そして少し、自由が広がった
いつだって、帰り道を気にしていた
どこに行っても、不思議でも、自由でも、
いつだって、少しの不安で、佇んだり、していた
小さな頃は、家の中のいろんな場所が目印で、
押入れの奥から、トイレの壁から、
ブラウン管のテレビの裏から、
よくわからないような変な場所へ
旅立ってしまうことが偶にあった、気がする
原っぱを走って、
いばらを蹴散らして、
雪原で寝転んで、
自由だった、のかもしれない
それでも、空を飛ぶことはなかった
泳ぐこともしなかった
いつでも地に足が付いていた、ような
いつも最後には、来た道を戻る
雪原の足跡を辿って、
いばらの残骸を横切って、
原っぱで少し不安になって、
押入れから、トイレから、テレビの裏の埃から、
家に戻れて、安心して、布団に潜って、
そしてまた、目が覚めるだけ、どこまでも現実だった
僕は本当は、早く家に帰りたかった
いつもの布団じゃないと、
帰り方が分からなくなるから、どこにも行きたくない
たぶん、だからあの日、僕は泣いていたのか