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〜地を隔てた二つの物語〜

第一話 氷河期到来



 はぁ、はぁっ、、、苦しい、どんだけ深く掘ってんだよ。

人口の割にあってねぇだろうが、てかこんなに掘る余裕があるならなぁ、エレベーターをもっと丁寧につくれよ!クソが!!

 少年は、地上に出るための階段を駆け上がる。もう何時間走っただろうか。疲労が溜まっていることにも気付かずに、すでに酸欠状態の脳で必死に彼らとの再会の場面を思い浮かべる。

 あれから10年もの月日が経ったと言うのに、少年は彼らが死ぬことなど、考えたことはなかった。想像してしまえば、きっと自分は生きていられなくなると、悟ったのだ。あの時から。ー



 帝国暦1783年。地球は二度目の氷河期を迎えようとしていた。それを予測していた人類は、地下都市の形成を進めていたが間に合わず、氷河期が到来した。 

 五大陸の中で人口、国面積共に最大であるユースロア大陸全土を支配するギルヴィア帝国では、一般市民を地上に残し、一部の貴族だけが地下都市へ逃れた。しかし、地下での生活は想像を絶する過酷なものであった。

 一方、地上に残された市民達は、氷河期を生き延びるために、首都を赤道付近へ移し急速な発展を遂げた。

 こうして約10年間、人類は、地上と地下で一切の交流をせず氷河期を生きたのだった。

 そして今、氷河期は早くも終わりを迎えた。


  ー氷河期終結から10年前ー

〜ウォーカー伯爵領〜

「リアム!あなたまた敷地外の森へ行ったでしょ!」  

「いっいいえ、!断じて!行ってません!」

「嘘おっしゃい!!メイドが森の方へ行くのを見たと言っていました!あなたは次期伯爵なのですよ!?もっと自覚をお持ちなさい。それに、なんなの?あの汚らしい平民は!あんな子と遊んでいると他の貴族に知られたらどう思われることか、、、はぁ〜、全くあなた達は…。」

頭をつん裂くような声で母親にまくし立てられ、リアムは耳を塞ぐのを必死に我慢した。


「と・に・か、く!もう貴族以外の人間と深く関わってはいけません。いいですね!」

「分かりました。お母様…。」


 リアム・レイ・ウォーカー 8歳

 ギルヴィア帝国のウォーカー伯爵の長男として誕生。リアムは、厳格な父と母に育てられ、不自由もないが楽しみもない生活を送っていた。そしてリアム少年は、貴族というにはあまりにも気弱で、、、

「あの…ヴィクトリカ姉さんはいつこちらに帰ってくるのでしょうか?」

ーバンッッ!ー

ビクッッ

母親は激しくテーブルを叩き、凄まじい表情で叫んだ。

「二度とあの子の名前を呼ぶなと、何度言ったらわかるの!!あの子はもううちの娘じゃないわ。今頃地球の裏側でホームシックで泣いてる頃よ。」

「そっ、そうですよね。すみません。ハハハ」

(何がホームシックだ。馬鹿なのかコイツ。)

あまりにも口が(心の声が)悪い、とても貴族にふさわしいとは言えないような少年であった。 

(クソッ、今日はエレナと面白いことする約束だってのに!)

と、脳内でグチグチ言いながら自家製の裏道をでて領地外へかけて行った。


 〜ルッツ家近隣の森林〜

 (あいつ、遅いな…。)

 いつも自分より早くこの森に来ているはずのリアムの姿が見えない。今日は2人で気に入らない貴族どもの庭にカエルの死体を撒き散らすという約束をしていた。

(まあ、いつも俺の方が遅れてるからあと5分くらいは待ってやるか。)


  エレナ・ルッツ

 5人家族のルッツ家の長男。ごく平凡な平民の家庭に生まれたエレナは3人の妹の世話をしながら、両親を手伝うような心優しい少年。だが家族以外には少々愛想が無いので、側からみたら少し近づき難いようだ。

 

「おーーい、またせたなーエレナ!!」

「よ、それよりお前、どうしたんだ?いつも俺より遅かったことなんてなかっただろ。」

「あー、悪い。母さんが色々うるさくってさー」

「おいおい、相変わらず箱入り息子すぎんだろ。貴族の御曹司でもあるまいし。」

ビクッ!

「アハハ、うちの母さん服とか汚すとスッゲー怒ってくるからさ、そうだよな、貴族でもあるまいし、ハハ」

挙動不審なリアムを見て多少怪しんだが、イタズラの方が楽しみなようで、リアムを置いて歩いて行ってしまった。


ゴゴゴゴゴォォォォーーーー!!! 


10年に及ぶ二つの悲惨な時代の幕開け



唐突にその時はやってきた。







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