3月29日
三月二十九日。
最近、客が良くメアリーを構う様になった。
「メアリーちゃん、コレ食べる?」
「ううん、だいじょうぶー」
「メアリーちゃん、こっちこっちー」
「はーいー?」
頭を撫でたり、ご飯をあげたり、膝上に乗せたり。
小さなメイドさんを可愛がる為に、皆があの手この手を尽くす様になった。
「……ふぅむ。大人気だね、メアリー嬢は」
「メアリーさんですから」
「惚気かね」
「はい」
それは、メアリーが今まで頑張ってきた証拠であり、リピーターの需要を満たしているということでもある。
事実、メアリーと触れ合えた客は満足気であり、また来ることが多いのだ。
「しかし、気をつけたまえよ」
「はい?」
「人気が高まるのは、厄介な連中と関わることが多くなるということだからね」
「……肝に銘じておきます」
六天縁の言葉に、町田青年は深く頷く。
メアリーは可愛らしい。だが、だからこそ、メアリーに悪意をぶつけたがる者もいるかもしれないのだ。
油断は禁物。町田青年はそう、気を引き締めてかかる。
「……おじちゃん」
「はい」
「おかお、こわいよ?」
「えっ」
「にっこりしよ、ねっ?」
「……はい」
……ただ、表情に関しては。
あまり頑張らない様にしようと思う町田青年だった。
■メアリーの にっき■
きょうは おじちゃんの おかおが こわかったよ。
なんか がんばってたけど すっごく こわかった。
でも おこってた わけじゃ ないみたい。 へんなの。
かわいいねって いってくれるひとが さいきん おおくなったよ!
めーちゃん そんなに かわいいかな? うれしいね!
あしたもいいこと ありますように!




