表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/29

黒騎士候補者

  「すみませんでした……」


  目を向けると、ガーネットはがっくりと肩を落としていた。


  「リンシアさんも怒ってなかったみたいだし、大丈夫だよ」


  俺は軽い感じで言うことで、なんとか空気を和ませようとする。だが、今のガーネットにはあまり効果がないようだ。


  「しかし、あの女は胡散臭(うさんくさ)い感じだったな。 導きの石、なんて聞いたことがない」


  サーシャはリンシアの後ろ姿を(にら)んだ。途中で振り向かれたらどうしようかと思ったが、そんなことは起こらなかった。


  「スペクルム神殿だっけ? そこで発見されたって言ってたけど……」


  「そんな神殿の名も初耳だな。 そもそもあの女、本当に教会の人間なのか?」


  「それは、どうなんだろう……」


  確かに、それらしい衣装を着ていれば、あとは何とでも身分を誤魔化すことは可能だ。発言の内容も、今のところ怪しいものが多い。


  だが、だとしたら、そんなことをした理由は?


  何かあの人に明確な利があったのか。それとも、ただ楽しんでいただけなのか。

  まあ、今の時点では考えるだけ無駄だ。


  「王宮に向かっていたみたいだし、後でグラディウス団長に聞いてみるよ」


  「わかった」


  サーシャが(うなず)く。


  「あの…… 恩人様は、あの石に触れて何を見たんですか?」


  話題はまだ導きの石から離れていなかった。


  「え? えーっと…… 知らない人の主観で色々見せられたんだよね。 変な神殿みたいな場所だったり、燃える街。 あと、強そうな騎士みたいな人もいた」


  俺はあの時見たものを、ありのままに伝える。


  「その人たちの会話は? 何か言っていましたか? 最後にはどうなったんですか?」


  ガーネットは目の色を変え、焦ったように矢継ぎ早に質問攻めをしてくる。

  なぜそこまで、俺が見たものにこだわるのだろうか。


  「……ところどころ聞こえない部分があったけど、騎士がこっちを(とが)めてるみたいだったよ。 最後は俺側の人が、魔法陣を空に出して。それくらいだよ」


  「じゃあ、具体的に何が起こっていたかは分からずじまいなんですね?」


  どうしてか、ガーネットはホッとしたように息をついた。


  「う、うん……」


  「ガーネット、大丈夫か? さっきから様子が変だが」


  俺の代わりにサーシャが質問してくれる。やはり、彼女の目にもガーネットは異様に映ったらしい。

 当のガーネットはわかりやすく身体をビクつかせた。


  「だ、大丈夫ですよ! 恩人様が変なものを見てないか、確認しただけですから」


  「変なものって?」


  俺が聞く。

  「その……」と、ガーネットは顔を両手で隠した。


  「いかがわしいものとか」


  そんなくだらない、しかし、少しどきりとするような言葉が漏れてきた。


  「真面目に聞いた俺が馬鹿だったよ……」


 

  グラディウスへの報告をいつするか迷ったが、俺たちはとりあえず巡回を続けることにした。

  いくらリンシアが怪しいとはいえ、何の根拠もない現状、王宮に戻る優先度は下がる。俺たちが求めるのは黒騎士に関する情報だ。


  商店街の方まで来ると、急にサーシャが立ち止まった。


  「どうしたの、サーシャ?」


  「何か、かすかにだが、変な匂いがしたような……」

 

  サーシャは目を閉じ、周囲に鼻を向ける。


  「それって、もしかして!?」


  身体に緊張が走る。


  「似ているようだし、違う気もする。これは、一体……」


  「おや、これはこれは。シンくんと、その愉快なお仲間さんたちではありませんか」


  嫌味ったらしい言い方をしながら、こちらに歩いて来るのは、ヘンリーであった。お供のタイソンはいないようだ。


  「ヘンリーさん、今日はどうしたんですか?」


  俺は不快感を悟られないよう、努めて自然な口調で話す。


  「今日は非番なので、団員のための茶葉を買いに。 途中で良い茶葉を見つけたんですよ。色も良いし、香りも。まあ、あなた方、お子様にはわからないでしょうが」


  一々他人を(けな)さないと生きていけないのか、こいつは。その思いは、なんとか胸の中にしまい込んだ。


  「その匂い……」


  サーシャはヘンリーの元へ接近し、鼻をひくつかせた。


  「なっ、何をしているんですか! 品性のかけらもない!」


  ヘンリーは紙袋を頭上へと持ち上げると、サーシャから離れた。

  彼女の方はというと、深刻な表情を浮かべ俺たちの方へと戻ってきた。


  「他の匂いに混じっててわかりにくいが…… もしかしたら、あいつかもしれない。」

 

  俺たちだけに聞こえるよう、サーシャは声を潜める。


  まさか、ヘンリーが黒騎士?


  とてもそんな風には見えないが、どうにか確かめる必要がある。


 

大雑把なストーリーは考え終えているのですが、細かいところで悩んでいて更新遅れてしまいました……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