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ありふれたせかいせいふく ピノキオP

著作権的にはルールを守った「引用」であれば歌詞を全文引っ張ってきても大丈夫そうですね

この辺詳しくないので有識者の方がいたら情報お願いします

では最初の曲であり、たぶん最後の曲になるであろう歌詞解釈一曲目は、ピノキオPさんの「ありふれたせかいせいふく」です!


なんとなくで動画サイトで曲を聴いていた時に流れていたのがこの曲で、ふと「あれ、このタイトルってどういう意味なんだろ」と考えた瞬間からドツボにはまり、それからしばらくうんうんと唸りながら歌詞の意味を考え続け、自分では「あっこれそこそこ筋通ってるんじゃないか?」みたいな答えが見つかったのでネットで歌詞解釈を検索したら、どう考えても真剣に考えてるとは思えないゴミみたいな解釈(個人の感想です)ばかりが目についたのでイラッときた、というのがこの曲を選んだ理由となります






まず、この歌詞解釈を読む前に、ネットなどで「ありふれたせかいせいふく」の曲を聴いてみることをオススメします


曲を知らないのに歌詞の解釈を見ても意味が分かりませんし、他人の歌詞解釈を先に見てしまうと先入観が生まれてしまって、フラットな視点が持てない可能性があります



















大丈夫でしょうか?

まず何はともあれ歌詞がないと話にならないので全文を載せます


解説の便宜上、歌詞の一番の最初の部分、二番の真ん中の部分……などと語るのでは分かりにくいので、[1-a]や[2-c]のような表記でパートを分けています



【歌詞全文】


「ありふれたせかいせいふく」 ピノキオP


 [1-a]

 狭い教室のかたつむり 舌打ちが奏でるメロディ


 [1-b]

 いじめっこ いじめられっこ どちらもピーマンは苦いね 大発見


 [1-c]

 かっこいいこも かわいいこも 君のもの


 [1-d]

 だから 嘘でも本音でイエスのアンケート


 [1-e]

 痛い 痛い 痛いのは嫌だから

 逆らえないじゃない…


 [1-f]

 「ありがとう」も「おはよう」も「ごめんなさい」も全部

 懐かしい言葉になる日が来るの


 [1-g]

 14歳も 40歳も 踊ろう らったったった

 誰か 誰か みんなを助けて



 [2-a]

 イライラ ポイ捨て グランプリ 幼子の可愛いアイロニー


 [2-b]

 恋人も 侵略者も どちらも肉の塊か 大実験


 [2-c]

 サーロインも ツバメの巣も 君のもの


 [2-d]

 だから スパイの通信記録はシークレット


 [2-e]

 怖い 怖い 怖いのはやだから

 眠っていたいじゃない…


 [2-f]

 「うれしい」も「かなしい」も「わるふざけ」も全部

 四六時中 監視される日が来るの


 [2-g]

 佐藤さんも 鈴木さんも 歌おう らんらんらんらん

 いつか いつか 名前も忘れて



 [h]

 仲間になったらハッピーエンド?

 仲間はずれはどこへ行こう

 血まみれになったパスポート

 選択の瞬間は すぐ すぐ すぐそばに


 [3-f]

 「さよなら」も「おやすみ」も「またあした」も全部

 繋がらずに途切れる日が来るの


 [3-g]

 田中さんも 高橋さんも 笑おう わっはっはっは

 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か


 [4-f]

 「ありがとう」も「おはよう」も「ごめんなさい」も全部

 懐かしい言葉になる日が来るの


 [4-g]

 陰謀論も ガスコンロも 踊ろう らったったった

 誰か 誰か みんなを助けて





はい!

