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異世界で転生を繰り返してみた。

作者: Ceez

 元々は連載用だったのですが、ちょっと間を空けたら何を書くんだか忘れてしまいました(こんなんばっかりだ)。

 ここまで書いたのももったいないのでとりあえず投稿します。

 暇潰しにでもどうぞ。


 2017/12/18 修正とちょこっと増量。

 2018/04/18 ちょこっと増量。 


 死因はさすがにもう覚えてはいない。

 たぶん事故だったはず……。

 神様にも会ってない自分がまさか転生するなんて、夢にも思わなかった。

 ……その時までは。



 転生先は農家だか木こりだかの子だった。

 貧乏ではあり、兄弟もそれなりに多かったが、冬に口減らしなどを行うこともなく、普通の人生を送っていた。

 転生すれば漫画や小説などにある俺TUEEEE出来るのが一般的だと思うだろう?

 俺も色々試したが、何かが発露(はつろ)する兆しも全く無かったので早々に諦めた。

 ただその試行錯誤の結果、両親や兄弟や村の者からは奇行者扱いを受けてたがね。


 転機が訪れたのは10歳やそこらだったかな。村に旅の武修神官がやって来た時だ。

 武修神官と言うのは修行しながら布教をし、神の教えに背く悪(主に魔物)を退けたりする神官である。教会直属の隠密剣士みたいなものと思えばいい。


 で、その武修神官のおっちゃんに何故かスカウトされた。「お前には素質がある」とかなんとかで。

 これも異世界転生の醍醐味と思い、2つ返事でOKした。

 両親や兄弟からも扱い難い子供と言われていたことから、家を離れることに抵抗はなかったしな。


 そのまま武修神官(おっちゃん)に着いて行き、修練を積み、武修神官として独り立ちした。そして各地を旅しながら布教してーの、魔物を倒してーの、盗賊を壊滅させてーの、を繰り返しながら異世界生活を満喫していた。


 世話になったおっちゃんと同い年くらいになった時だったか。

 魔物の大規模な攻勢があり、逃げ遅れた村人を避難させるための盾となってあっさり死んだ。



 それから直ぐに目が覚めて赤ん坊となってる自分に気付き、愕然(がくぜん)としたね。

 またもや平凡な農家の息子だったけれども世界は待っちゃくれない。自分が現実味を感じていなくても、時間は刻一刻と過ぎていく。


 こんなこともあるんだなと割り切った自分は、走り回れる歳になったくらいから武修神官の修練を始めた。何故かというと、前の生で得たスキルとか魔法とかが難なく使えるのに気付いたからだ。


 両親は畑仕事を手伝う合間に修練をしている自分を見て、特に何も言って来なかった。

 呆れているのか諦めているのかは分からなかったが、「武修神官になりたい」 と言った時も反対はしなかったなあ。結局は武修神官になって旅先で誰かを守って死んだ。




 流石に赤ん坊となって3度目の目覚めを経験すればオカシイと思うわな。

 その生の親は鍛冶屋を営んでたため、将来は家を継ぐのが確定してた。


 先ずは前世との関連性を知るため、言葉を話せるようになってから歴史を片っ端から調べてみた。言葉と文字は同じなため、世界を(また)いでるような事はないと思ったからである。


 家は城砦都市の中だったが、識字率が低いため図書館などは主に王族専用施設だ。貸し本屋の爺さんの所に通い、知る限りの歴史を口頭で教えてもらった。


 当時はそれほど大きな国は無く、あちこちで小競り合いが多かったため、自分が聞いたことのある(いくさ)が判明するのは早かった。


 それにより、2度目と3度目の間は40年前後。

 1度目と2度目の間は50年前後というのが分かった。その時はそれだけ分かれば後は放置である。

 だいたい何に役立つかわからんし。


 武修神官用の鍛練を継続しつつ鍛冶の技術を習得する。

 鍛冶屋に戦闘能力は必要ないと諸君は思われるだろう。が、この時代、鍛冶の材料は自給自足である。


 つまり自分の足で鉱山まで赴き、鉱石の良し悪しを見極めながら掘るしかない。しかも国の公共の鉱山だと使用料を取られるため、オーダーメイドの武器だとやたらと高額になることが一般的である。


