チクショー、ボロボロだ
ここはヴェルフルトという名の街、人口は10万人ほどいるらしい。大陸でも有数の規模を誇る城塞都市だ、と門の警備をしている兵士が教えてくれた。
街に入ったオレはまずしなければならないことがいくつかあることを思い出した。まずお金の価値を知ることだ。果たして金貨40枚はどれくらいの価値があるのか。
それに小腹が減ったのでそこらへんで食べ物でも調達しなければ・・・ん?腹が減った?おかしい、オレは千年くらいなら余裕で絶食できるはず、だからこそ人様に全く迷惑もかけず過ごしてきたと断言できるのだ。
「これも変化の杖の副作用か」
勝手に持ち出しておいて言うのもなんだが、本当にクロフトの宝物は使えねーな。だからといって使うのを止めるわけにはいかないが。
よし、試しにパンでも買って金貨を使ってみよう。すぐそばのパン屋に行って価格を見てみると『1個130セルト』と書いてある。まぁパンが金貨より高いわけがないから、問題は金貨が一枚何セルトになるのかということだ。
「コレください」パンと一緒に金貨も差し出す。
「130セルトになります。10000セルトからお預かりします。9870セルトのお返しです。ありがとうございます」
店員の素晴らしく機械化した対応でオレはあっさり目標を達成する。まず金貨は10000セルトだ、そしてお釣りは銀貨9枚、銅貨8枚、鉄貨7枚だ。つまり銀貨1000セルト、銅貨100セルト、鉄貨10セルトとなる。
つまり今のオレは40万セルト弱持っているということがわかった。これでちゃんと買い物に行ける。まずは服屋を探して歩くが、なかなか見つからずキョロキョロしてしまう。
「きゃあっ!」
しまった、キョロキョロしすぎた。オレは女性とぶつかってしまい、お互い向かい合う感じで尻餅をついてしまった。だがオレはすぐさま立ち上がり女性に手を差し出す。
「よそ見してた、スマン」
「い~え~、こちらこそ~」
女性を立ち上がらせ、頭を下げてその場を立ち去る。気をつけねば。
その後オレは無事服屋を発見し、下着等一式揃えてから冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは街の中央部の大通り沿いにあり、かなり大きい建物のようだ。
オレは入口をくぐると受付と書いてあるカウンターに向かった。そこにはおかっぱ頭の女性がいるのだが、彼女にはとても見覚えがあった。何しろさっきぶつかった人だったから。
カウンターの上には『受付:セシリア』と書かれたプレートが立っている。そうかセシリアさんというのか、覚えておかねば。何しろ長い付き合いになりそうだし。
「あのースンマセン」
「あら~アナタさっきぶつかった子ね~、怪我はなかった~」
なんだかほんわかした感じの人だな。のんびりと言ってもいい、笑顔が良くて優しいイメージがする。
「ああ、大丈夫。それより冒険者登録したいんだけど」
「君がね~、大丈夫かしら~」
「何事もまずやってみようと思って」
オレの心配をする受付嬢は笑顔、口調そのままにトンでもない爆弾をオレ目掛けて投げつけてきた。
「まぁそうね~、度胸はありそうよね~。フル○ンで街を歩けるほどには~」
ブフウウウゥゥゥーーー!!いきなり何口走ってんだーーー!!
「ナ、何カノ見間違イデスヨ、キット」
「あのあと~、下着買ってたわね~」
なんでストーキングしてんだ、アンターーー!仕事してろよーーー!
「ねえ、”思念写”って知ってる~?闇魔法なんだけど~」
そんな魔法は知らないが、イヤな予感しかしない。つーかアンタが闇魔法ってなんか似合ってるよ!
「自分が見たものを紙に写す魔法なんだけど~、はい証拠の写真ね~」
その写真なる紙にはこけた拍子にローブがめくれ上がりある部分が露出して、あられもない姿になったオレがいた。オレは即座に破り捨てるが、受付の手には5枚ほど同じ紙があり扇状にしてこちらに見せていた。
サーと血の気が引く音がするし、精神もガラガラ音を立てて崩れていく。
「なかなかカワイイわね~、クスっ」
もうやめてください、しんでしまいまふ。せいしんてきに。
「じゃあ~、この登録用紙に~お名前を書いてね~」
はい、うまれてきてすいません。
「はい~、これで終了~。ルーク君、3日後に新人研修があるから~ちゃんと来てね~。来なかったら~、クスっ」
この受付嬢、ヤバ過ぎる。それだけはイタイほどわかった。