17 黄金色のダンジョン
随分間が空いてしまいましたがこれからまた更新していきます!
嘘だ……
すぐには信じられなかった……このダンジョンはまだ終わりじゃなかった……
もうアイテムは全部使い果たしてしまったし、体ひとつで挑んでいかないといけない……
「はぁ……」
気持ちが入らない。
頭の中では外に出てギルドの奴らに会ったらどう接するかってことでいっぱいになっていたんだ。こんなはずじゃなかった……
しかも……しかもだぞ。第二階層ってことは今までよりも強いモンスター達が絶対にいるってことだよな。
何よりダンジョンの雰囲気がガラリと変わってしまった。
今までのゴツゴツした岩で作られた洞窟のような場所から、金色に光る金属のようなもので作られた建物の中に変わっている。
高価な建造物のような場所にも思えるけど、それ以上にジメジメとした気持ちの悪い雰囲気にいるだけで心が潰されそうだ……
もう限界だぞ俺は。これ以上強いモンスターとなんて戦えない。
スキルだってこれ以上強い奴らにかなうようには思えない……
■ ■ ■ステータス■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
名前:クラム
性別:男
年齢:43
所有スキル
最強軍団
スキルレベル:16
CP:21/21
[兵士]
傭兵 (CP1) Lv2
狩人 (CP2) Lv1
盗賊 (CP2) Lv1
・ユニークスキル:アイテム優先
盾騎士(CP5) Lv1
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
そっか、さっきの戦闘でスキルレベルが16に上がったんだった。
兵士レベルは戦闘が終わったから元に戻ってる……
塞ぎ込んでいる間にCPは全回復していたみたいだ。
下手に兵士を出して、モンスターに存在はバレたくないけど、今いるこの場所も安全かはわからない。
先の見えない通路になっているようだからとりあえず、先に進むしか道はない。
後は壁で遮られた行き止まりだからこの先で強いモンスターが待ち構えていたらそれこそ終わりだ。
ポポポン!
「「「フフフンッ!」」」
ここはまず盗賊3体にアイテムを探してきてもらおう。
とにかく何もできずに死んでしまうってのはごめんだ。
このダンジョンのアイテムはすごいんだ。
それさえ手に入れられれば、ここを出れるだけじゃなくてとんでもない強さを身につけることもできる!
お願いだから戻ってきてくれよ。
盗賊は長い通路を進んで行き、あっと言う間に姿が見えなくなった。
襲われているような音はしない、遠くに行き過ぎたらわからないけどすぐ近くにモンスターはいないみたいだな。
盗賊を出して置いて正解だった、先が安全がどうかの確認としても使えるんだな。
気は乗らないけど、俺も先へ進んでいくことにした。
ちょっと歩いていくと思いの外早く一本道は終わり、広間へと辿りついた。
広間と言うか、これ……
「部屋だ……」
訳がわからない……
走り回れるくらいの正方形の部屋で、壁にそれぞれ扉がある。
気づけば、さっきまで歩いていた通路は消えて無くなっていた。
なんだここは……
この部屋からモンスターの気配はしない。
しないけど壁についている扉が気になる。
ここからモンスターが出てきたら……
盗賊達はこの先に進んで行ったのか? まぁそれしかないよな……
扉は4つあるものの、壁にも扉にも印も何も記されてはない。
先に進むとしたら適当にどれかひとつを選んで入って行かざると得ないような感じだ。
嫌だな、何も情報もなく不気味な場所に進んでいくのは……
待っていて急にモンスターがやってくるもの怖い。
進んだ先にモンスターが待っていると思うのも怖い……
CP:15/21
CPは減っているままだ。
この先で盗賊がやられたとしたら自然回復が始まっているはずだからまだやられていない。
それなら!
ポンッ!
この先に進むのは盗賊の選ぶ扉に任せる!
「フンッ!」
おい、なんだその冷ややか目は……
自分で行き先も決められないのかと言いたげな目で盗賊は俺をチラ見して先に進んで行った。
なんで俺って何かとバカにされるんだ。
自分のスキルの兵士にすらバカにされるなんて……
クソッ!