 なので自分は武修神官の戦闘力でもって廃鉱山(魔物の巣だったり盗賊の巣だったりダンジョン化してたりする)へ採掘しに行っていた。


 冒険者とかいねーのかと思われるだろうが、何故かギルドすらも無く、何代か後まで発生する兆候も無かったと言っておく。


 確かこの代は普通に嫁をとり、子供に恵まれ、孫に囲まれながら逝ったんだったか。




 そして4度目の赤ん坊である。

 一体このやり取りが何時まで続くのか、先を想定した自分は呆れるしかない。取り敢えず何が何処まで可能なのか、色々実験してみようと思い立った。


 手始めに2歳半くらい、顎が発達して言葉を話せるようになって直ぐのことである。

 流暢に「おはようございます。お父様お母様。本日もいいお天気ですね」と、話しかけてみたところ、不気味がられて屋根裏に放り込まれた。


 ……解せぬ。




 屋根裏に閉じ込められはしたものの、朝晩の食事は運んで貰えていた。

 固いパンと冷えきったスープだけだったが。家はそれなりに裕福であったため、醜聞を恐れての処置だろう。


 生憎と閉じ込められた自分の方はあっさりしたもので、狭い室内で(幼児でも)出来る筋トレで日中を過ごして寝る。

 という生活を繰り返し、6歳くらいの頃には朝晩は筋トレ。昼間は脱走して町中を駆けずり回っていた。


 武修神官ともなれば多対1となる盗賊との戦いに、忍び足やら登攀やら隠行は必要不可欠である。

 たかが建物の4階から脱出するのは朝飯前だ。


 町中の地理を把握して、今後は孤児院にでも身を隠そうと見に行ったら酷い有り様だった。


 ぼろい教会と繋がっていた孤児院はあばら屋だわ。責任者は老いた神父とシスターだわ。

 中にいた10数人の子供たちは飢え死に寸前のがりがりだわ。

 スラム寄りの立地なためにチンピラ共に恐喝されとるわで、この町の責任者はなにやってんだと思ったね。


 あまりの惨状に呆れ果て、全力で介入することにした。

 先ずは反抗心などを起こさないくらいにチンピラの親分をボコボコのメタメタのベショベショにする。


 『1人を無惨に処刑して100人の敵に警告す』理論だ。殺処分はしてなかった筈。

 衰弱したり病気になってる子供に快復魔法を施す。

 チンピラ共をアゴで扱き使い、食糧を集めさせる。炊き出しを行い、子供たちの飢えを一時的にではあるが凌ぐ。


 スラムを区画整理して畑を作らせ、住民を強制的に働く喜びに目覚めさせる。

 鍛冶屋の経験で火とくず鉄さえあれば農機具は作れる。農民やってたから畑の管理も熟知している。何が幸いするかわからん(3代分の)人生だったこと。


 スラムで大規模な事をやってれば不穏を感じて領主の私兵が様子を見にやってくるのは当然な訳で。町を騒がせた主犯としてとっ捕まりましたとも、ええ。


 領主はイケスカナイ性格の奴だったが、自分のやったことに理解は示してくれた。その辺りは幸運であったのだろう。

 畑で採れた野菜については買い取ってくれるという言質までしてくれた。

 品質次第で、という注釈が付くが。

 その後はスラムの住民たちを平民レベルの生活まで引き上げたり、畑の作物を高水準の物にして高値で取り引きさせたりして過ごした。


 だが『スラムの救世主』なる2つ名がこの後の時代に延々と語り継がれることになったのは余談である。

 6代目の時に聞いて憤死したわ!

 発端となった都市には銅像まで建ってるとか……。絶対に足を踏み入れないと誓った。


 5回目の転生であるが、鬱蒼(うっそう)とした森の奥地……、じゃなくて開拓最前線の村だった。


 丸太を組み上げた高い壁。それに囲まれた狭い村落にひしめき合う10数軒程のロッジ。いや、キャンプ場じゃねえよ?

