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3月15日

クソネミ


 三月十五日。

 昨日の雨が嘘の様に、今日はいい天気であった。


「…………」


 そのせいか、酷い眠気が、町田青年を襲っていた。

 開店時間までは何とか持っていたが、閉店してからは特に眠気が酷い。


「……おじちゃーん?」

「……あぁ、すみません」


 心なしか、腕に力が入らない。

 熱があるとか、ふらつくという訳ではなく、倦怠感が身体を取り巻いているのだ。

 こういう時に、メアリーの体温を感じると、起きているのが辛い。


「ちょっと、眠くて……」

「ねむいの?」

「はい……」

「んー、じゃぁ、おふとんしこっ?」

「はい……」


 メアリーに手を引かれながら、町田青年は布団を敷く。

 とはいえ、風呂には既に入っているが、歯磨きはまだだ。

 まだ夢見が風呂に入っているので、それを待たねばならないが……。


「めーちゃん、はみがきさんとってくるねっ」

「あ、はい」


 ……そこはメアリーが気を利かせてくれた様だ。

 彼女はてててっと駆け出すと、素早く歯ブラシと歯磨き粉を取ってくる。

 それを受け取ると、町田青年はさっさと歯を磨いた。


「メアリーさん。あー」

「あー」


 ついでに、メアリーの歯も磨いてしまう。

 眠気が充満する頭では、手に力が入らないものの、彼は懸命にメアリーの頭を抱え、全ての乳歯を磨き上げた。


「……すみませんが夢見さん、先に寝ます……」

「あ、はーい! おやすみなさいー!」


 そうして、口を濯ぎがてら、入浴中の夢見に、就寝の旨を伝える。

 伝えなくてもいいだろうが、そこだけは律儀にしておきたかったのだ。

 ふらふらと布団の上に横たわると、町田青年をメアリーが引っ張る。


「おふとん、はいってー」

「はい……」


 のろのろと布団に潜り込むと、メアリーがするりと潜り込む。

 彼女の濡れた髪が袖を濡らすが、最早気にする余裕もない。


「おやすみなさい……」

「おやすみー」


 頭を摺り寄せ、町田青年は瞼を閉じる。

 腕の中の暖かさを感じながら、するりと彼は眠りについた。


 ■メアリーの にっき■


 きょうは おじちゃんが ずっと おねむだったよ!

 ねむねむな かんじ!

 すぐに ねちゃいそーだったけど がんばって おしごとしてました!

 おじちゃん えらい!


 ごはんたべて おふろはいったら ふらふらしてたから めーちゃん がんばって はみがきしてもらったよ!

 ちゃんと おじちゃん おねんねできました!

 このにっきも おじちゃんの おなかを つくえに かいてるよ!

 めーちゃんも ねむいので ねる!


 あしたもいいこと ありますように!


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