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28,お茶会

 デュアー公爵家でのお茶会は、ウィンスレット公爵家からとグランヴィル伯爵家、アシュフォード侯爵家からそれぞれ人手を回して、客人に見える範囲を徹底的に甦らせた。


特に庭は短期間では難しい事であったけれど、公爵家の威光に相応しいまでには復活を遂げた。

レナは、招待状を書きコーデリアは、ジョージアナとお茶会で使う場所を決め、食器を選び装飾を手配した。

ジョエルはコーデリアに新しいドレスを贈り、招かれた人にはデュアー公爵家が変わらずあることを示すだろう。


 噂はあっという間に回る。だからきっと、コーデリアの社交界への復活は、憶測から確かな物へと変わり人の目は変わるだろう。


この日招いた中にはシャンテルとキャスリーンはもちろん、メリッサとアニスの姉も含まれていた。それぞれレナにとっては接する時には緊張をもたらす相手だ。

全て、準備は整い招いた客人がきちん(・・・)としてくればコーデリアの社交界での地位は確固としたものだと証明され、その一番の友人であると立場を示すレナもまた高い地位を約束される。そうなることで、これまで受けた些細な嫌がらせは少なくなるはずだ。


 お茶会は、お昼を過ぎた時間に庭に面した広間で、親しい令嬢としてはジェールとエリーを招き、その二人以外はほとんどか辛うじて顔と名前が一致するという仲であった。


次々と予定通りに招待客が訪れ、飾られた花や庭を褒めて時は和やかに過ぎる。主催者としてのコーデリアは堂々として美しく、デュアー公爵家の邸の威容と身なりも美しく整えた佇まいは、彼女を女王に見せていた。


メリッサとは、ただ「ごきげんいかが?」と挨拶を交わしただけ。

ただ、それだけで充分なのだ。

メリッサとしてはアニスとの事でレナを気にくわないままだとしても、表面上は和解したこととなる。


「私も……招いてくれて嬉しかったわ」

そう言ったのはシャンテルだった。そのどこか不安げな眼差しでレナがどう思っているか気にしていると分かった。

「わたしとシャンテルは友達でしょう?招かないはずが無いわ」


シャンテルがしたことを、心から無かった事には出来ない。

けれど嫌えない。レナにも悪い所があったから、それでもコーデリアが言ったようにだからといって、人に悪意を向けて良い訳ではないのだ。だから……コーデリアに対するようには向き合えないのだ。


「そうね、私達……友達だものね」

ホッとしたようにシャンテルは微笑んで、いつものようにしっかり者の力が目に宿る。それに、レナは頷いて笑顔を返した。



 何もかもが完璧な、お茶会。

飾りもお茶もお菓子も、それからレナをはじめとする令嬢たちの装いも。


そして、お開きの時間を知らせるのは、ジョエルたち独身の男性たちの登場だった。


未婚の令嬢たちの関心は、条件の良い結婚だ。

だから、お茶会も男性たちの情報交換の場であるし、実際に知り合えるきっかけをもたらす事が出来るというのは人気のサロンになる秘訣だとも言える。


類は友を呼ぶではないけれど、ジョエルのような高位の男性の友人にはやはり身分の良い男性がなるものだ。

だから、お開きのけはいの頃にヴィクターも含む彼らが現れた時には正しく令嬢たちは色めきたったのだ。


コーデリアはその様子に、こそっとレナに耳打ちをした。


「みんなこれで、わかるはずよね?わたくしとレナと親しくしておく方が、利点が多いと」


美しく微笑むコーデリアを見返したその視界の隅で、ジェールの手を取るクリフォードを見た。そして、レナの側には視線を一身に浴びるヴィクターが。


「美しい庭と、令嬢たちのお茶会というのはとても絵になる」

「本当?もうそろそろ終わりの時間なの。次はヴィクターたちもも一緒にどうかしら?」


「レディたちのお邪魔でなければ喜んで」

ヴィクターの微笑みは、全ての人を魅了するだろう。


魅せる為の微笑みだと分かっていてさえ、その美しい瞳とそれから弧を描く唇に、心を奪われて目をそらせない。

全ての事を消し飛ばしてしまうほどの破壊力だ。


そしてそんな二人を、見ている人がいると分かっている筈なのにその事は片隅にもないのだ。

「それと、これは婚約者の君に」

ヴィクターが差し出したのは、鮮やかなピンク色と赤色の可憐な花束。

「ありがとう、部屋に飾るわ」

「そうしてくれると、嬉しい」


花の香りは、受けとると優しくレナを包み込むようだった。花束の滑らかなピンク色のリボンは手に優しく触れる。だからヴィクターが細かい所まで気を使って選んでくれたのだとそう思うと、とても嬉しくなった。


男性たちを交えてのお茶会は、女性たちの会話もがらりと変わり声のトーンさえ変わる。



「晩餐で会おう」

「そうね」

お茶会はその会話を最後に終わり、ジョエルやヴィクターたちが立ち去り、お茶会の客人たちは帰る支度を整えていた。


「やっぱり素敵ね、ヴィクター卿は。レナが羨ましいわ」

そう言ったのはキャスリーンで、同じような視線を浴びる。


「こういうときは、思いきり自慢して良いと思うわ」

からかうように言ったのはシャンテルで、笑いが起きる。

「そうね、ヴィクターは素敵よ。とても……、花の趣味もとても良いわ」

レナがそう返すと、また笑いが起きて

「次のお茶会には、友人も連れてきて良いかしら?」

コーデリアに頼んだのは、メリッサだった。

「ええ、もちろんよ。貴女の友人なら、ね?レナ」

「もちろんだわ、メリッサ」


「次も、楽しいお茶会になりそうだわ」

レナはそう言ってからコーデリアに笑みを向けた。


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