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 そのダンジョンは前触れもなく大陸に出現した。

 国による調査が始まったが、ダンジョンの中はモンスターで溢れ、調査は思うように進まなかった。

 そして、一年が経過した頃、調査による被害の大きさを考え、調査は打ち切りとなった。

 不思議なことに、ダンジョンのモンスターはダンジョンから出てくることはなく、国はダンジョンをそれほど危険なものではないと判断したのだ。

 調査が打ち切りになり、ダンジョンの扉は二度と開かれることはないと思われたが、その扉を開く者が現れた。

 危ないこともいとわずに、宝を求めて突き進む者たち。

 冒険者だ。

 ダンジョンの中には珍しいモンスターやアイテムが山ほどあり、そのお宝を目当てに冒険者が集まり始めたのだ。

 人が集まれば、そこで商売を始めるものも出てくる。

 元々ダンジョンの周りには村もあり、しだいにダンジョンを中心とした生活が築かれていった。

 そして、時は過ぎ……。

 ダンジョンが出現して100年後。

 ダンジョンはダンジョン都市となり、冒険者はダンジョン都市で産まれた子供たちの憧れの職業となっていた。

 しかし、国の調査が打ち切られるほどダンジョンの内部は危険であり、ダンジョン都市での冒険者死亡率は、年々高まっていくばかりだった。




 助けて!

 誰か助けて!

 僕はただボコボコの岩の道をひたすら走る。

 今の僕にはそれしか残されていないから。

「ひぃ、ひぃ、ひぃ」

 苦しい。

 キツイ。

 息がうまく吸えない。

 足が重い。

 もう止まりたい。

 止まって休みたい。

 でも、止まれない。

 後ろからは、低く響くモンスターの鳴き声が聞こえてくる。

 あいつらまだ諦めてない。

 この階で遭遇したモンスターの群れ。

 一斉に僕のことを襲ってきた。

 囲まれる前に通路へ避難することが出来たけど、諦めずに僕を追って来てる。

 僕はいくつめか分からない曲がり角を通過した。

 曲がり角はモンスターの視界から姿を隠すことは出来るけど、ここまで一本道だったから止まればいずれ追い付かれる。

 早く逃げないと……。

 でも、もう息と心臓が限界だ。

「はぁはぁはぁ……。もう……。無理……。うわっ!」

 足がもつれて、僕は派手に転んだ。

 その拍子に、僕の胸元から筒状のものがこぼれ出る。

「これは……」

 転んだ痛さに顔をしかめながら、僕は筒状のそれを拾って起きた。

 ペタンと座ったまま、僕は手の中のそれを見る。

「確か変なお兄さんが無理やり渡してきたアイテム……」


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