美女と薬莢
他人の趣味に興味があります。
自分は人の趣味に興味があります。
何故なら自分にはこれと言って真剣に向き合う趣味が無いからです。なので、他人の趣味の助けをするのがとても好きな気がします。
休みの日には、駄菓子屋に行ってコーヒーやお菓子を食べたら本屋に向かい、何か面白い本が無いかを探したりします。ゆっくりとタイトルを見て周り、今自分の求める面白いが何なのかを考えながら見ているとつい前方不注意になりがちで、すぐ目の前の女性に気づかなかったりします。
「あ、あ〜すいません。『やー見えなかった』本汚れて無いですか?」
「はい、大丈夫です。ビニールが巻かれてるので汚れは防げたと思います」
髪はロングの茶髪で、クリーム色のコートとマフラーを着ている眼鏡の美女だ。
そんな彼女の本のタイトル名は『ピクニックに最適な簡単ご飯』と書いてあった。
「あ〜これですか?私よく遠出するんですよ。そこでちょっと激しく運動するので、直ぐ食べられる様にお弁当とか頑張って作ってるんですよ〜。それでは、失礼しますね」
彼女はそう言って、どこか早速さとその場を立ち去った。
もう少し話をしたかった気持ちを抱きつつ、立ち上がろうとした時、お姉さんのいたその場所には普通の生活をしている人間なら見ない物が転がっていた。
「これは…薬莢…薬莢かマジか、今のお姉さんのかな?これは聞いてみるしかいけないよな〜すげ〜大事な物だろうしな〜『なかなか訳ありな趣味持ちの人じゃ無いか。遠出って何処に遠出すんのかね〜面白いかも』よし行くか!」
そう言ってから向かう自分に男性警官が話しかけて来た。
「君、その手に持ってる物は何だ?」
「やー拳銃ライターのオイル入れとかですかね?拾った物なんで分かんないですけど、どうぞ。」
訝しげに見る警官「…これは本物だね」
「は〜警官が落としたんですかね?」
「あ〜そうだな。うん、そう言う事だろう。今丁度隣町で銀行強盗があったからな、警官がうろついてるぶんそう言う事もあるんだろう。そう言う事だ」
実際そう言う事にすれば仕事も増えなくて済むからだろうと自分は思った。なので、特に取り調べも無く、簡単なボディチェックで済んで良かったと思う。
「まあ、君も気をつけて帰るだよ。まだこの話報道されて無いからね」
「は〜い、ありがとうございまーす」
隣町で銀行強盗なんてのは人生的確率で言えば別段珍しい事でも無い。
ただその確率で見ても、先程のお姉さんと薬莢の話はどうも気掛かりだった。
それを言うと、やる気のあまり無いあの警官の手を煩わせるだろうと言う事にして、言い忘れたと言う事にして自分は急いでお姉さんを追いかけた。
「まあ、いないよな〜!は〜…」
自分が異常だと分かっています。それでもこの落胆した気持ちを表に隠す事は出来ない程にため息を大きく出した。
『お姉さん…遠出…薬莢…警察…強盗…タイミングが一致してるだけで繋がりがあるかなんて分かんないよな〜まあ、あのお姉さんの薬莢だとしたらやぱお姉さん自身が警察か強盗かになるんか?あ、待てよ?やけにあの警察のおっさんがそこまでやる気というか何処か驚き?が無い様に見えたのは、あのお姉さんの物だと分かってたから?や、あのお姉さんの物だから何て憶測も良いとこだけどね』
「ねーえーおかーさーん。あの人入り口で何してるのー?」
「あーすいません。今行きますんで、あそうそう。この辺なんか事件で警察来てるんで、お子さんとは早く帰った方が良いですよ。それでわ!」