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9,春のガーデンパーティ

 王子妃の座を争う、そんな令嬢たちの思惑は田舎者のレナにもひしひしと感じ取れるそんな日々。

プリシラ姫とアンジェリン姫の王弟の息女姉妹によるガーデンパーティが催される事になり、そこへまたギルセルド王子とその友人たち……つまりは、独身の貴族男性たちが参加するとあって、レナももちろんシャンテルたちに誘われる形で招待を受けていた。


本当は……とても、憂鬱だったのに。


シャンテルたちの「いいな」もアニスたちの「いじめ」も。


「案外、貴族のご令嬢というのも楽じゃないのですね」

ミアが髪をコテでカールを作りながら言った。

どうせ、ミアには分かるまいと本当は行きたくないのだと言ったところ、この返事だったのだ。

「ミアったら……」

ミアにかかるといかにも簡単な一言で済んでしまい、レナはわずかに呆れてしまう。


そもそもギルセルドは、王太子 エリアルドに何かあった場合には王位に就く。そのため彼の妃を選ぶのは、エリアルドが成人した今は可能性は低いものの、万が一の場合には、この国の一番高貴な地位を得る事になる。


 しかし、対抗力のありすぎる貴族から選ぶと王家としては御しがたくなり、力が無さすぎると他の貴族たちの不満を押さえきれず、エリアルドの妃であるフェリシア・ブロンテ伯爵令嬢が完璧な令嬢であっただけに、レナはとても自分ではあり得ないと感じてしまうのだ。

しかし、アシュフォード侯爵家やウィンスレット公爵家が後見としてあることでレナの地位は上がってしまっている。


デイドレスであるから、クリーム色に白糸で花の刺繍が施された控えめなデザインのものを選び、髪はひとつに結い上げて、簡単にまとめて、緩くカールさせた毛束を肩にふわりと垂らした。

可憐な帽子を被ると、いかにも雑誌の令嬢のスタイルで……とても無難な仕上がりだ。




 ガーデンパーティは、二人の王家の姫が主催とあってたくさんの令嬢たちが招待されていて、王宮の庭は、さながらドレスで花が咲いたよう。

このパーティには、独身の貴族たちもたくさん参加しているとあって、令嬢たちの気分の高揚が晴れた空と共に空気を華やかにしていた。


シャンテルたちは積極的にギルセルドに話に行ったり、顔なじみになった男性たちに話しかけたり。それをレナは遠巻きにしながら立っていた。


同じように遠巻きに立ち尽くしてる、見慣れない令嬢がいた。金の巻き毛に、美しい顔。それなのに着ているものは古めかしい。

「こんにちは……わたくしはレナ・アシュフォードと申します」

「コーデリア・デルヴィーニュよ。はじめまして、ね」


その名を聞いてレナは少し驚いた。

「あなたが……レディ コーデリア」

「レディ レナはここにいてもいいの?」

ここに、とはすなわち皆が囲んでいる男性たちから離れて、ということだ。

「あなたの方こそ」


「わたくしは……今日は王宮を見納めに来たのよ」

「見納め?」

「祖父は……もうきっと永くないの。だから、もうこの世界とはお別れ」

コーデリアは美しい笑みを浮かべた。気品のある彼女は身なりこそ古めかしいが公爵家の姫らしい。

「そんな……」


レナだとて、わかっている。

女では爵位を継ぐことは出来ないのだから、男系子孫の絶えるデュアー公爵家は終わる。養子をとることはどうやら選択しないらしい。


「お祖父様とも話し合って、そう決めたのよ。こんな落ちぶれた公爵家を継がせる方が悪いし、それに……」

コーデリアは周りを見渡して

「あんな風な人たちに、デュアー公爵の名を継がせるくらいならいっそ終わらせた方が清々するの」


レナはその凛とした横顔に見惚れた。

あんな風なとは、貴族とは名ばかりの成り上がりの令嬢たちだろう。

「レディ コーデリア」

「わたくしはね、夢を叶える為にその道を選ぶのだから、人が思うほど不幸なんかじゃないわ」

微笑んだコーデリアはとても綺麗だった。

「夢ですか」

「好きな人と、同じ夢を見て暮らすの」


「それは素敵ですね」

「それが、牧場の仕事でもそう思う?」

くすくすとコーデリアは笑った。レナは目をぱちくりさせてしまったけれど

「もちろん」

と笑顔で答えた。


「あなた、見た目は令嬢らしすぎるのに、中身は令嬢らしくないわ」

「レディ コーデリアこそ」

「コーデリアでいいわ」

「どうぞ、レナと」


「たいしたおもてなしは出来そうにないけれど、今度ぜひいらして」

コーデリアの申し出はレナの心を浮き立たせた。

「喜んで」

だから心からそう言えた。

そして、コーデリアならジョージアナも家に呼ぶことを賛成するに違いないとそう思った。


そして二人で居ると、ふともう少し離れた所に隠れるかのようにギルセルドが一人で居た。

「殿下も大変ね」

コーデリアが小さく呟いて、レナも微笑んだ。


「……王妃さまだわ……」

ギルセルドに近づく三人の夫人が目に入り少し立ち話をしたかと思うと、ギルセルドはそのままパーティを中座した。

「何かあったのかしら?」


気づいたのはきっとレナとコーデリアで、他の令嬢たちにとってはいつの間にかギルセルドが居なくなっていた、という事になっていた。


 邸に戻ってレナは早速ジョージアナにコーデリアの事を話した。

「伯母さま、コーデリアをお招きしても良いかしら?」

「コーデリア?デュアー公爵の?」

「ええ、そう」

レナの言葉にジョージアナは今度こそ、二つ返事で

「もちろん構わないわ。でも、コーデリアは……そのうち」

「デュアー公爵家がなくなっても、コーデリアはレディだわ」

「ええ、そうね………レナの言う通りだわ」


そして、レナがコーデリアに出会い、手紙を書いたその翌日。


大きな事件が起こったのだった。


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