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この国は危機的状況だった



 下げた頭を上げ、こちらの様子をジッと見つめている王様に委員長が返答した。


「私たちに何かしか力が備わったのはわかりました。 しかし、私たちは戦ったりこともなければ、武器を握ったことすらありません。 戦えと言われましても方法も手段も知りません」


 委員長が言ったことは当たり前なことだ。

 現代日本では、戦国時代のように戦をしたりはしてないし、法律によって戦争も禁止されている。

 そんな世の中で育った俺たちに戦うすべなど持っているはずないのだ。

 あったとしても、多少のケンカ殴り合い程度だ。

 それも少数、女子にいたっては皆無であろう。


「そこは心配しなくてもよい。 戦い方などについては、これから我らがしっかりと教えるつもりだ。 おぬしらのステータスがあれば、すぐにでも覚えられるだろう」


 王様はこれから俺たちに戦い方を教えるつもりのようだ。

 確かにこの普通を大きく逸脱した能力値があれば、ある程度のことは覚えられそうだが……


「戦う戦わないの話の前に、一つだけ確認していいでしょうか?」


 委員長がいきなり話を切り、王様に遠慮がちに尋ねる。


「なんだ? 遠慮せずに言ってみてくれ」


 そして委員長は俺たちに重要で一番聞きたかったことを聞いてくれた。



「私たちは元の世界に帰れるのでしょうか?」



 その質問に王様は多少沈黙し……


「もちろん帰れるぞ。 その為の準備も始めておる」


 王様の言葉をに俺たちは歓声を上げる。

 嬉しくて泣き出してるやつもいるくらいだ。


「喜んでいるところ悪いが、おぬしらを送還できるのは三年後だ」


 喜んだのもつかの間、王様はそう続けて言った。

 それを聞いた俺たちは上がった歓声はピタリと止めた。


「それは何故でしょうか? 元の世界には帰れるのですよね?」


 みなを代表し委員長が王様に聞き返す。


「おぬしらの呼んだ魔法陣に魔力が再び溜まるのに三年ほどかかるのだ。 おぬしらを呼び出すのにも三年かかっておるから、それくらいは絶対にかかる」


 王様も申し訳なさそうな顔をしながら俺たちに話す。


「三年かかると言うのでしたら、三年間戦わず平穏に過ごさせて頂きたいのですが?」


 そうさせてもらえれば、俺たちも多少は安心できると思う。

 知らない世界で戦ったこともない俺たちは、戦場に出れば死ぬかもしれないのだ。

 王城の隅でもいいから、平穏に過ごさせてもらえた方がいい。


「すまぬがそれも出来ぬのだ」


 さらに王様は顔を歪める。


「魔族が攻め入って一年間はなんとか国境付近で、奴らの進行を食い止めておったのだが、徐々に兵たちも疲弊していき、おぬしらを召喚を決めてからの三年間で、我らの領地はさらに三分の二奪われた。 我らだけで戦っていてももう二年も持つまい。 本当に申し訳ないが、我らにはおぬしらにすがるしか、生き抜く道が残されておらぬのだ」


 王様の説明に俺たちは絶句した。

 なにもしないと魔族は確実にここまでやってくるわけで……

 つまり実質的な死を意味していた。

 この国はそこまで追い込まれて、藁にもすがる思いで俺たちを召喚したんだろう。


「三年後がどのような状況であっても、神に誓ってお主たちは元の世界に返す。 おぬしらの助力を借りて、三年で魔族を押し返せないようならば、どのみちこの国はもうダメだろう。 なんとか送還の準備が整うまで我らと一緒に戦ってもらえないだろうか?」


 話をしているうちに周りの騎士達も宰相たちも顔を鬱向かせ震えてる。

 王様は三年の期限つきで俺たちに協力を申し出ているのである。

 状況か変わらなければ三年後には諦め死ぬつもりなのかもしれない。

 そんな様子を見て俺たち、さらに黙りこんでしまっていた。

 王様の決意が本物だと肌で声質で感じたからだ。

 しかし、すぐに返事もできない。

 なんせ俺たちの生死にも関わってくることだし、単純にビビってもいる。


「今ここで、すぐに返事をすることはできません。 みなと話し合いどうするか結論を出したいと思いますので、私たちに少し時間を頂けませんか?」


 委員長は俺たちの顔を見渡し、王様へとそう答えた。


「今すぐには決められないのもわかった。 では明日にでも答えを聞こう。 ただ我らも国がかかっておるので、よろしく頼む」

「わかりました。 ありがとうございます」


 王様はすぐに返答の延期を許可してくれた。

 その事に委員長はお礼を言い、ホッと一息吐いた。

 俺たちにもため息や安堵の声が上がる。


「誰か彼らを部屋へ案内してやってくれ」


 王様の声に騎士達が動こうとしたが、王女様がそれを止める。


「私が彼らを案内いたします。 ここまでの案内も中途半端でしたのでそれくらいはさせてください」


 するとリーダー騎士以外は元の場所へと戻った。


「ならば私も同行いたします」


 リーダー騎士も一緒に行くと言い出した。

 今までの行動からするとそうするとは思っていたけどね。

 王女様はため息を吐きながらも、それに頷いた。


 「それではご案内いたしますので、私についてきてください」


 王女様にそう促され、入ってきた時の大扉くぐり、俺たちは謁見の間を後にする。

 もちろんリーダー騎士は王女様の隣に侍っていた。 



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