4月5日
四月五日。
今日は、久方ぶりの平穏と、騒がしさがあった。
「Это, пожалуйста」
「こーひーと、サンドイッチ?」
「да」
「はーい! こーひーと、サンドイッチでーす!」
「はい」
「すまんが、こっちも珈琲おかわりだ」
「こーひーおかわりでーす!」
「はい」
今日は久し振りに、メアリーが給仕を担当している。
笑顔を振りまく彼女が店でうろちょろしていると、不思議と店内が明るくなるのだ。
撫で回されたり、おかしを貰ったりしながら、メアリーはお店のお手伝いをする。
「……вкусно」
「ありがとうございます。またのお越しを」
「ありがとーっ!」
そうして、以前騒がした外国の男も、少し朗らかな笑みで退店する。
彼の目的はよく分からないが、取り敢えず店の料理を気に入り、楽しんでくれている。
それだけで、メアリーは嬉しかった。
大好きな喫茶“MARY”が、認められた気がしたのだから。
「おじちゃん、おじちゃん」
「はい」
「めーちゃん、がんばるねっ!」
「……はい」
にっ、とメアリーが微笑めば。
町田青年も、ふ、と微笑んで、彼女の頭を撫でるのであった。
■メアリーの にっき■
きょうは いつもどおり あかるい おみせだったよ!
みんな にこにこで めーちゃん うれしい!
みんなが もーっと にこにこできる おみせになるように めーちゃん もーっと がんばるねっ!
あしたもいいこと ありますように!




