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水遊日和  作者:
第一章 塩を買いに街へ
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ギルドへからの報酬と依頼



 ラフォーレを説得したリンクスは出発準備を終え皆で馬車に乗り冒険者ギルドへと向かう。馬車の中ではラフォーレと幼い金孤たちが一塊になり最後の別れを悲しんでいるが、母であるラフテラとキラリは互いに微笑みを浮かべ、今度来た時には完成した温泉施設を楽しんでほしいと会話を弾ませる。


 二台に分かれたもう一台の馬車にはリンクスとナシリスにティネントと、ケンジやラフィーラにメリッサ。それにペプラとフリルに執事のポールが乗り込み冒険者ギルドへと到着するとぞろぞろと扉を潜り勇者ケンジの登場に盛り上がる冒険者たち。


「うむ、ケンジの人気だけはあるの」


「そういうお前だって嬉しそうにしていうがな」


 勇者と大賢者のやり取りを目にリンクスは巻き込まれぬよう速足で受付へと向かうと、目を輝かせ笑顔の受付嬢と視線が合い会釈し合う。


「査定は終わらせてありますが予定通りにアーマードベアの魔石や毛皮は王都のオークションに掛けられますので、そちらは手形の発行になりますが宜しいですか?」


「はい、それでお願いします」


「では、金額が金額なので奥の部屋へご案内しますね。ロロッサ~一番いいお茶とお菓子をお願いね~」


 隣の受付嬢が暇をしているのを見た受付嬢のレイラからの注文に目を細めるロロッサだったが、立ち上がり奥へと消えて行く。


「ささ、リンクスさま方はこちらへどうぞ~」


 機嫌良く案内をする受付嬢。


「ああ、それと依頼も頼みたい。ギルドマスターを呼んでくれ」


 勇者ケンジからの言葉に目をパチパチとさせると「すぐに呼んで参ります」と言葉を残し二階へと駆け上がる。


「楽しそうなところだな。ここが冒険者ギルドっていう戦闘集団の集まりだろ?」


「戦闘集団は少し違うの。戦いよりも依頼を達成させることが第一じゃからの。まあ、戦えなければ生き残れん場所ではあるがの」


「その割には弱そうなのが多いぞ?」


「そりゃ古龍からしたらな。でも、人間は集まるとその力を発揮するからな。冒険者たちはチームを組み互いの弱点を補い合いながら戦い生きる。それこそが強みであり冒険者の強さだよ」


「うむ、その為のパーティーじゃからの。長年連れ添ったチームは声に出さなくても自然と互いを補い合うからの」


「ですが、圧倒的な力の前ではチームという団結も無駄でしょう。私やペプラが本気で立ち向かえばブレス一発です」


 ティネントの言葉にラフィーラとフリルが顔を青くし、リンクスの後ろへと逃げるように移動する。


「だから前提が違うんだよ。ティネントたちは規格外なの。古龍が人族相手に本気になる方がどうかしているだろうに……はぁ……」


 大きくため息を吐くケンジ。リンクスも古龍の本当の力をいうものを間近で見たことはないが、訓練でその実力の一端を知っていることからか声を発するような事はせず、階段を降りる足音に気が付き視線を向ける。


「依頼があるそうだな。奥の応接室で話そうか」


 階段から降りて来る厳つい顔のギルドマスターのレスターに頭を下げるリンクス。ケンジやナシリスは片手を上げ挨拶し、奥へと案内されソファーに腰を下ろす。


「領主さまの話の前に買取り料の確認を頼む。アーマードベアの魔石と皮に胆のうなどはオークションに掛けるから手形の発行。他は金貨7百50枚だ。内訳はリストにしてあるので確認して欲しい。ああ、アイアンアントに微量だがミスリルが含まれていたと報告があって、可能なら絶界での調査をこちらからリンクスに依頼したいのだが大丈夫か?」


