃で……戦わないのですか?」


 両翼を大きく広げ自身の大きさを誇示し戦うとばかり思っていたティネントだったが、クラウンホワイトのリーダーは自身の翼から一本の羽を嘴で抜き身を屈める。


「………………これは?」


「ホッホーホッホー」


 ティネントが羽を受け取ると嬉しそうに鳴き声を上げるクラウンホワイトのリーダー。バスターソード並みの羽を受け取り困惑するティネントだったがすぐにその羽をアイテムボックスへと入れ、喜びの声を上げるリーダーの横を走り抜ける。


 次からはあれを見せて通れとでもいうのでしょうか?


 ひとつの疑問を浮かべながらも全力で足を進める。そんなティネントを見つめガックリとその場に倒れるクラウンホワイトのリーダー。リーダーが羽を差し出したのには理由があり、フクロウが羽を異性へ差し出すのは求愛行動のひとつである。羽を受け取り立ち去ったティネントを見て意味が伝わらなかったのか、断られたのか、リーダーは後者だと理解したようで巨体を巨木に預け悲し気な鳴き声を上げ、仲間のクラウンホワイトたちが出す励ましの鳴声に包まれるのであった。





 ナシリスは記憶にある絶界の森を紙に描き自身の魔力を通した魔石が辿った水脈を書き入れる。


≪こうして見るとわかりやすいですね≫


「うむ、恐らくだが、ここへ流れる水はワシが住んでおる近くの湖から流れておるな。その水が絶界から人族の街へと流れておるのだろう。まあ、西へと流れているものもあるので何とも言えんが、海まで地下を流れてはおらんだろう。どれ、続きをするかの」


 そう口にしたナシリスはアイテムボックスから新たな魔石を取り出し魔力を注ぎ入れる。


≪もう一度するのですか?≫


「うむ、この水量じゃからの。他にも水脈に繋がる可能性は高いからの。よし、これを滝つぼに落としてくれんか?」


≪お安い御用です!≫


 ナシリスから受け取った魔石は仄かに輝き、先ほど投げた魔石とは違う光を放っている。これは先ほどの魔石とは違う属性を付与し、仮に先に流した魔石と隣接しても間違わないようにするためである。


≪投げ入れますね~≫


 暗い闇に溶けるように消える魔石を滝つぼへ落とす静稀。ナシリスは静かに目を閉じ集中するのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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