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水遊日和  作者:
第三章 王女と精霊と古龍
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リンクスとの交渉と喜ぶリロリアル



 メイドたちが動きまわり空いた食器を片付け、食後のお茶が振舞われたところでリロリアルがリンクスに向け口を開く。


「リンクスさまに聞きたい事があるのですが宜しいでしょうか?」


 リンクスは幼い金狐を膝に乗せ優しく撫でていたが、その手を止めてリロリアルへと振り向く。


「聞きたい事ですか? えっと、その前に様とか付けなくても大丈夫です。様を付けられるような人はジジイやティネントさんやケンジさんみたいな人だと思いますし」


「いえ、アーマードベアを単独で撃破し、精霊と契約をなさったのなら様を付けるのは当然です。それに聞きたい事というのはアーマードベアを安全に討伐する方法と精霊についてなのですわ」


 凛とした表情でリンクスを見つめるリロリアル。


「アーマードベアの安全な討伐の仕方ですか? それなら自分よりもティネントさんやジジイに聞いた方がいいと思いますよ。水球で鼻と口を塞いで酸欠を起こすまで逃げ回るのが自分の戦い方ですから。それとアーマードベアが住む辺りは他にも危険な魔物もいるので大勢で向うのではなく少数精鋭にした方が安全だと思いますね」


「絶界の調査報告書を見ましたが、多くも冒険者と兵士を連れ向かい被害を拡大させたのですね」


「魔物の種類にも選りますが音や気配に魔力といったものに敏感ですから。人が増えればそれだけ気配などを悟られやすくなります。って、アーマードベアの倒し方を聞いて実戦する気なのですか?」


「ええ、本当なら王都のオークションで落札する心算だったのですが邪魔が入りまして、現地へ向かえば何かしらの入手する方法があるかもと」


「それなら自分がまだ冒険者ギルドに卸していないものがありますよ。丸々一匹持って帰りますか?」


 リンクスの言葉に目を丸めるリロリアル。ルナや『黒曜の黒薔薇』たちも同じような表情で固まり、ラフテラが口を開く。


「そのアーマードベアは誰が討伐したのかしら?」


「自分が一年ほど前に水魔法で窒息させた中型の個体ですね。指輪の保存機能を使っているので傷んだりはしていないはずです」


「その指輪の性能にも驚きなのですが……」


「指輪ですか? これはティネントさんが成人の祝いに作ってくれたもので、古龍さんが何人も協力してくれたと聞いています。指輪に収納すると時間経過が止まるそうで、街で新鮮なものを買っても新鮮なまま持ち帰れて便利ですね」


 最早便利という次元ではないだろうと思うラフテラ。指輪に収納が付いているものもあるが時間が停止するようなものは人の手で作ることはできず、ダンジョンから数例あるだけでどれも国が管理するようなものである。もし、売りに出されれば国家間で争いになり持ち主は消されるような事態になるだろう。


「ラフォーレにニッケラ、この事は絶対にひとに言ってはダメよ。約束よ」


「はい、内緒です!」


「も、もちろんです。私でも今の話は理解できました……」


 貴族のルールを教え込まれているニッケラは引き攣った顔で頷きリンクスが持つ指輪の貴重性や危険性に気が付いたのだろう。


「あ、あの、どれほどの金額を用意したら譲っていただけるのでしょうか?」


 再起動したリロリアルが恐る恐るリンクスへアーマードベアの取引金額を確認する。


「値段ですか? アーマードベアならすぐに狩れますし、食べても美味しくないので自分的には処分する心算ですので無料でもいいのですが」


「それはダメですわ! 少なくとも金貨千枚以上の価値があります! 冒険者ギルドに持って行き査定だけでもしてもらい支払わせて下さい!」


「えっと、明日はフリルと冒険者ギルドに行く予定があるので、そこで査定してもらいましょうか」


「ええ、そうしましょう! 私も同行させて下さい」


「クゥ~ン」


 膝に乗せている幼い金狐が顔を上げ私も一緒に行きたいと鳴き声を上げ、ラフォーレやニッケラの傍にいた幼い金狐たちもリンクスのまわりに集まり鳴き声を上げる。


「お前たちもダメだからな。街の中には怖い貴族がいっぱいだとジジイもいっていただろ。金狐の毛皮のマフラーにされちゃうからな」


 リンクスが脅すような口調で幼い金狐たちに語り掛けると膝に乗っていた一匹がリンクスの服をよじ登りその身を首にまとわりつき、他の幼い金狐も意味を理解したのかリンクスを登り始める。