 百枚ごとに入れられた金貨入りの革袋をテーブルに置く受付嬢とギルドマスター。リンクスはアイアンアントの調査に眉間に皺を寄せるが、ティネントが「わかりました。リンクスの修行に丁度良いでしょう」と許可し顔を更に歪め、ギルドマスターは最後の革袋を置きながら厳つい顔で微笑みを浮かべる。


「アイアンアントならフリルも手伝えよ。リンクスと一緒にアリの巣退治をしてさ、村の連中に鉄を分けてやれば今よりも尊敬されるだろうしさ」


「ええ~アイアンアントは固く牙も鋭いので苦手です……それに村の人々は私を崇めているのではなくお姉さまを崇めているだけで……」


「だろ、だからお前がアイアンアントが集めている鉄を村人たちに分けてやれば尊敬されるんだよ。オーガ共は力こそすべてだからオレのように定期的に殴り合いでもしてやればいいが、それは嫌なんだろ?」


「………………はい、リンクスさんが一緒なら……」


 リンクスへ助けてと目で訴えるフリル。

 フリルたちが本来住む場所はオーガたちの村はずれにある山であり、気性の荒いオーガをペプラが助けたことで神よりも上位として崇められている。が、ペプラ自体放浪癖があり崇める対象はその山に住む妹のフリルに向けられているが、まだ幼さの残るフリルに対してオーガたちは崇めてはいるが忠誠心はあまりなく幼い龍を微笑ましく見つめて来る程度であった。

 それを危惧しているペプラからの言葉に嫌々ながら従いリンクスへと助けを求めたのである。


「善処はしますがアイアンアントか……中級や上級の水魔法を使っていいのなら楽勝だけど……」


 今度はリンクスが大賢者ナシリスに視線を送り禁止されている中級以上の水魔法の許可を求める。


「うむ、そうなると修行という意味がなくなるからの。どうせ巣に大量の水を流して溺死させる心算じゃろ?」


「それが一番早いく安全ですから。剣を振るのも楽しいのですがフリルの安全を考えるとな」


 その言葉に目を輝かせるフリル。まだ幼く見えるが最強種である古龍の自分を気遣うリンクスに心の中で喜び、横で話を聞くラフィーラはひとり口を尖らせる。


「話が逸れたがアイアンアントの話はこちらで依頼書を出すのでお願いしたい。アイアンアントの討伐と巣として使われている洞窟なり鉱山の調査だな」


 ギルドマスターが頭を下げリンクスも了承し頭を下げると受付嬢のレイラは急ぎ受付へ依頼書を作りに走り、お茶を持って現れたロロッサは人数分のお茶と砂糖菓子を置くと一礼して部屋を退出する。


「俺からはまだ極秘にしてほしいのだが、西に新しいダンジョンが生まれたらしくてな」


「ダンジョン!?」


「だから極秘! もっと声を押さえてくれ。俺がこの目で見ていないので断言できないがこの街の西にダンジョンができたらしい。まだ生まれたばかりで五階層しかないから場所と内部の偵察を頼みたい。ダンジョンが確認されれば西に新しい砦を築き大進行スタンピードに備えたいからな。もちろん資源としての価値があれば潰すことなく利用したい。その為の人選を頼む」


 深く頭を下げる領主ケンジにギルドマスターは顎に手を当てこの街にいる冒険者を思い浮かべる。


「そうなると『北の黒剣』か『赤鉄の斧』か『月の遠吠え』……ナシリスさまにお願いしたいというのが正直なところだが……」


「ワシは帰ってやる事があるからの」


「ウコッケイの策作りですね。小屋もお願いします」


「ん? ウコッケイ? 小屋?」


「お土産に鳥貴族さまから頂いた鳥の正式名称です。卵を産む鳥を雄と雌で六羽頂いたので家で増やします」


 さらりと柵と小屋作りをナシリスに任せたティネント。その横では鳥貴族という名称にケンジが苦笑いを浮かべ、ペプラは「毎日卵が食べられるのか!」とひとり喜びの声を上げるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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