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38 ヌケガラ

「よくやってくれたな。大手柄だ!」


「フンッ……」


 コアを受け取った盗賊にねぎらいの声をかけたら普段通りのツンツンモードに戻ってた……


 それでもこれは盗賊じゃなきゃできなかったことだ。

 この成果はでかいぞ!


「エルレナちゃん。これを探してたんだよね?」


 俺にはこれがどれほどの物なのかわからないけど、盗賊もレアアイテムだと判断するほどの逸品なんだ。

 きっと余程のもの。


 ってエルレナちゃんまだ泣いてる……?


 えっ……と、こんな時どうしてやったらいいんだ?

 こんなシチュエーション、ギルドメンバーから聞いたことないぞ……


「す、すみません……うぅ……」


 エルレナちゃんは涙を拭いながら大きな目でコアを見つめながらそっと手にとる。



「うぅぅ……お爺様……」


 手のひらよりも一回りくらい大きいコアを抱きしめるとまた泣き出した。


 コアって要は魔導兵器の頭脳に当たる物だよな。

 エルレナちゃんの爺さんが村人から嫌われてでも作ろうとしていたもの……


 ガルギルって奴にいいように利用されたばかりにモンスターとして計上されるようになってしまったのはエルレナちゃんにはこたえたんだろうな……



 こんなときそっと肩に手でも置いて気の利いた言葉でもかけるのが大人の男だよな。


 さて……


「…………」



 どうしよ……言葉が見つからない……



 見つかって良かったねって言うのが正解か?

 でもこれまで費やしてきた時間とか考えると単純によかったで終えられることじゃないしなぁ……


 逆にビシッといつまでも泣いてるな! とかって言ったらカッコつくかな?

 いやいや絶対無理だ……万が一の怒らせて電気でも食らったら俺なんて即死だぞ……



 え〜っと……


 え〜〜〜〜っと…………



ガチャ……



 んっ?


 今何か音が聞こえたような……

 機械音だよな?


 まさか……ガルギルゴレアム……?



 コアを取り出して動ける物なのか?


 





「なんだこれ…………?」



 コアを取り出したガルギルゴレアムの体がガチャガチャと音を立てて別の形に変化している。


 何か様子が変だ、エルレナちゃんも泣いてる場合じゃないかもしれないぞ……


「エルレナちゃん」


 声をかけるとすでにガルギルゴレアムの異変に気付いて観察を始めていた。


「コアを外したのに変形してる……」


「そんなことあるものなのか?」


「いえ、普通はあり得ません。コアがなければ魔導兵器は動きませんから」


「ならこれは……?」


「考えられることは、この魔導兵器はコアを2つ持ってる」


「2つ? さっき取り出したのが爺さんのコア。だとしたら……」


「ガルギル……」


 魔族の魔導機工士『ガルギル』そいつの作ったコアもこの魔導兵器には入ってる。


「おそらくお爺様のコアの制御として作動していたのでしょうけど、そのメインコアを失ったことで制御用だったもう一つのコアが中心となって動いているんだと思います……」


「じゃあ今、ガチャガチャ変形してるのはそのガルギルの魔導兵器が動きやすい姿になるってことか」


「おそらく……」


 まずいよな……

 どれくらいの強さの魔導兵器かはわからないけど、ベースはさっきのガルギルゴレアムなんだからな。

 っていうかもうこいつはゴレアムじゃないよな……

 魔導機工士の流儀に乗っとればそのまんま『ガルギル』って言うべきなのかな。


「今のうちに破壊しちゃった方がいいよな」


 変形が終わってからじゃ倒せないかもしれない……


「私がやります……」


 エルレナちゃんがガルギルに向かっていく。



バチィィィィ……ッ



「うわっ!」


 思わず声が出るくらいの尋常じゃない電流をエルレナちゃんは体にまとった。


 青白い電流がバチバチとものすごい音を立ててる。


 ずっと秘めていたガルギルへの怒り……

 この魔導兵器を作ったやつがエルレナちゃんの人生をめちゃくちゃにしたんだ……



 ガルギルに向けて手を伸ばした時だった。




「えっ……?」



 消えた……?


 ガルギルがいない。


 そんなバカな、いまエルレナちゃんが触れようとしててそれを見ていた所なんだぞ。



「クラムさん! 危ない!」


 俺?




ピピピピピピ……




 この音は、まさか……


 振り向くと背後には変形を終えて一回り小さくなったガルギルが俺に向けて剣を振りかざしてる……


 消えたんじゃない……


 そう思うくらいのスピードで俺に向けて移動してきたんだ……


そのまんまガルギル。

何故かこのフレーズが気に入ってしまった……


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