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スッラ体制下の暮らし 2
私の女友達の中に、ラケーレと言う女性がいる。
彼女は、30代になってもその美しさは変わらず、今もなお貴族どうしの社交界には、必ず出席する、会場の華だ。
彼女は名門貴族の末っ子として生まれ、政略結婚でイタリア南部の名士と結婚したが、先の戦争で指揮官として出兵した夫はマリウス軍に捉えられ、惨殺された。
以降、未亡人となった彼女は夫の莫大な資産とその美貌から求婚されることが多く、一部の噂では、功労者のポンペイウスやクラッススを手玉にしたと聞く。
悪い噂も聞くが、多くの捏造話が作られるほど魅力的な女性なのは確かだ。
だが、私は彼女が社交的でありながら、誠実な性格を持つことを誰よりも理解している。
彼女は、夫の軍団に参加していた若き参謀カシウスに恋をしていた。
カシウスは二十代半ばで、顔は普通だが誠実で寡黙な好青年だった。
先の戦いでは、指揮官である彼女の夫が「お前に遺書と妻」を任せると言い、戦場から脱出させ、知人のゲルマン人の村に亡命させた。
そんな、愛されたカシウスであったが彼は平民出身の身分であり、民衆を扇動したマリウス派の一件が尾を引き、現在のスッラ体制下では平民の地位はよわい。
私は、この二人の恋路に焦点を当てたいと思う。