 これでも開拓民からしてみればまともな分類の住居だ。貧しい村に行くと、縦穴式住居が珍しくないからな……。


 記憶している限りでこの時代開拓者というのは、魔物の最前線で勤める兵隊なのである。とはいっても兵士は全体の6割で20人くらい。残りはその家族だ。

 兵士と言ってもまともな専業兵士は隊長と副隊長の2名だけで、残りは樵(兵役中)や農民(兵役中)といった有り様だ。


 「そんな小数で大丈夫か?」と思われるだろうが群雄割拠しているこの時代、小国がこれ以上の人員派遣するというのは無理なのである。

 人は少ないが人類生存圏を広げたいのは何処の国でも急務なところらしい。


 その時の親父は兵隊長、母さんは軍属の神官だった。

 つーか赤ん坊をこんな最前線に連れてくんなよ! 同年代も居ない環境で何をしろと?


 親父がもっともらしく「新しい命を護ろうと思うだけで幾らでも力が湧いてくるのだ」じゃねーよ! 日々を生活するだけでやることが多いのに、母さんの仕事が俺だけに忙殺されんだろーがっ!


「お前には大きくなったら剣を教えてやろう」

「ばぶう(やったあ剣士スキルゲットだぜ)」


 け、けしてスキルに釣られた訳じゃないんだからね!

 手の掛からない赤ん坊を演じるのも必要に応じてなんだからね!


 さて6度目の転生先は普通に農民でありました。

 農民だけは何処にでもいるからしょーがないね。親は選べないからな。最前線じゃないだけまだマシだね。


 え、前回はあの後どーしたのかって?


 いやーしばらくは首の長い爬虫類は見たくないな……。

 ワイバーンの群れなんて対応は勇者の領分やろ。兵士20人ぽっちでどーしろっちゅーねん。


 え? 継承スキルチートのお前は何をしてたのかって?

 やっと掴まり立ちが出来た人間に無理を言わないで下さい。母さんと一緒にがぶっとやられて終わりさ。短い生だったなあ……。



 なんかそのせいで人間ってちっぽけなんだなあと痛感したね。

 1回1回頑張って生きていこうと悟りました。この先何時まで続くかわからんことだし、農民で始まり農民で終わるのも悪くないさ。



 さてさて転生を繰り返すこと早10回。

 なんとなく節目のような気がするようなしないような。相変わらず何者かの意思で自分の転生が行われているのかも不鮮明である。


 ここに至るまで転生1度に付き、間隔は20~40年ぐらい。

 既に1回目から数えて800年程度の年数が経過してしまった。


 自分が認識しているだけの世界には小国が群雄割拠している。そろそろ共和国とか帝国とか呼ばれるような国が出来てもおかしくないと思う。


 文明はというと中世のような時代から全然進歩が見られない。

 魔法が原因なのかは分からんが停滞しっぱなしだ。農民なんてところをうろうろしてれば分かるのだが、生活が全然変化しないのだ。


 これは自分が少しずつ変えなければならない感がひしひしとする罠。


 前にやらかしたスラム改革が今では大陸全土に広まっている。

 都市内では急速に淘汰されているが、逆に壁の外にスラムが出来つつあるなあ。貧困の幅が無くならないのは何処でも世の常らしい。


 7~9回目は農民が続いた。

 作物の成育を増加させるために落ち葉を集め、腐葉土を作ったりした。自分の畑だけだったがね!

 まあ、直ぐに村で同じようなことをする者が増え、周辺に広がっていった。


 東の国で広がったり、西の国で広がったりしたので畑に腐葉土という文化は大陸全土に知れ渡ったな……。


 つかなんだこの自分が時代の先駆者にならなければいけないような仕様は!

 これが自分が転生を繰り返さなければならん理由なんかいっ!

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― 新着の感想 ―
[一言] これ絶対、この世界作った神様がミスって、たぶんそのままだと人間文明が主人公の転生1回目のころから絶対に発展しない世界になってたとかだろうなあ。 国生みの夫婦神が混沌の沼を矛でかき回すがごとく…
[一言] 面白かったです。 大変、続きが気になります! これから主人公は異世界をどれだけ変えることが出来るのか 大変、楽しみです。 また続きを書けましたらお願いします
[一言] 今朝、この短編の投稿に気付きました。 少し荒い様な気かしますが、その分展開が早くて続きを読みたい気持ちが強くかき立てられます。
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