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マリウス再び

スッラによって追放された英雄マリウスが再びローマに舞い戻る。

スッラが黒海沿岸で快進撃を続け、ミトリダテースの領地となった旧帝国領を次々に奪還していった。


その頃、植民地カルタゴからあの男が再びローマを目指し、出港した。


ローマに深い怨みを持つ、あのマリウスだ。


マリウスは既に述べたように、民衆派のキンナを味方につける事に成功し、キンナの手によりスッラによって立法されたマリウスを極刑に処すべしと明記された法案を見事に白紙にした。


そのため、マリウスは合法的にローマに帰還することが可能となっていた。


マリウスは復讐と憎悪に取り憑かれており、カルタゴを出発する際、生き残った反マリウス派を一掃すると、強力な投石器と軍船一杯の焼夷弾(油の樽)を艦船に搭載させていた。


しかし、この頃のマリウスは、従者たちの証言からも既に末期状態であった。


マリウスは青年期に発症したマラリア熱の後遺症により立っているのが不思議なくらい手と足はやせ細っていた。


また、全身にできた腫瘍は黒ずみ、下腹部は異常なほどに膨らみ、左手は常に震えていたという。


ローマ追放のストレスから幻覚、幻聴にも悩まされており、カルタゴを出発する二週間ほど前から「神のお告げである」と狂ったように叫ぶことがあり、自身に従順であった指揮官二人を裏切者てして罷免すると、裁判抜きで残酷な拷問の末に、公開処刑にしている。


このような事もあり、マリウスがローマに帰還する際、マリウスと共に行動する指揮官たちの多くは、既にマリウスから距離を取り始めていた。


マリウスの肉体と精神状態は最早限界を超えようとしていたことは誰の目にも明らかであった。


しかし、狂人と化したマリウスの姿をまだ見ていないイタリア半島の親マリウス派の残党と民衆派の多くは、マリウスの帰還を歓迎していた。


完全に狂ってしまった英雄マリウスは、敵味方関係なく、イタリア半島に上陸するや否や、スッラに少しでも協力的な姿勢を見せた都市を軍船一杯に積んできた油で焼き払い、男の首を狩り、女子供を犯すことを兵士たちに許可した。


市民たちの多くは、怒りの矛先はスッラ属する閥族派など、政治家に向くものだと油断しきっていた。


そのため、多くの人々たちは逃げる事もせず、鶏のように次々と捕まっていったのだ。


「おお、神よ」


後にローマに平穏が訪れ、文化芸術が再び息を吹きかえした頃の歴史家たちは口を揃えて、マリウスによる虐殺劇をこのように書き記している。


マリウスの軍団に樹林された都市は、至る所に血の水たまりがあり、焦げた人間の骸がカラスのいたずらで、そこかしこに四散していた。


比較的最近、マリウスの軍団が蹂躙した都市は例外なく血と肉の焦げる臭い。臓物の腐臭が充満していて、それらの腐肉を貪る鳥たちが昼の空を黒く染めたという。


マリウスは、スッラの上陸した南イタリアから、同じくローマへ向けて、自身の軍団を北上させた。


「フヒヒ、ヒッヒヒヒ....」


マリウスは奇妙な笑い声を出しながら小高い丘の上に座ると、燃える都市を眺めながら熟れた赤リンゴを頬張った。

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