ざっと歌詞だけを読んでいても、一回だけだと何も意味が分からないかと思います


ピノキオPさんの曲の特徴はナンセンスとアイロニーだと思っていて、いえまあ、かっこいい言葉を使ってみたかっただけですが、ともあれ素直な歌詞とはちょっとお世辞にも言い難く、またMVに歌詞解釈の助けになりそうな情報があまりない(単に読み取れてない可能性もありますが)ので、ここから丁寧に読み解いていきたいと思います






【一番の歌詞解釈】


まず、ほぼ議論の余地がないであろうという確度で、この曲の一番([1-a]から[1-g])までは学校におけるいじめの歌です

ここからパートごとに歌詞を引用して、その意味を丁寧に拾っていきますが、「そんなもん分かっとるわい!」って人は、「―――――」で区切っているのでそこまで飛ばしてください




 [1-a]

 狭い教室のかたつむり 舌打ちが奏でるメロディ


「かたつむり」とは「どんくさい子供=いじめられっ子」であり、それに対して「奏でるメロディ」と言えるほどに複数人が舌打ちをしている=教室でいじめが起こっていることを示唆しています



 [1-b]

 いじめっこ いじめられっこ どちらもピーマンは苦いね 大発見


いじめる側もいじめられる側もピーマンも食べられないような子供で、どちらも(第三者から見れば)大差ないのに、いじめる側といじめられる側に分かれていることに対する皮肉を感じさせる一文です

また、「ピーマンが苦い」ということが話題になることから、おそらく話の舞台が小・中学校を想定しているのではないかと類推されます



 [1-c]

 かっこいいこも かわいいこも 君のもの


「かっこいい子とかわいい子(いわゆるスクールカースト上位)が君(いじめっ子)のもの」であるという意で、クラス内でいじめっ子が圧倒的な権力を持っていることを示していると考えられます



 [1-d]

 だから 嘘でも本音でイエスのアンケート


この「アンケート」とはいじめに関するアンケートではないかと推測出来ます

クラスの主要人物は全ていじめっ子の「君」の味方なので、たとえアンケートに「本当のこと(本音)を書いてください」と書かれていたとしても、いじめっ子に逆らえるはずがないので嘘を書くしかない、という状況を示しています


あるいは別解として、いじめっ子の「〇〇だよな?」と圧力をかけた質問を「アンケート」と比喩的に表現している、などの解釈もありえますが、どちらにせよ「いじめっ子に逆らえずに自分の心と関係ない答えを強いられている」という状況を示しているように読み取れます



 [1-e]

 痛い 痛い 痛いのは嫌だから

 逆らえないじゃない…


いじめっ子に逆らうと、痛い(いじめられる)のを表していると考えられます



 [1-f]

 「ありがとう」も「おはよう」も「ごめんなさい」も全部

 懐かしい言葉になる日が来るの


意味を確定させるのは難しいですが、おそらくは「いじめっ子の恐怖政治の中で、感謝の言葉やあいさつ、謝ることすら懐かしい(使われない)言葉になる=気軽にあいさつも言えなくなる」ということを示しているのではないかと推測出来ます



 [1-g]

 14歳も 40歳も 踊ろう らったったった

 誰か 誰か みんなを助けて


十四歳というのは教室の生徒(中学生)で、四十歳というのは教師を指していると考えるのが自然です

ここで重要なのは、助けてほしいのは「いじめられっ子」ではなく、「みんな」=教室の全員であり、この歌が単純にいじめられっ子が助けを求めているストーリーなどではないことを示しています





――――――――――――――――――――――――――――――――



【二番の歌詞解釈】


次の二番は「社会や国家間の軋轢」についての話になりますが、しっかりと読むと一番と同じメロディの部分は、一番の該当箇所とほぼ同様の内容を歌っていることが分かります


つまり、[1-a]と[2-a]、[1-c]と[2-c]などを比べてみると、語っていることに類似性が見られる、ということです

「それももう分かっとるわい!」って人は次の「――――――」まで飛ばしてください



 [2-a]

 イライラ ポイ捨て グランプリ 幼子の可愛いアイロニー


おそらくは幼子の口にした「イライラポイ捨てグランプリ」という言葉は、「イライラして(おそらくタバコの)ポイ捨てをする人間が、大会が開けるほどたくさんいる」ということを示していると考えられますが、これは[1-a]の歌詞と明確な類似性があります


これは「メロディとアイロニーで韻を踏んでいる」という程度の話ではなく、[1-a][2-a]共に、歌詞の内容が「何か悪いことをする人間が」「複数いる」という内容を遠回しに歌っていて、これは[1-a]と[2-a]の照応関係を強烈に示唆しています


同時に、一番の歌詞が「狭い教室」の「生徒」の事柄だったのに対して、今回の話題は「学校外の大人」を想起させるため、話題を「狭い教室」だけに終始させていた一番の歌詞とは明らかに異なることを提示している箇所とも言えます



