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猛き探偵

作者: ワンダ

短編小説です!


ぜひ最後まで読んでいってください!


誰でもお楽しみになれると思います!





男の名は、クラレット=ルーブル



彼は常に自分の世界の住人である。



多彩なその男は大学を中退した。現在28歳。



医学、心理学、文学……様々な分野で好成績をおさめていたが、彼はとにかく評判が悪が悪かった。


理由はこの物語が示してくれよう。



そして、私の名はコルレス。



彼とは違い、凡才であるが、



何故か彼とは波長が合う。



彼とは10年の付き合いだが、なかなかどうして面白い毎日。



退屈させないその男は、



悪魔でさえ出る幕を失うかの如く囁きで私を誘う。



共に中退したのである。



さだめし私は、この男の手のひらの上で転がっているのであろう。






____________________






「コルレス。コーヒーを入れてくれないか?」


ルーブルは新聞を覗きながら言う。


「お安い御用さ。」


「助かる。

それにしても、何て穏やかな国なんだここは!事件の一つも起こせないのか!

全く、体たらくも甚だしい!!」


「ルーブル。そういった発言は控えてくれないか?私とて退屈なんだ。」


「君に分かられてたまるか!

この才能を持て余すことなど、あってはならない!」


男は真剣な面持ちで語る。


「ほら、これで少しは落ち着け。」


彼は珈琲を飲みながら、顔をしかめる。


「おや、これはこれは。ふむふむ、

うん!面白いな!この事件をぜひ受け持ちたいものだな。」


彼は、突然上機嫌になる。


「おい、コルレス。外を見てみろ。」


二階にある我々の住処から、外の様子を確認する。


「ああ、あそこに何か挙動不審のご婦人が、

いらっしゃるようだ。だがそれがどうしたというのだ、ルーブル。」


男は笑みを浮かべる。


「今にわかるさ。

ほら!来たぞ!

さぁ、退屈とはおさらばだよ、コルレス!」


女はドアを何度も叩く。


どうやら只事ではないようだ。


「通したまえ。」


「了解した。」


ドアを開けると。


勢いを殺さぬまま、


一人の女が、


馬車馬の如く、駆け込んでくる。


亜麻色のナチュラルウェーブが揺れる。


漂白されし肌に汗が滴る。


彼女は死神でも見たのかと、

思いたくなるほど、


青ざめていた。


部屋に荒い呼吸が響きわたる。


「さあ、レディ。お掛けになってください。

お話が聞けるようになるまでいくらでもお待ちしますので。」


彼はこう見えて典型的な英国紳士なのである。


「珈琲を用意出来るか?コルレス君。」


「ああ。」


婦人の前に置く。


「すみません。お世話になってしまい、

ですが事は大変なことになっておりますので、今すぐ詳細をお話しなければなりません。どうか、私の話をお聞きくださいませ。」


女はなおも落ち着きを取り戻せないようだった。


ルーブルが答える。


「ええ、ぜひ。こちらも、望むところですので、迅速に解決致しましょう。

あなたは大変素晴らしい選択をなさった。」


「ああ、神よ、神よ。私は幸せ者です。

どうか、どうか、お願い致します。

探偵さん。」


女の顔には微かに落ち着きが見えた。


「もちろんですとも!

では、始めましょう。」


「はい。

まず、自己紹介から致しましょう。

私は、アイリス=デイジーと申すものでして、ホール大学の教授を務めております。

それで事件のことですが、発端はつい三日前のことでございます。

ある論文が盗まれたのです。

それは、我々にとってとても重要なものでして、大学の栄誉にも関わる大変貴重な物なのです。」


「ほうほう。それで?」


「はい。

恐ろしかったのはその翌日。

私はもう二度とあの光景を忘れられません。目の前で、目の前で恋人のダーノス=ヨットが、血だらけで倒れているではありませんか!神は残酷です。もう、私はこれからどうして生きていけば良いのでしょう!」


「心中お察しします。

ですが、解決には手掛かりが余りにも足りない。もう少し情報を頂きたい。」


「ええ。

もう一つ驚くべきことに、その教室のある机の上に例の論文があったそうなのです。

そして、

その場にいたのは私と、返り血を浴びた

ウィーブル。

私が偶然その場を訪れた時、事は既に起こってました。

彼は良く今は亡きヨットと口論になっていました。いわゆるライバルというものです。

ここまで聞くとあまりに事実は単純明快。

ですが、私は、彼がそんな事をする人間だとは到底信じきれません!