「ふふふ、本当にマフラーみたいだわ」


「温かそうです!」


「フワフワサラサラの金孤ちゃんマフラーですね!」


 ラフテラにラフォーレとニッケラが笑顔でリンクスの首にしがみ付く姿を見つめ、リロリアルやルナも笑い声を上げる。


「そうやってマフラーの姿になれば一緒に冒険者ギルドへ連れて行ってもらえると思ったのでしょうね」


「これこそアンミラに見せたら昇天してしまいますね。ふふ、本当に可愛らしいです」


 首や背中にくっ付き鳴き声を上げる幼い金狐たちにリンクスは困った顔をしながらも優しく撫で、そんなリンクスへ目を細め見つめるライセン。父親として思う所があるのだろう。


「そういえば精霊についても聞きたいとのことでしたが、自分が契約しているのは水の精霊でカレイと名付けました。今頭の上にいるのですが見えますか?」


 皆でリンクスの頭へ視線を向け、メイドたちまで視線を向けるが誰もカレイを見ることができず口を尖らせるリロリアル。ただ、ルナだけは小さく手を上げて口を開く。


「あ、あの、くっきりと見ることはできませんが違和感のようなものを感じます。何かしらいるのかなぁ~ぐらいな感じです」


「それがカレイですね。自分はカレイと契約してからは他の精霊もよく見えるようになりましたね。そうそう、この街の教会には大地の精霊がいましたよ」


「本当ですか! それなら冒険者ギルドの後に教会へ行きましょう!」


「フリルもそれでいいか?」


「うん! 教会は行ったことないから楽しみ! 買い物もしようね!」


 笑顔を咲かせるフリル。


「教会にはステンドグラスという綺麗なガラスが張られていたからカレイも楽しめると思うぞ」


≪へぇ~それは楽しみだね~≫


 頭の上のカレイが食いつくであろうキラキラしたステンドグラスを思い出し口にすると案の定喜び頭の上から離れ部屋を飛び回るカレイ。そして、それを目で追うルナ。


「水の精霊が部屋を飛び回っていませんか?」


「カレイはキラキラしたものが好きみたいで、以前、教会で見たステンドグラスの事を教えたので嬉しくなって飛び回っていますね。ルナさんはもう少し魔力が高くなると精霊が見えるようになるかもしれませんね」


「ルナばかりズルいわ! 私が精霊と仲良くなりたいのに!」


 リロリアルがルナへ口を尖らせ、ルナは視線を漂わせていたがリロリアルへと視線を向ける。ただ、その視線はリロリアルよりも少し上であり、リンクスは口を開く。


「今、頭の上にカレイがいますよ。良かったら手を前に出して下さい」


「手を前にですか? こ、こうですか」


 リンクスがそう口にするとリロリアルの手の上にカレイが着地をし、ルナは目をパチパチとさせながらリロリアルの上に精霊が移動したのだと気が付き指を差して口にする。


「念願だった精霊がお嬢さまの手の上にいますよ」


「そ、そうなの。ほ、仄かに冷たい? でも重さもなくて良くわからないけど何かいるような気がする。キャッ!?」


 リロリアルが小さな悲鳴を上げ気を失っていたアンミラが一瞬にして立ち上がり警戒態勢にはいるが、リロリアルは無事でありその手には少量の水で濡れ、カレイがイタズラをして逃げるように飛び回って笑っている。


「こら、イタズラしちゃダメだろう」


≪だって、精霊に会いたかったんだろ? ほら、喜んでいるぜ~≫


 カレイがリンクスに伝えリロリアルへと視線を向けると手に残った水を前にキャッキャと喜び、自慢げにルナに報告して見せ、警戒態勢だったアンミラはその喜ぶ姿に数度瞬きをしてからゆっくりと座布団に座り、逆に警戒している幼い金狐がラフォーレやニッケラの後ろに隠れている姿をだらしない顔で見つめるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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