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3月16日


 三月十六日。

 毎日三回。ご飯の後に、町田家は必ず歯を磨く。


「メアリーさん、じっとしてください」

「はぁーぃ」

「じっとしてください」


 メアリーの歯を磨くのは、大抵が町田青年の役目である。

 彼女自身でも磨けなくもないが、雑だ。

 幼児であるから乳歯はいつか抜けるとしても、毎日の歯磨きは怠ってはならない。

 故に、町田青年が磨くのである。


「痛くないですか?」

「ひはふはいほー」

「そうですか」


 丹念に、そして丁寧に。

 痛くない様に力を緩めながらも、しっかりと磨ける様に。

 念入りに、町田青年は歯を磨く。


「ばふぁー」

「遊ばない、遊ばない。……もうちょっとですから」

「ばぁぇー」


 小さく、やわらかな頬を抑えて数分。

 その小さな口腔に、充分に涎が溜まった辺りで、町田青年はメアリーを解放した。


「はい。くちゅくちゅぺっしてください」

「くちゅくちゅ……ぺっ!」

「よく出来ました」


 口を濯ぐと、ほんの少しの水が洗面所に吐き出される。

 口元をタオルで拭うと、彼女は満面の笑みで「いー」と言った。


「どー?」

「はい。あー」

「あー」

「大丈夫です」

「はーい!」


 汚れ一つない白い歯に、町田青年は満足して頷く。

 メアリーもにっこりと笑うと。


「じゃー、きょうもいちにち、がんばりましょー!」

「はい」


 二人して開店準備を始めるのであった。


 ■メアリーの にっき■


 はみがきするときは はみがきこを つかうよ!

 りんごあじ!

 でも そろそろ なくなっちゃうから あたらしい はみがきこを かうんだって。


 どんなあじがいいかな ぶどう? おれんじ?

 どんなあじがあるのか たのしみだな!


 あしたもいいこと ありますように!


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