●第53話~強欲な商人~
消滅するマモン、彼女の胸中は…。
消滅するマモンは薄れゆく意識の中、走馬灯を見ていた。
~●◯●○●○●○●○●○~
後にマモンと呼ばれる女の人生は幸せとはかけ離れた物であった。
彼女の人生はとあるスラムの一角から始まる…。
父も母も知らない孤児であった彼女は泥水を啜りゴミを漁りながら生きてきた。
そんな彼女の人生の転機は娼館に売られた時から始まった。
ある日、何時ものようにゴミを漁っていた所、とある闇組織の大規模な孤児狩りに遭い捕らわれた彼女はとある娼館へと売られる事になる。
銀髪青目の庇護欲をくすぐる愛くるしい見た目をしていた彼女はやがてその娼館で1位2位を争う娼婦となりある日、ある豪商に見初められ妾となった。
─ それだけなら幸せだっただろう…。
娼館にいたどこの誰かも判らぬ妾…。
正妻がそんな彼女を快く思う訳も無く、彼女は正妻やメイド、侍女達から陰湿な虐めを受ける事になる。
しかも正妻に子が出来ないと言うのに彼女が子を身籠もった物だから正妻の怒り様は筆舌に尽くしがたいような物であった。
その怒りはやがて無事生まれた我が子にまで向けられる事となり、彼女は我が子を護るために正妻を病に見せかけて毒殺した。
夫はその事を察してはいたようだが、何も言う事は無かった。
暫くは夫と息子と3人で幸せな生活を送っていたが、夫は流行病に罹り亡くなり、彼女はまだ幼い息子に代わり商会を切り盛りする事になる。
スラム育ちで娼婦であった彼女ではあったが、地頭はかなり良かったようで妾でこそあったが夫の仕事の手伝いを時々していた事もあり、商会の経営は問題なく行われていた。
まぁ、これだけを聞けば良かった良かったと思える話だが、それは真っ当な商売だけならばの話しである。
彼女は裏で、良くない薬の取引に関わっていたり、良くない物の密輸入に関わっていたりもした。
更にはライバルとなる商会を闇組織を雇って潰させたり、商売敵を暗殺させたりもしたりもしている。
そして、それなりに金を蓄えた彼女はその金を元手に高利貸しのような事も始めていた。
あまりの高利と厳しい取り立てに
「この金を取られては今日のパンすら買えない。」
と、懇願した債務者に対し彼女が
「パンが買えなきゃお菓子を買えば良いじゃない。」
と、言い放ったとも言われている。
─ 泥水を啜りゴミを食い生きていた事がある彼女にとって、パンが食べられないくらい何だと言う感覚があったのだろう。
その金で豪奢なドレスや金銀細工、宝石を買い漁り身に纏う…。貴族でも無いのにまるで貴族のような生活をしていた。
─ そんな彼女を周囲や息子がどう思っていたのかは言うまでも無いだろう。
ただ一つ言える事は彼女は、彼女の行為に心を痛めた息子によってナイフで刺されて殺されたと言う事だけである。
しかし、この商会が息子の代になっても途絶える事無く続き孫、曾孫の代にも受け継がれている事は、彼女にとっても喜ばしい事ではあっただろう。
実際に最期、彼女が何を思っていたかは誰にも判らない。
ただ、彼女の一生が幸せでは無かった事だけはたしかである。
最後まで読んで頂きありがとうございます
m(_ _)m
感想、評価、いいね、ブックマークが執筆の励みになります。よろしくお願いします。m(_ _)m
次回の投稿ですが、ゴールデンウィーク中は仕事が忙しく投稿は難しいと思われますので5月18日を予定しております。暫しお待ち下さい。m(_ _)m