どうかお二方、真の悪人を見つけてください!どうか!どうか!」


「レディ。落ち着きたまえ。

私はきっとあなたの望むように致しましょう。安心してお待ちいただきたい。」


「ありがとうございます。探偵さん。」


女の表情は安心感に満ちているように見えた。


「無能な警察は何を?」


彼の口癖のようなものだ。


「え、えっと、警察の方はかなりの人数で操作していただいているようなのですが、

犯人は彼で間違いないと……。」


(ふっ、流石だな。)


「なるほど、それはさぞ重要な証拠でもあるのでしょうね。」


「それが、指紋検証で、彼だと……。」


「ふむふむ。なるほど!うんうん!面白くなってきたじゃないか!さあ、レディ事は時間との勝負ですぞ、コルレス!今すぐ出かけよう!まずは現場だ!!」


「了解した。準備してくる。」


「レディ。明日の10時。大学に来てい頂きたい。そこでまた。

良い報告を約束しましょう。」


「承知致しました。お二方、どうかよろしくお願い致します。」


私たちはホール大学へと向かった。





____________________






私たちは、私の車でそこに向かった。


もちろん、運転するのは自分である。


「君、どう思う?」


「どう思うって、いくら何でも犯人はウィーブルだと思うがね。」


私にはそうとしか考えられなかった。


だが、彼がこういう時、必ず異なる意見を言うのだ。


「いいか、コルレス、事実とはそれそのものでしかない。手がかりはいつも自分で決めるものだ。何もかもが正しく、何もかもが間違っているわけではない。境界線は曖昧なのだよ。」


「何を言ってるのかさっぱり。」


「愚かな!

まあいい、すぐに事実が知れるさ。」






____________________






我々はホール大学に着き、

被害者の同僚である教授に話を伺うことになった。


「どうも。私はデイジーさんから依頼を受けた、探偵クラレット=ルーブルというものです。そしてこちらが相棒のコルレス。」


「よろしくお願いします。」


彼は、やけに落ち着いていた。


「それでは、私の知っている彼らの性格について、お話させていただきます。

彼女も言っていたと思いますが、二人は対立関係にあり、いつも口論になっていました。よく仲裁したものです。

ですが、こんなことになるはずは無い。だったらもっと早く事は起きていたはずだ。」


「と、言いますと?」


「彼らは、上辺では相手を嫌っている様子でしたが、互いを認め合っていた。才能を認め合っていたのです。

私には分かります。

あそこまで尊ぶべきライバル関係はない。」


「結構。ありがとうございました。」


「なあ、もういいのか?」


「ああ、それよりコルレス。

もう全て謎は明るみにでている。後は可能性を消去していくのみだ。」


「なんだって?どうやってそんなこと。」


「問題の現場を見よう。」


私たちは悲劇が起きた場へと向かった。






____________________







「こちらです。」


さきほどの男に案内してもらう。


彼は例によって独りでに歩き回る。


それはまさに探偵のそれである。


「この血の痕跡からして、

殺害は一方的か。抵抗のあとも、無し。ふむふむなるほど!うん!

それで?論文とやらはどこにあったのです?」


「そちらです。」


「ここには何もなしか。指紋もなかったのですか?」


「ええ、死体の首にしか。」


男は言った。


「首か。うんうん。見えてきたぞ!

やはり間違ってはいなかった!」


彼はしばらく、独りでに頷き続ける。


「一体何だというんだ。私にはここに手がかりの一つも認められないんだがな。」


「事件は細部に宿る。神よりも偉いのさ。

まあ、明日、レディもまじえて、公開といこうじゃないか。」


「何が分かったというのです?

