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狂気の幕開け

復讐の狂人と化したマリウスのクーデターが遂に実行された。

スッラが、ローマから出立したことが確認されるとマリウスはすぐさま行動に打ってでた。


マリウスは、「何人もローマ市内に軍団を送り込んではならない」という、王政ローマ期から護られてきた不可侵の掟を破り、自身の軍団をローマ市内に送り込んだのだ。


熟練の古参兵たちは、瞬く間に元老院議会を取り囲んだ。


外の様子を知らない元老院議員たちは、議場内で何時ものように議論に望んでいた。


彼らがマリウスの軍団に包囲されたと気づいた時には時既に遅く、議場に乱入してきた兵たちに、議員たちは瞬く間に拘束されていった。


マリウスの命令の通り、民衆派の政治家たちは直ぐに解放され、それ以外の全ての政治家たちが議場内に残された。


「貴様らはいったい何をしているのかわかっているのか!」


最早これまでと悟った者も多くいるなか、高齢な元老院議員たちのように、兵隊等の道徳心に問いかけることで、説得を試みようとする者もいた。


しかし、軍団兵等の答えは怯える議員たちに向けている冷笑からよく分かる。


一つの軍靴の乾いた音が室内に鳴り響く。


その音と同時に、軍団兵等は足早に移動、議場の左右に別れて整列した。


マリウスが太陽を背に議会内に入ってくる。


「よいか、諸君らの死は天命なのである。」


マリウスは満面の笑みを浮かべながらそう言った。


拘束された閥族派の元老院議員たちは、軍団兵たちの手で足に縄を縛りつけていった。


哀れな元老院議員たちは、議場から練兵場の間(2キロの道のり)を何度も引きずり回された末に、生き残った者は、練兵所にて斬首とされた。


この残虐なマリウスの元老院への報復は、彼の持病に問題があると述べる者もいた。


というのも、青年期アフリカ制服軍団に所属しており、アフリカの地で感染したマラリア熱の後遺症が70を過ぎた今でも度々再発している。


この後遺症の症状が現れると、マリウスの体には激しい高熱と発作が生じた。


後遺症の苦しみは筆舌しがたく、マリウスが時頼部下や他者に見せる残忍さは、精神的錯乱によるものだとするものである。


かくして、マリウスの復讐劇は狼煙を上げた。


処刑場と練兵所への道は、議員たちの血と肉片で彩られ、異様な臭いが立ち込めていた。


マリウスのクーデターにより反マリウス派のカ過半数が処刑され、500名もいた議員数は150名程に減少した。


民衆派と親マリウス派を含めた元老院議員たちは、スッラに委譲された指揮権を合法的にはく奪し、その指揮権をマリウスの下に返還したのである。


また、彼らは合法的に反マリウス派の政治家協力者とその家族を合法的に殺害してもよいとする法案を可決した。


これにより、ローマの道には若い女や子供も含めた、政治犯とされた者たちの死体が日常的に転がる環境ができた。


この知らせを黒海沿岸部で聞いたスッラは激怒した。


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