●第41話 ~ 降臨の怠惰 ~
絶望の使徒が降り立つ…。
アルベルがフィリップに呼ばれてから十分ほどが経過した頃、漸く全貌が明らかになった。
『ホール』の数は大小合わせて全部で五つ。
一番大きいのでエルトリア国境戦と同じくらいで一番小さいのでその半分くらいらしい。
そのため一番大きい『ホール』にアルベルが、二番目に大きい『ホール』には剣技大会での活躍から人工神器を授けられたエリ=セリザワが、他の『ホール』にも人工神器を授けられた者達があたった。
ちなみに勿論と言うべきか、その中にはクリス=シュタインベルトの姿もあった。
アルベルが向かった場所は王都セント=エルドリュアスから北西に10㎞にあるエリス村。
転移陣を使い兵士達と駆け付けた時には村の目の前にまで侵略者が迫っていた。
これはこの『最終戦争』においてどの国にも共通して言える事だが、『ホール』が開いた場所が集落から結構離れていた為、幸いにも初動が後手に回ったにも関わらず現時点では死傷者が出ていないと言う奇跡的な状況となっている。
「皆っ!村の人達の避難を手伝う組と侵略者を迎え撃つ組とに別れるぞっ!最低限村の人達の王都への避難が完了するまでは侵略者を押さえるんだ!A~B班は避難を、C~D班は僕に続けっ!」
「「おお!!」」
こうしてエリス村攻防戦が幕を開けた。
「セヤッ!!」
ザクッ!ザクッ!
アルベルは侵略者をクレイモアで手当たり次第切り捨てていった。
「『火球』!」
「『雷球』!」
ドドドドド!!
魔術師達による魔術が侵略者へとふりそそぐ。
「ギャアァァー!!」
光の粒を吹き上げ消滅する侵略者達。
この調子であれば『ホール』を塞ぐのも時間の問題だろう。
その頃のエリは…。
ザン!!
魔術降り注ぐ戦場を風のように駆け抜け侵略者を切りまくっていた。
「フフッ…。この聖刀天照はとても使いやすいわね。」
エリはニコリと笑っていた。
彼女に授けられた人工神器は金の鍔に紅い柄巻そして紅い鞘を持つまるでミラージュの刀と対になったような刀である。
どうやらエリの活躍によりこの戦場も問題無さそうである。
その頃、金の鍔に白い柄巻に白い鞘を持つ聖刀白椿を授けられたクリスは…。
「緋天流奥義『乱レ桜』!」
スパスパスパ!!
と、大根でも切るかの如く侵略者を切りながら戦場を駆け抜けていた。
「ふぅ…。小さいのでコレか…。結構疲れるなぁ。」
トンッと地面を蹴り侵略者の群へと突っ込みさらに侵略者を切り裂き光の粒へと変えていった。
「ま、アイリス姉さん一人を相手にする方がよっぽどきついけどね。お?ヘドロの流入が少し減ってきたかな?」
『ホール』の様子を見たクリスはもうひとふんばりと気合いを入れていた。
どうやらこちらも大丈夫そうである。
それから程なくして今回開いた『ホール』は閉じられた。
しかし、本当の絶望はこれから始まるのであった。
アルベル達がセント=エルドリュアスへと戻った直後
ドガァァァァァァァーン!!
と、轟音が響き渡った。
「な…。何だ?」
アルベル達がこの城の屋上にある『転移部屋』から出ると、とんでもない光景が目に入った。
何と上空にセント=エルドリュアスを覆い尽くさんばかりの巨大な『ホール』が開きそこから身長10mはあろうかと思われる捻れた角をもつ大鬼のような生物がゆっくりとゆっくりと降りてきた。
ここからは少し遠い為良くは見えないが町の防衛にあたっていた魔術師達が攻撃しているのかチカチカと光の球が飛び交っているように見える。
「アア…。ネムイ。」
地の底から響くような声が聞こえると同時に巨大な侵略者は地面に寝そべってしまった。
するとその体から真っ黒な霧のような物が放たれ始め、その霧に包まれた者また一人また一人と眠りにつくように倒れていった。
神器に護られているからか霧の影響を受けず無事にアルベル達が侵略者の元にたどり着いた頃にはその霧は町全体を包み込んでいた。
「ナンダイ キミタチハ? コノボク ベルフェゴールノ ネムリノジャマヲ シニキタノカイ?」
ベルフェゴールを名乗る侵略者は目の前に現れたアルベル達にめんどくさそうな様子で尋ねた。
「そうだな。君を倒さないと『ホール』は閉じられないし、多分だけど君を倒さないと皆が目を覚まさない…。違うかい?」
「ソウダネ。ネムッタヤツラヲ オコスニハ ソウスルシカナイネ。」
「だろうね。だったら尚更だ!」
アルベルはクレイモアを構えた。
「国を滅ぼされると困りますので。」
「ほっとく訳にはいかないんだよね。」
エリやクリス達も刀を構えた。
「アア メンドクサイ…。」
ベルフェゴールはゆっくりと目を閉じた。
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