● 第8話 ~ エルトリア国境戦2~
「おいおい…。何だよアレ。」
アルベルは呆れた顔をしていた。
「侵略者ではあるんでしょうけど…。大きすぎね。」
「うっわ~最悪だな。でもやるしかない!いくぞクレイモア!」
「ええ。」
アルベルはクレイモアを振り上げ牛が二足歩行しているような怪物へ斬りかかった。
「コノ『サタン』ニイドムトハ オロカナリ! ワイショウナルモノヨ シヌガヨイ。」
グワッと右腕を振り上げ怪物もといサタンはアルベルを殴りつけ吹き飛ばした。
「グハッ!!」
吹き飛ばされたアルベルは地面へと叩きつけられ口から血を吐いた。
肋骨が2~3本は折れただろうか。
「アルベル様!」
兵士の一人がアルベルに駆け寄ろうとしたが
「来るな!」
とアルベルに制止された。
「コレニタエルカ ワイショウナルモノヨ。」
サタンはニヤリと笑った。
「サバキノイカヅチヲ ウケヨ『黒雷ノ裁き』!」
サタンが天に掲げた手から黒い雷が放たれアルベルに襲い掛かった。
「マジかよっ!『聖ナル守リ』!」
慌てた様子でクレイモアを掲げ金色の障壁を発生させ雷を防いだ。
「あっぶね~。侵略者が魔術使ってくるなんて初めてだ。」
「私もこんな侵略者初めて遭うわ。」
クレイモアもアルベルと同感のようだ。
そもそも今まで魔術を使ってくる処かまともな言葉を発する侵略者が現れた事など無かった。
あきらかな異常個体である。
「ナマイキナヤツメ!」
サタンは腕を振り上げアルベルに襲い掛かる。
が、アルベルは無様にも地面を転がりながらどうにかそれを避けた。
「あ、アルベル様を援護するぞ!『大火球』!」
「いくぞ!『大氷球』!」
火の球や氷の礫がサタンに襲い掛かり足元では兵士達が必死にサタンを切りつけていた。
「ウットウシイ!」
サタンはまるでハエを払うかの様に兵士達を手で払い除けた。
「「わぁぁぁー!!」」
兵士達は木の葉の様に吹き飛ばされた。
「くっそ…。大丈夫か!」
「うぅ…。」
吹き飛ばされた兵士の過半数はグッタリとして息
絶え絶えの様子だった。
「クハハハハ!!ナンダ?ソノテイドカ?」
サタンは高笑いしていた。
「あの強さ異常だな…。本当に侵略者かよ。」
「反応だけは間違い無いわよ?大きさとか喋れたりとかあり得ない所はあるけど…。」
クレイモアは呆れたように言った。
神器には大なり小なり侵略者の気配を読む力がある。
なのでクレイモアが侵略者だと断定する以上間違いなくサタンは侵略者である。
「とにもかくにも倒さなければ『ホール』を閉じられないのは確かだよね。」
「その通りよ。」
「とにかく行くとするよ!」
アルベルはクレイモアを手にサタンに斬りかかった。
「ソンナニモ シニイソグナラ ココデ コロシテヤロウ!」
剣の様に変化させた右腕を振り上げアルベルを切り裂こうと襲い掛かる。
しかしアルベルはそれを髪一重でかわしサタンの懐へと入り込んだ。
「悪いけど終わらせてもらうよ!『断罪ノ剣』!」
ザシュ!!
光の剣へと変化したクレイモアがサタンの胸部を貫いた。
「グアアア!!」
サタンは断末魔の悲鳴をあげ光の粒子へと変わっていった。
「ふぃぃ~終わった~。」
アルベルはその場にへたりこんでいた。
「今回は本当に本当のギリギリだったわね。」
「あぁ…。死ぬかと思ったよ。イテッ!」
ゴン!!
とへたりこむアルベルの頭部に何か硬い物が落ちてきた。
「あら?綺麗な石ね…。何かしら?」
「何だろな?鑑定してみよう。」
アルベルは拳大の紫色の透明なダイヤモンド形の石を手に取った。
『憤怒の結晶』
数多くの憤怒が凝り固まった結晶。この石の他にも大罪の名を冠する結晶が存在する。
異界からの異物。
というのが結晶の鑑定結果である。
「『憤怒ノ結晶』だってさ。何かこれ意外にも同じような物があるらしい。」
「これ以外にも?面倒な事になりそうね。」
クレイモアはため息きをついた。
「ったく…。嫌になるよ。」
「そうね。でも…。さっさと『ホール』を塞いだ方が良いんじゃない?」
「そうだね。じゃあ済ませようかクレイモア。」
アルベルはクレイモアを空にできた穴に向け掲げた。
「『聖封呪結界』!」
クレイモアから虹色の光が放たれ空にできた穴を優しく包み込んだ。
そして穴は少しづつ何事も無かったかの様に小さくなっていきやがて消えていった。
「ふぅ…。これで『ホール』は消えたな。」
「ええ。大丈夫よ消えてる。」
クレイモアは優しげな声で答えた。
「そうか…。」
アルベルは空を見上げた。
ルーンフェリアもファルシアも無事に『ホール』を塞げると良いのだか…。
こうしてエルトリア国境戦は幕を閉じたのだった。
ようやく8話に突入しました。
感想やレビュー、評価、ブックマークの登録数が励みになります。
どうかよろしくお願いいたします。