この方は。」


男は訝しげにルーブルを見つめる。


「それは彼のみぞ知ることですとも。


君が言うなら仕方がない。

では、一晩、辛抱しようか。」


「ああ、それがいいよコルレス君。」








____________________







「さあ、お披露目といこうか。

まず、この事件の犯人はいかにもという人物だ。」


「では、やはりウィーブルなのですか…。」


女は悲しげな表情を浮べる。


「いや、それは早とちりですぞレディ。」


「じゃあ一体誰なのだね。ルーブル。」


「まあまあ。

事件はあまりに単純な陰謀から生まれたものだ。

まず一つ、この論文には重要な価値がある。動機にもなりうるほどのね。

だが、これは事件の解決の糸口にはなり得ない。

私が調べて見たところ、死人が殺されたのは、発見された日の前日。それもどこか別の場所だ。」


「なんだって!だけど、どうやって?」


「昨日あの後死体を見せてもらったんだがね、コルレス。

彼の死因は首を締められたことにある。」


「では、あの血は?」


「それこそ、陰謀のなす所。

犯人は死んだ彼と親しき中にあり、悲劇の前日、彼と二人きりになる。

そこで彼は、睡眠中だったのか、

抵抗もできぬまま、暗闇に光を奪われる。

そこでその人物は、欲を剥き出しにし、ある事を思いつく。そう、『論文をエサに他の大学で、地位を高め、研究者として成功者となる。いまならそれが出来る。』

という感じにね?あまりに愚かで笑える話じゃないか。こんなことを許すところだったのだからね。

そして、犯人は死体を何らかの方法で大学まで運ぶ。その日は幸いにして、講義は無かった。つまり学生は一人もいない。

そこに死体を運び、どこかへ隠す。

ついに、最有力容疑者のご登場。

ある方法でその男を教室へ呼び出す。

そこからは簡単さ。睡眠薬を飲ませれば全ては終わったも同然。

死体の首に彼の指紋をつけ、

ついには、包丁で男を刺させる。その男だけに返り血を浴びるようにして。

そして、論文のコピーを机の上に置く。これもまた、指紋をたっぷりと付けてね?

そして彼を起こし、全ては完璧……のはずだた!

だが君は、重大なミスを犯してしまった!

ミス・アイリス!」


現場は騒然する。


そこに沈黙は許されなかった。


「な、何を仰るのです!

それに!証拠がない!動機さえも!」


「動機なら先程から言っていますとも、

あなたはきっと、男女の関係でも迫って、

ウィーブルさんをたぶらかしたのでしょうね。

騙されるのも悪いが、見過ごすわけにはいかない。

それに証拠ならたっぷりと用意している。

あなたは最近ある大学によく顔を見せていると言うではありませんか。

例の論文を携えて。」


「!?」


女の表情が凍る。


誰もが彼の言葉を信じきれないままでいた。


「言い逃れは出来ないぞ。この悪女め!

その男はいっていたよ。『彼女とは将来を誓い合った。そのはずなのに!』ってね!

君は多くを傷つけながら、

善人を演じ、己だけ助かろうとした!


だが!君は僕のところに来てしまった!


この悪人め!


運命はもう君を離さない。


今ここにおいての神は僕さ。


さあ!存分に祈りたまえよ。


前のように。」






____________________





「流石だね。君は。」


「なに。大したことじゃないさ。

彼女の手をみたかい?軍手の跡がついていたのを。

指紋を隠すのに使っていたのだろうね。」


「全く気がつかなかったね。」


「いいかい?コルレス。


人間とは単純な生き物だ。


いつだって動機は馬鹿げたものさ。


どれだけ言葉を並べ、過程が違おうとも、


行きつく先は結局、何一つ変わっていないんだよ。」



男は、今日も事件を求める。



彼こそは探偵"クラレット=ルーブル"






お読み頂きありがとうございました!


長編の作品もあるので、


ぜひそちらも覗いてみてください!

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