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水遊日和  作者:
第一章 塩を買いに街へ
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帰宅と鳥小屋制作



 ダンジョン調査への依頼を終え馬車に乗り込み北へと進み、兵士が常駐する大きな門を抜け馬車を降りる一行。幼い金孤たちが走り出さないよう言い聞かせキラリとライセンが二匹ずつ抱き抱え、最後の一匹はリンクスが抱き上げる。


「これからペプラが龍の姿に戻って送ってくれるから驚いて暴れちゃダメだからな」


「クゥ~」


 元気な鳴き声が重なり赤い瞳を向けるラフォーレ。一時的とはいえ金孤たちとの別れに涙しラフテラに抱かれている。


「ぐすっ、また来て下さいね」


「クゥ~」


「もう、私まで泣いちゃうじゃない。ほら、お別れは笑顔でしないとダメよ。次に会うまで泣き顔で覚えられちゃうわよ」


「はい……早く会いに来て下さいね」


 流れる涙を止めることはできないが微笑みを浮かべるラフォーレに幼い金孤たちは鳴き声を上げ、抱いているキラリは鼻水まで流しながら無理に笑顔を作る。


「り、リンクスさんも早く来て再戦しましょうね。次は剣の方も期待しています!」


 ラフォーレとは別の意味で顔を赤くしながら叫ぶように言葉にするラフィーラ。リンクスは力強く頷き、ペプラが空高く飛び上がると姿を元の巨大な龍へと変えフリルも同じように姿を変える。

 ペプラが本来の姿である古龍へと変えると兵士たちからは恐怖する声が耳に入るが事前に知らせていた事もあってか叫ぶような事はなく、巨大な手を地上スレスレにまで下ろしティネントがウコッケイを入れ眠らせたバッグを置き、他の者たちが乗り込むとラフォーレは大きく手を振り、領主であるケンジが声を上げる。


「また来いよな!」


 大きな声が響き大賢者ナシリスとリンクスが頷きティネントも少しだけ口角を上げると巨大な龍がゆっくりと上昇を始め、それが見えなくなるまで手を振り続けるラフォーレ。  

 ラフィーラは手を振りながら本来の姿を見せた古龍の巨大さに驚きながらも、父である勇者ケンジが討伐 した北の魔王も同じようなサイズであったのだろうと隣に立つ父の偉大さを改めて知るのであった。







「やっぱりペプラに送ってもらうと早いな。もう池が見えるぞ」


「クゥ~」


 絶界と呼ばれる巨大な山の上空から見渡す景色に湖畔の我が家が移り込むとリンクスが声を上げ抱いている幼い金孤が鳴き声を上げる。

 ラフォーレと別れてからあまり元気がないように感じる鳴き声にどうにかしないと、と思いながら地面へと到着すると数名の男女の姿がありどれも頭の上には金色の耳が見え金孤族なのだろうと理解し、案の定キラリやライセンの名を口に叫ぶ。


「どうしたお前たち」


「どうしたではありません! 急に三日も姿を見せなければ魔物に襲われたと思うでしょう! ティネントさま方の姿がないので、もしやと思いましたが……」


「あらあら、心配させたみたいね。でも、朗報よ! 砂糖や水あめをたっぷり買ってきたからね~」


 金孤族たちからジト目を向けられていたライセンを助けるためという訳ではないがキラリからの朗報に歓喜する女性たち。男たちはそれよりもライセンたちの無事を喜びティネントやナシリスに頭を下げる。


「酒も購入してきたからな。村へ運ぶのを手伝ってくれ」


「量がありますから自分が里まで運びましょうか?」


 かなりの量の酒樽が指輪の収納機能にいれてあることもありそう提案するリンクスだったがティネントが口を開く。


「リンクスはナシリスと一緒にウコッケイの柵と家造りです。場所はあの辺りにできるだけ広く作りましょう。持てない分はまた後日にでも取りにくればいいでしょう?」


 ティネントの言葉に頷くライセンと金孤族の男たち。女たちも目を輝かせ早く砂糖と水あめを出して欲しいのかリンクスのまわりに集まり、リンクスは抱いている幼い金孤を近くの女性に渡すと指輪の収納から小分けした水あめの壺や砂糖を入れた壺に酒樽を数個取り出すと歓声が上がり、上空からペプラとフリルが着地しニヤニヤと酒樽とティネントを交互に見つめ口を開く。


