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23/41

23 盗賊は何をやってるんだ?

CP:19/21


 一応確認してみたけどCPも減ってる。

 盗賊が俺の意思と関係なく出てきたんだ。



「何やってるんだ? 今は出すつもりなかったぞ、戻れ!」


 おかしい、普段ならこんなこと言うまでもなくちょっと念じるだけで消えていくのに。


「またまたぁ。クラムさん冗談がすぎます」


 突然の事態に慌てる俺を見てエルレナちゃんはふざけてるように感じてるみたいだ。


「何でかわからないけど、盗賊が勝手に出てきただけじゃなくて戻ってくれない!」


 こんなこと初めてだ……


 そういえばいつもツンツンしてる盗賊だけど、今回いつもよりムスっとしてるような。


 まさか……

 そんなことあるのかわからないけど、一人だけ鍛えてもらえなか

ら拗ねてるんじゃ。


「もしかしてお前も鍛えて欲しかったのか?」


「……」


 盗賊はいつもの「フンッ」って言葉すら言わずそっぽ向いてしまった。


「怒るなよ、別に仲間外れにしたつもりはないんだ。お前は戦闘用じゃないし、特殊な能力だから鍛え方がわからなかったんだって」


 なぐさめても拗ねた盗賊の気は晴れないようで、こっちに振り返ってくれない。



 困った……


 

 しかも隣のエルレナちゃんは興味深そうにこのやりとりを見てるし……

 拗ねてる盗賊のことがすごく気になってるみたいだ。



「ねぇクラムさん。盗賊くんの思い通りにさせてあげましょうよ」


 さっきのメカの調整をしてたときと同じようなイキイキとした目で言ってきた。


「って言っても、盗賊が何をしたいのかが……」


 修行はそれぞれの適正にあったことを繰り返しやっていた。

 じゃあ盗賊はやっぱり探索ってことだよな。


 兵士達がどれくらい強くなったのかも興味ある、好きにやらせてみるか。


「なぁ盗賊。アイテムを探しに行ってきてくれるか?」


 

 俺に背を向けてた、盗賊がピクっと反応した。


「フンッ」


 こっちに振り返りはしなかったけど、ようやく一言呟いて盗賊は部屋を出て探索に向かい出した。


「ちょっと盗賊の様子を見に行ってくる」


 なんだか放っておけない、ついていってやろう。

 俺の言葉に食い込むような勢いでエルレナちゃんが盗賊を追いかけ出した。


「私も行きます!」


 絶対好奇心だ……

 まあいいや、それよりも盗賊のことだ。


 相変わらずの早足で盗賊は部屋を飛び出していった。


 まともに追いかけていこうなんて考えたこともないけど、早くついていかないと見失ってしまう。


 急がなきゃ!


 追いかけて俺も部屋の扉を開くと、盗賊はもう次の部屋を出ようとしていた。


 流石の速さだ。こりゃ本気で追いかけないと離されてしまう。




「すごい、まるでアイテムのある場所を知ってるみたい」


「嗅覚なのかな、多分盗賊は本当にアイテムの場所がわかるんだと思う」



 だから最短ルートでアイテムのある場所までいけるんだ。




 それにしてもこのダンジョンもなかなか広いな。


 正方形の各辺に扉が備えられた小部屋のみで構成されたダンジョンみたいだけど、何個部屋を抜けても一向にアイテムにも辿りつかない。


 エルレナちゃんはこのダンジョンのこと、どこまで把握してるんだ?


 

 盗賊が次の扉に手をかけようとしたときだった。



「あっ! その部屋は行っちゃダメ!」



 なんだ? 急にエルレナちゃんが大声をだした。


 肝心の盗賊はそんな静止お構いなしに次の部屋に向かおうとする。

 次の部屋に何かある?


 

 部屋に向かう盗賊の足が止まった。

 珍しいな、進まなくなるところを見るのは初めてだ。


 一体この先に何が?



ガギギギギギギギギギィィィ……


 立ち止まる盗賊のいる場所までたどり着いて見えたのは見たことのないモンスターの姿だった。


「巨大なスライム?」


 小部屋のみ真ん中でどっしりと居座り、待ち構えてるように見える。


 この部屋には入ってきた扉以外の扉が見当たらない、行き止まりになってる。


「クリスタルスライムというモンスターです。魔法が聞かない上に硬くて危険な相手です。部屋にも何もないですし、先に続く扉も無いんで関わらないようにしていたんですが……」


 確かにこの部屋にはクリスタルスライムしかいなそうだ。

 扉よりも大きいサイズだし、この部屋の中にさえ入らなければ相手にする必要もなさそうなモンスターだ、エルレナちゃんの話的にも面倒なモンスターっぽいし、無理して戦う必要はないか。


 このモンスター、見た目だけは透き通ってて、綺麗だから盗賊の何かしらのセンサーみたいなものが間違って認識しちゃったのかもな。


 クリスタルの硬度を持ったジェル状の身体を引きずる音なのか、耳慣れない音が部屋中に響いて君が悪い。


「なぁ、盗賊さぁ。無理する必要ないからさ、ここは引き換えそう」


 少なくとも盗賊がどうにかできる相手じゃ絶対ない。


「フンッ!」


 盗賊はムスッとしたままクリスタルスライムに向かって進み出した。


「バカ! 無茶なことはよせ、やられるだけだぞ!」


 どうしたんだよ……盗賊の奴……



ギギギギギ……


 不気味な音を立ててクリスタルスライムが盗賊のことを見つめる。


キン! キィィィィン!


 盗賊が馬鹿正直に攻撃を始め出した。


 無理だ……

 そんなおもちゃのような短剣じゃダメージなんて与えられない。



ドムッ



 クリスタルスライムが体を揺らし盗賊にぶつかった。


ボシュゥゥゥ……


 なすすべもなく、盗賊は消滅してしまった。

 あーぁ……そりゃこうなるよ……



 息巻いて向かっていったけど、戦闘タイプの兵士でもなければましてやレベル1なんだぞ。

 勝てる訳ないってわかるだろ……



「盗賊くん……やられちゃいましたね……」


「どうしたんだ、あいつは……」


 急に自分から出てきて、何がしたかったんだ?


 今までこんなこと見たことがなかった。

 他の兵士達に置いてかれてるとでも思ったのかな。


 焦るとかってあるのかわからないけど、なんでこんな無茶なことを……


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