 [2-b]

 恋人も 侵略者も どちらも肉の塊か 大実験


これは[1-b]と例こそ違うものの同じ主張をしていて、「恋人と侵略者」、つまり「大事なものと憎いものという対極なものでも、どちらも肉の塊になる」、すなわち、「立場の違うものでも本質は変わらない」という趣旨の文になります


ここであえて「肉の塊」という表現を使っているのは、かなりの確度で「人がただの肉の塊(死体)となる」ことを意識した言葉と捉えられるので、もう少し踏み込んで解釈すると、「恋人(自国の大事な人)も侵略者(他国の戦争相手)も(銃で撃たれて死ねば)どちらも肉の塊(死体)になる」かという実験、つまりは戦争について論じているという解釈も可能かと思います



 [2-c]

 サーロインも ツバメの巣も 君のもの


サーロインとツバメの巣はどちらも高級なイメージのある食材であり、これは富を示していると考えられます

一番では「かっこいい子とかわいい子」が権力の象徴でしたが、大人社会での権力は金銭、ということでしょう



 [2-d]

 だから スパイの通信記録はシークレット

 [2-e]

 怖い 怖い 怖いのはやだから

 眠っていたいじゃない…


ここは意味が確定しにくいところですが、[1-d][1-e]との照応も考えると、「スパイが何か良くないことをしているのは知っているけれど、権力に逆らうと怖いので、眠って(見て見ぬフリをして)いたい」と取るのが自然ではないかと思います



 [2-f]

 「うれしい」も「かなしい」も「わるふざけ」も全部

 四六時中 監視される日が来るの


[1-f]同様、これまでの歌詞に歌われるようなことが起こり続けた結果を表す部分です

スパイ社会、監視社会を想起させる歌詞であり、「いじめっ子が怖くて気軽に挨拶も出来ない教室」と、「スパイや密告が怖くて素直に感情すら表に出せない国家」を重ね合わせていると考えられます



 [2-g]

 佐藤さんも 鈴木さんも 歌おう らんらんらんらん

 いつか いつか 名前も忘れて


監視社会の流れから考えると、名前を剥奪され、IDで人を管理するディストピア的な世界を想起させます





――――――――――――――――――――――――――――――――





【間奏以降の歌詞解釈】


ここから間奏や三番とも言える部分に入りますが、以降は具体性のある言葉が少ないので、ここからの解釈はある程度あやふやになります

例によって解釈に自信ニキは次の区切りまで飛ばしてください



 [h]

 仲間になったらハッピーエンド?

 仲間はずれはどこへ行こう

 血まみれになったパスポート

 選択の瞬間は すぐ すぐ すぐそばに


間奏部分であり、ここから照応関係が外れ、独自の主張となります

一行目は問いかけで、例えば一番の基準で語ると、「いじめっ子の仲間になったら幸せになれるのか?」というような意味となるでしょう

この命題に対し、じゃあ「仲間外れになってしまった人はどうなる?」と二行目でさらに問いを重ねています

その答えは三行目の「血まみれになったパスポート」で、「違う国家の人間(=仲間外れ)になった相手には容赦のない排斥が加えられる」ことを示唆しています

四行目は解釈を確定させられるほどの要素はありませんが、「仲間」になるか「仲間外れ」になるか常に選択を迫られている社会を表している、と取るのが無難なように思います




 [3-f]

 「さよなら」も「おやすみ」も「またあした」も全部

 繋がらずに途切れる日が来るの


「さよなら」も「おやすみ」も「またあした」も全てが別れの言葉です

まあだからなんだという話なのですが、[1-f][2-f]と同様、人と人の関係性が崩れていくことを示しているのではないかなぁと想像出来ます



 [3-g]

 田中さんも 高橋さんも 笑おう わっはっはっは

 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か


[g]の部分全てに言えることですが、あえて「笑おう」「わっはっはっは」などと明るさを表す単語を前面に出しておきながら、直後に「誰か 誰か 誰か 誰か 誰か」と切迫感のある訴えを入れることで大きなギャップを生み、アイロニカルに状況の深刻さを演出しているように思います



 [4-f]

