どうしてそうなった!!
「きゃあああああ」
馬車の中、頭を抱えて怯える高貴な人の血を引いていたらしい義妹が叫ぶ
馬車の周りは残念ながら賊と賊の中に紛れ込んでいるであろう魔獣使いが使役する魔獣たちによって包囲されていた
見るからに詰んでいる。義妹を迎えに来た護衛達はほぼ壊滅状態
俺自身は王都からの出戻り、義妹を平和的に説得して連れて行くために無理やり連れてこられたようなものなので別段、このまま見捨てて逃げても構わなかった
しかし、彼女はことあるごとに「逆ハー」だの「義兄ルート」だの言ってたので十中八九転生者だろうし、そう考えると”転生者仲間”としては見捨てるのは流石に忍びないかと思ってしまい、気付けば下手に外に出れぬ状況に陥っていた
義妹は騒いでたまにこちらをチラッと見るあたり、多分、俺がこの状況を打破するみたいな展開が義妹の言う「ゲーム本編」であるのか、攻略キャラとしての義兄の能力的に助けると踏んでるのだろう
いや、俺も転生者だからんなこと知ったこっちゃないのだけれど
それでもこの状況をどう”目立たつに”打破しようか、そう頭を悩ましていると…
ガタンッ
そう大きな音が上からしたとともに馬車が酷く揺れた
馬が現状、どうなっているのかわからないが、おそらく逃げた
しかも上からの音と言い、車体の揺れから安易に察するならばそう
―何か、重量のあるものが車体の上に勢いよく乗った―
しかも残念なことに義妹がしらない展開らしく、やっとこさ彼女の顔色に焦りと恐怖が前面に押し出された
現実ってわかってるだろうに、状況判断遅すぎじゃねぇかと内心ツッコミつつ
上のやつが敵対生物なら厄介だなという気持ちが込みだしてきた
伊達に女神様からチートは貰っていないこちらとしては何も分が悪いわけではないが、祭り上げられるような厄介事は避けたくてどうしても馬車の中から出る気がしなかった
流石に義妹も俺が車体から出て、戦うことをよく思っていないのが分かって来たらしく不安げな声で俺を呼んでくる
そうされると流石の俺も良心が痛む、いい加減どうにかするかと椅子から立ち上がった瞬間、ガラリと扉が開かれた
約180㎝越えの額から角を生やした見るからに”人間”じゃないやつが血まみれでそこに立っていた