老境
スッラは自身の体に衰えを感じていた。
政治や財務などのストレスから、退廃的な生活をより好むようになっていた。
スッラは青年期を生活困窮者たちの安宿で過ごし、酒と女、美少年を愛する退廃的な生活を送った。
体力の衰えがより顕著になって来ると、スッラは若き頃の生活を懐かしみ、気楽な日々を取り戻そうとしているかのようにも見える。
日々のストレスは人事からも来ている。
例えば、建前上はスッラに忠実なように見えるポンペイウスだが奴は頭がきれる。
一部の連中も勘づいているが、ポンペイウスは忠実なフリをして、利権と政界での発言件を日増しに強めている。
奴はスッラに見切りをつければ、今すぐにでも現政権を武力で打倒することもできるだろう。スッラなき後に武力にものを言わせ、ローマを掌握するかもしれない。
私を含めた元老院議員たちは、この危うさをスッラに提言した。
返答は決まって「安心せよ、それよりカエサルだ!」
ローマの安定は今や、60の老境に立とうとしているこの独裁官に委ねられている。
町では度々不審火が起こり、焼け野原となった土地が捨て値で売られ、それをクラッススの商会が買い叩く。
スッラは部下と自身を支える有力者にはとことん甘かった。
ただ、その甘さが現在の不安定な共和制に絶妙なバランスを与え、すんでのところで国家の崩壊を食いとどめていた。
誰もが、この危うい均衡状態は全てこの独裁官の存命にかかっていることを理解していた。




