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25 やっぱり盗賊が不機嫌だ

「すごい……兵士くん達だけでクリスタルスライムが倒せるなんて想像してませんでした……」


「強くなってるんだ……いままでなら倒せるモンスターじゃなかった」


 嬉しすぎる誤算だ。

 こんなに兵士レベルがあがることでそれぞれの強みがより強調されるんだ。

 強いモンスターだとしても型にはめられさえすればこうやって……


「あっ!」


 そうだ、盗賊が必死になって探してたアイテム。

 どこかにあるんじゃ?


ポンッ!


 盗賊。お前のお陰でここまで来ることができたんだ。


「アイテム回収は任せるぞ、やってくれるな?」


「……」


 あれ……?


 いつもツンツンしてる盗賊だけど、ちょっと様子が違う。

 やっぱり拗ねたままというか……


「ほら、お前が見つけてくれた場所なんだ。アイテム回収を頼むな」


 全然話を聞こうとしない……

 どうしたんだよ。



ボシュゥゥゥ……


「えっ?」


 盗賊が自分から消えた……

 やっぱり様子が変だ……


ポンッ!


 俺の調子が悪かったのか?

 さっきも盗賊が勝手に出てきちゃったしな。


「……」


 盗賊が出てこない……


「なんだよ……」


「盗賊くん、出てきたくないんですかね? 今も不満そうでしたし」


 エルレナちゃん。言葉では心配してるのになんか楽しそうなんだよな……


「難しい奴なんだな……盗賊って」


 他の兵士達に置いてかれてるって思ってるのかな。

 そんなことないのに……


「感情……」


 エルレナちゃんの興味は兵士達の感情って奴にむきっぱなしだ。

 


 まぁとにかく盗賊の探知力に間違いはないはずだ、ここにアイテムはあるんだろうから、探してみるとするか。





 がさごそと散乱するスライムの体を押し除けあるであろうアイテムを探す。


「でかい体が弾けただけあって探すのも苦労するもんだ」


 散乱した体で床がほぼ埋め尽くされている。

 スライムのカケラはちょっとしたかけらでも結構な重さでずらすだけでも手間がかかる。


「お手伝い用の機械を連れてきたらよかったですね……」


「そんなのまであるの? 便利なんだな機械って。兵士達じゃそんな雑用絶対にやってくれないだろうな」


 盗賊なんて、自分の役割すら拒否するくらいだもんな……


「機械はそのためのものですからね、兵士くん達は戦闘や補助に役立ってるじゃないですか」


「もっと言うことを聞いてくれりゃかわいいんだけどなぁ……」


 どの兵士もマジメなんだろうけど融通が効かないんだよね。


「フフ……機械と同じですね、頑張って作った機械ほど思った通り動いてくれないんです」


「そうなの? 機械なら命令通りに動いてくれるんじゃ?」


「ちゃんと命令を聞いてくれるようになるのなんて一握りです。それまでに何十、何百と失敗を繰り返してようやくちゃんと動いてくれる一台になるんです」


「何百回も!? そりゃ大変だ……兵士より苦労が多いんじゃ……」


「うん。だから愛着はありますよ、そういう苦労を乗り越えて作るから自信作に自分の名前を作るんです」


「なるほどね」


ガチッ


 ん? なんか硬いものを踏んづけたぞ?

 クリスタルスライムの残骸に埋もれ、違うな……肉片の中に入ってるんだ。


「見つけた!」


「えっ! 本当ですか?」


 近寄ってきたエルレナちゃんと一緒に分厚いスライムの肉片を見つめる。


「アイテムを体に取り込んで守ってたんですね」


「通りで見つからない訳だ。まぁとにかく何があるのか確かめてみよう!」


 この硬い感触と大きさ。

 覚えがあるぞ、きっと魔導石だ!


 硬いスライムの肉片を開いて中身を覗き込む。


ポウ……ッ



 七色に色を変えて輝く優しい光がぼんやりと漏れ出してきた。


「やった……」


 大当たりだ。


「実物を見るのは初めてです……」


「そうなのか、第一階層で二つも見つけられたのは相当運がよかったんだな」


「もちろんです! 本当なら上級ダンジョンの最下部にいる魔王クラスのボスが守ってるレベルのレアアイテムなんですよ。ダンジョンに数個落ちているなんてこと聞いた事ありません……」


「そ、そっか……」


 そう言われると雑に使っちゃったのがもったいなくて感じちゃうな……



 ってことは、いきなりそんなレアアイテムに向かって迷うことなく進んでいった盗賊はやっぱり凄かったんじゃないか!


 それなのに何を拗ねてるんだよあいつは……


 

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