3月20日
三月二十日。
今日はそれとなく、暖かな日差しであった。
こんな日には欠かさず、布団や洗濯物を干すのが町田青年の習慣である。
「……よし」
日光を浴びて、濡れていた洗濯物達は乾き、暖かみを帯びる。
それを手触りで判断すると、町田青年は満足気に頷いた。
「後で畳んでしまいましょう」
「はーい!」
そんな調子で、洗濯物を取り込んでいくと。
「おや」
「おー?」
エアコンの室外機の上に、何かが乗っていた。
すわ鼠かと身構える町田青年だったが、毛並みは灰色であるものの、その大きさは鼠のソレではない。
ゆらゆらと揺れ動く尻尾といい、ひくりと動く耳といい……。
「猫ですね」
「ねこ!」
……それは正しく、猫であった。
しかし、野良猫という訳ではないらしい。
首輪に鈴があることから、どうやら飼い猫の様であった。
「ねこさん、おねんねしてる?」
「そうみたいですね。そっとしてあげましょう」
「はーい」
人懐っこいかも分からないので、町田青年は触れずにいた方がいいと判断する。
しかし、好奇心旺盛なメアリーは、そうもいかないらしく。
「ね、ね」
「はい」
「なでていーい?」
「……どうでしょう」
猫を撫でたいと、おねだりするのであった。
とはいえ、自分の家にいるとはいえ、自分のペットではないので。
「猫さんに聞いてください」
「はーい!」
本人、いや、本猫に判断を任せることにした。
「ネコさん、さわっていいー?」
「……なーぉ」
「にゃー?」
「なーぉ」
「にゃおー」
「なーぉ」
「にゃーお」
そうして、鳴きマネ教室が開いたベランダを見て。
町田青年は、そっと微笑み、仕事に戻った。
■メアリーの にっき■
きょうは ネコさんが いたよ!
ベランダで おひるねしてた! かわいいね!
なでていい? ってきいたら にゃーおってこたえてくれたよ!
でも なでようとしたら にげちゃったから にゃーおは ダメってこと だったんだね。
はんせい はんせい。
あしたもいいこと ありますように!