盗賊はそんなことを言っている間に一番近くにあった扉に入っていった。
気が早いな、先に出した3体もまだ無事みたいだし盗賊に着いて行くのが安全なはず! 俺も先へ進もう。
ギィィィィ……
「あれ……?」
扉の先はまた今とまったく同じ作りの部屋だった。
ひとつの扉からでてきたから、見えるのは正面の壁にある扉、左右の壁にある扉の3つ。
盗賊の姿が見当たらない、また別の扉に入ってしまったのか……
また盗賊を出して先へ進むか……
CP:14/21
あっ! 盗賊を4体出したから消費CPは8なはず。
減っているのが7しかないってことは、自然回復が始まっている。
どこかで盗賊がやられたんだ……
やっぱり……当然だけど、この先にはモンスターがいる。
まだアイテムを持って帰ってきた盗賊もいないのも気がかりだ。
盗賊が行く場所が安全とは限らない。
CPを無駄遣いするといざって時に危険だ、ここは自然回復しきるまで待機するか。
ギィィィィ
正面の扉が開いた。
誰かが来る!
「フゥゥゥ……」
ん? この唸り声、さっきも聞いたような……
その直後、俺の不安は確信に変わった。
ハイオーク……
ついさっきアイテムを全投入してようやく倒したモンスターがまた現れた。
この階層はハイオーククラスが普通に出てくるのか……?
アイテムゼロの俺が勝てる相手じゃないぞ、ここは何としても逃れなきゃ。
そうだ、俺が入った扉にまた入っていけば逃げ切れるかも。
ガチッ
扉が開かない、鍵が閉められている……このダンジョン、元居た場所に戻ることはできなくなってるんだ。
やばい、そんなことしてる間にハイオークが迫ってきた。
「フゴォォォ…………」
メイスを握りしめ、落ち着いた様子でジリジリと近寄ってくる。
隙を見て逃げるなんてできる雰囲気じゃない……
こんなところで人生終了かよ。
ギィィィィ
げっ、また誰か来る……
今度は右側の扉からだ。
「フゴッ!」
その扉が開くのを見てからハイオークの様子がおかしい。
俺を無視して急に慌てながら開く扉に向けて構え出した。
やばい相手が来るんだ……
「フゴッ! フゴォォォォッ!!」
扉の先の相手が出てくる前にハイオークはその相手に向けて攻めていった。
あの強いハイオークがここまで取り乱す奴が向かってくる。
奇襲気味に攻めていくほどの相手、一体どんな奴だ?
バチィィィィィィィ…………!!!
ハイオークが扉に手をかけた瞬間、眩い発光とともに空気が引き裂かれるような轟音が鳴り響く。
そして、ほんの一瞬……燃えたと思ったハイオークは即座に灰になった。
おいおいおいおい。
なんなんだよここは……
さっき俺が命懸けでようやく倒したハイオークがこんな一瞬でチリになっちゃうのかよ……
とんでもないところに来ちゃったぞ。
どんな化物が出てくるんだ……
もうダメだ……
ハイオークにだって勝てないのにそいつを瞬殺するような奴に勝てる訳……
扉の奥からハイオークを倒した奴が出てくる。
やばい……俺に気づいた時が俺の人生が終わる時なのか……
その時はあっけなく訪れた。
扉の先から、何事もなかったように姿を表す者。
「あっ……えっ? 嘘……だろ?」
青くて長いまっすぐな髪をした、色白の女の子だ。
「人間……?」
このダンジョンに来て人間に会った。
ハイオークをこの子が倒したんだよな? それ以外考えられないもんな。
「フッ! フゥゥゥン!」
なんか声が聞こえる……
あっ、女の子の存在に驚きすぎて気づかなかったけどこの子、俺の盗賊を両手で抱えてる。
盗賊は抱えられているのが嫌みたいでジタバタと暴れてる。
「この小さい子はあなたが出したのですか?」
女の子がニコっと笑いながら俺に話しかけてきた。
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