「オレの分もあるよな! ここまで送ったからさ!」


「それはライセンたちの物です。貴女には私が用意しますから大人しくナシリスの手伝いでもしていなさい。フリルもですよ」


 ティネントの言葉を受けニッカリと笑顔を作り、杖を掲げ魔術で地面を均しているナシリスの元へと走るペプラ。それを追うフリル。リンクスは金孤族たちが持てる分だけの酒樽を確認すると残りは指輪の収納へと収め鳥小屋を手伝うべく動き出す。


「ワシが地面を均すからリンクスは杭と板を出し、ペプラとフリルはロープを使い広く柵を作る場所を決めてくれるかの」


「おう、任せろ!」


「先にロープだな……えっと、確か一番長いのが、あった。後は杭と板を……」


 リンクスが指輪の保存機能から一番長いロープを出しペプラに渡すと元気に走り出してウコッケイ用の広場を作るべくロープを広げ、フリルは暴走して走り出したペプラに苦笑いしつつもサイズを調整してロープを設置し大まかなサイズを決め、リンクスは杭を適度な感覚で置いて行き板も近くに置くと力任せに杭を素手で差し入れるペプラ。


「我らも手伝おうか?」


 ライセンからの鳥小屋制作を手伝う声が入ったがナシリスが断り、テンションを上げている金孤族の女性たちを思い「簡単な作業だけだからの。早く帰って長老を安心させる方が良いと思うがの」とアドバイスを送り頷く金孤族の男たち。


「もうみんなも帰るらしいからロープで遊ばない。こら、その板で爪を研ぐな」


 幼い金孤たちが杭に登ったりロープを体に巻き付けたり板で爪を研いだりと自由に遊び始め、リンクスが注意をすると甘えた声で鳴きライセンとキラリが忘れて行かないよう声を掛け、ライセンは忘れてはいなかったがキラリはすっかり脳内が甘味になっており我が子を抱き締めるとお礼を言って村へと去って行った。


「杭は全部打ったぞー」


「こちらも終わりました」


「後は板を打ち付けて下さい。地面から少しだけ離して打ち付けて下さいね。こんな感じです」


 手本を見せながら金槌を持ち釘で打ち付けるリンクス。それを見たペプラは指先に魔力を集め小さな風を一点に集中させ削りながら穴を開け、その穴に釘を入れ最後に指で押し入れるという力業で杭に板を打ち付ける。


「あ、あの、私にはまだ無理なので金槌を貸していただけると……」


「すみません。これを使って下さい」


 手にしていた金槌を渡すと微笑みながら受け取り板と釘を持ち作業を再開させるフリル。リンクスは新たに指輪から取り出した金槌を持ち作業を再開させ、中央では大賢者ナシリスが魔術を使い大地を引き上げ小さな丘を作り出す。


「こんなもんかの。後は鳥小屋を横に建て、日陰も用意した方が良いかの」


「鳥小屋にはこれが使えますかね?」


 そう口にしながら作業を終えたリンクスが横に立ち指輪の保存機能から未使用の物置を取り出すと何とも言えない表情になるナシリス。この物置は以前ナシリスが作ったものでリンクスに物作りの楽しさを教えようと一緒に制作したものであるのだが、特に物置が必要という訳でもなかったので放置され、邪魔だと思ったリンクスが指輪に収納していたのである。


「うむ、まあ良いか……入口だけは改良して屋根も付けた方が良いの」


「使い道があって良かったですね。ジジイと一緒に作ったのを思い出しましたよ」


「うむ、そうだの。あの時は金槌で指を叩いて泣いておったからの」


「へぇーリンクスが泣いてたのか!」


「子供の頃ですからね!」


 ペプラが失敗談を聞き笑い、その後は四人で協力して屋根を組み立てティネントが昼食を用意し終わる頃には鳥小屋を完成させるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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