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40 心を持つ魔導兵器

「準備できました!」


「これがコアのない魔導兵器か」


「はい。背中のくぼみにお爺様のコアをはめ込めんで魔導機工士が電流を込めれば起動するはずです」


「爺さんのコア……」




 魔導兵器ガルギルの部屋の奥にあった部屋を調べたら異空間への入口が見つかった。

 そこへ入れば第三階層に行けたんだろうけど……


 もっと気になることがあった。



 それがエルレナちゃんがずっと探していたコア。




 俺的にはガルギルゴレアムの様に強力な力で暴れまわらないか不安だ……


 それを警戒してなのかエルレナちゃんが用意した魔導兵器は俺の兵士達と同じくらいで腰の位置程度の背丈しかないものだった。



 ガチャリと音を立て魔導兵器の中にコアがピッタリと収まった。


「いきます……」


 エルレナちゃんは剥き出しのコアに手を触れ目を閉じた。



 こうやって魔導兵器は動く様になるのか……



 青白い電流をエルレナちゃんがまとい出す。


 戦闘の時の電流とは違って優しい電流に感じる。なんていうか滑らかに電気が流れてるっていうのかな……




キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……



 機械音と共に魔導兵器の回路に光が灯っていく。


 魔導兵器の起動って神秘的なんだな……

 動物が産まれる時を見ている様な気分だ。



 首や腕、足が無機質にウインウインと動きだした。


「おっ、起動した!」


「まだです、これはただの動作確認。制御が働くのはこれからです……」


 動作確認は起動とは違うのか……?

 本業のこととなると厳しいな……



 動作確認ってやつで体のあちこちがウインウインとしばらく動いた後、ピシッと立ち上がり動きを止めた。



 緑色の目がピカッと点灯する。



「起動しました!」


 険しい顔をしていたエルレナちゃんがようやく笑った。


 う〜ん……俺としてはやっぱりちょっと不安だ。


「安全なんだよな?」


 さっきまでのガルギルゴレアムを見てるからどうしても気になってしまう……


「お爺様のコアが人を襲う様なことは絶対にありません」


 信頼してるんだ……ゴレアム爺さんのこと。


 このコアはゴレアムさんが最後に作った遺作。

 ガルギルゴレアムにガルギルの作ったコアも組み込まれてたってことは多分、ゴレアムさんのコアには触れることが出来なかったから外部的に別のコアを無理やり組み込んで制御させたんだ。


 さて……オリジナルのゴレアムさんの魔導兵器……


 どんなもんなんだろうな……





「エルレナちゃん……」


 おぉ……ボソリと聞こえた機械音声とは思えない流暢な話し声。


 魔導兵器がそそくさとエルレナちゃんの元へ近づいて袖をクイッと引っ張った。


「ねぇねぇエルレナちゃん、あそぼ! いっぱいいっぱい遊ぼうね!」


 遊ぼう……?

 魔導兵器が遊ぶ??


 なんだそりゃ……



「これは一体……エルレナちゃん、どういう事な……へっ?」


 エルレナちゃん、泣いてる……?


 袖を引っ張る魔導兵器を見ながら大粒の涙を流してる。


「お爺様……私のために……」


「なんで……エルレナちゃん……泣いてるの?」


 泣いてるエルレナちゃんを見て魔導兵器まで悲そうな声になってきた。


「うえぇぇぇぇぇぇん! エルレナちゃんが寂しいと私もさみしいよぉ……」


 ウソだろ……ロボットなのに泣き出したぞ……

 そんなことって……


 この魔導兵器、まるで小さい子供みたいだ……

 これがゴレアムさんが作りたかったもの?



「ふふ……ごめんね、感動してつい泣いちゃったの、もう大丈夫だよ」


 エルレナちゃんは涙をぬぐって背の小さい魔導兵器のためにしゃがんで目線の高さを合わせた。


「ありがとね、やさしいね君は……」


「うん!」


 笑った……? ように見えたぞ……

 俺は何を見てるんだ……


 ロボットがまるで感情を持ってるみたいだ……



 まさかゴレアムさん、村から離れて変な目で見られながら、ずっと友達って言える年齢のいないエルレナちゃんのために心を持った魔導兵器を作ろうとしてたのか……


 偉大な魔導機工士と呼ばれていた過去を全部投げ捨てて、全てをエルレナちゃんのために捧げたっていうのかよ……

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