 「ありがとう」も「おはよう」も「ごめんなさい」も全部

 懐かしい言葉になる日が来るの


[1-f]と全く同じ歌詞の繰り返しです

ただし、あくまで「狭い教室」であいさつが言えなかった一番と違い、二番で社会全体についての言及を聞いたあとでは、この世界全体が同じ状況に陥る可能性を示唆しているとも取ることが出来ます



 [4-g]

 陰謀論も ガスコンロも 踊ろう らったったった

 誰か 誰か みんなを助けて


構成としては[1-g]とほぼ同じです

「14歳も 40歳も」だった部分が「陰謀論も ガスコンロも」と変わっています

陰謀論は言わずもがなですが、ガスコンロも「火をつけるもの」であり、「炎上」を連想させ、不穏なイメージを想起させます


ここは解釈を一つに絞り込むのは困難ですが、「陰謀論」という壮大で世界規模なものと「ガスコンロ」という卑近で日常的なものを並列で並べる構図は、一番で教室のいじめを、二番で国家の問題を扱って問題を一般化したのと同様の手法であり、「世界規模のものも身近なものも」≒「世界の全てを表す」と解釈出来なくもないかもしれません


※追記※

感想欄にてガスコンロはピノキオピーさんが所属していたボカロPサークルの名前だと教えてもらいました



――――――――――――――――――――――――――――――――



【「ありふれたせかいせいふく」とは?】


まず重要視するべきなのは、「誰か」「助けて」と繰り返される対象が「みんな」であること

これは、いじめっ子や権力者のような個人や一陣営に対する不満ではなく、もっと大きな対象、大げさな言い方をすると、「この世界の在り方自体」を嘆いている歌だと考えられます


そして、「なぜ一番と二番以降の歌詞が似た内容を歌っているのか」がポイントで、その原因は「国や民族などの世界規模の大きな問題も、狭い教室で起こっているいじめと根本的には同じ」だということ


例えば「いじめられっ子に目をつけられたくないからいじめを見て見ぬフリをする」というのは、どこにでもある「ありふれた」ことで、それ自体ははっきりと「悪」と言えるようなものではありません

ただ、そういった人の弱さが生む、一言でははっきりと言語化出来ない「悪とも言えない悪」がこの世界には溢れていて、それが民族問題や戦争などにつながり、確実に世界をダメにしていっているのは二番以降で語られた通りです


つまりは、この「ありふれたせかいせいふく」のタイトルの意味とは、



 どこにでもある、ありふれた「悪とも言えない悪」によって、世界はすでに征服されている



ことであり、それがこの歌が歌っていることではないか

それが二時間ずっとこの曲を鬼リピした結果辿り着いた答えであり、現在のこの曲の解釈となります


少なくとも個々の歌詞の解釈については大半はそう間違ってないんじゃないかなと勝手に思ってるんですが、どうでしょうか


結論についても個人的には「本当に正しいかは分からないけど、そうだとしてもおかしくない」レベルのものを出せた気がしているので、個人的には結構満足しているんですが、「俺はもっと正解っぽい答えを見つけたぜ!」って人がいたらぜひ感想で投げてくれると嬉しいです



第二回は未定で、おそらくやらないと思いますが、もしかすると気が向いたら別の曲について書くかもしれません

あ、それとは関係なく、ルワンさんの「ハイタ」って曲の、彼氏の気持ちが離れ始めてからの部分の解釈が全く確定出来なくてモヤモヤしてるので、歌詞解釈に自信ニキがいたらぜひ感想欄にお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 歌詞は個別の状況として、タイトルに対して。 ありふれた世界は自分自身と解釈。 世界と自分はどちらが終わっても、全てが終わることに変わりはなく等価値。 ありふれているのは他者もそれぞれが自身…
[良い点] 面白かったです。他人の解釈に触れるのは考え方が拡張されて楽しい。 [気になる点] 私個人としては全体通してイジメの話だけをしていると思っていたのでその辺りで解釈違いが起きて面白かったです。…
[良い点] 読んでて、すんごい楽しかったです! [一言]  これをきっかけに『ありふれたせかいせいふく』を知りました。良い曲が知れた! ありがとうございます。  遠い将来でも良いので、解釈部の続編希…
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